J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2010年09月号

論壇 人材開発部門こそ研修を受けよ!成果を出す人材開発部が持つ5つの能力とは

企業内で最も研修を受けていない部門──それは意外にも人材開発部門ではなかろうか。
人材開発部門は、社員を研修に派遣する(時には自ら参画する)が、自らのためには研修を受けない傾向にある。
しかし、組織内で人が育たなくなっている今、研修を受けることで、自部門のあるべき姿を本当に考え直さなくてはならない部門は、人材開発部門ではないだろうか。
人材開発部門が身につけるべき考え方や知識・技能を整理したうえで、組織に貢献するために、今、向上すべき能力やその方法について、明らかにしたい。

三城 雄児(みしろ・ゆうじ)氏
大学卒業後、都市銀行に入行。その後、ベンチャー企業、および国内・外資系コンサルティング会社数社に勤務。2009年7月にコンサルティングと教育を行う事業会社を設立、現在に至る。民間企業から行政組織まで幅広い業種の人事・組織戦略のコンサルティング実績を持つ他、組織・人事にかかわる各種講演・執筆など、積極的な活動を行っている。

現場から感謝される人材開発部門か?

人材開発は経営の一番の関心事であるにもかかわらず、日本企業では「育成は現場単位で実施されるべき」というOJT重視の傾向があるためか、それらを取り仕切る人材開発部門があまり目立っていない印象を受ける。研修受講者の管理などを行うオペレーション部門にとどまっている企業も少なくないようだ。

教育の効果は経験6割、指導3割、研修1割とよくいわれる。しかし、この見方は企業経営における研修の効果を、個人の成長という狭い視野でしか見ていない。企業経営における教育(研修)の効果は、1人ひとりのキャリア形成上の知識や技能の向上だけにはとどまらないからだ。たとえば、企業ブランド向上、暗黙知共有、ネットワーキング、チームビルディングといった効果が研修にはある。企業の人材開発部門の責任者は、研修の効果を“1人ひとりの成長”という狭い視野でとらえるのではなく、“企業価値の向上”と広くとらえ直したほうが良い。つまり研修というのは、単なる個人のキャリア開発支援だけの仕組みではなく、営業力や研究開発力と同様、企業経営の重要な差別化要素ともとらえられる。こうした広い視野を持った施策を考えられる人材開発部門になることができれば、経営からも現場からも感謝される存在になるだろう。

そのためには、高度な「人材開発力」を持つ人材開発部門が必要である。しかし現在、教育の機会は営業部や研究開発部などのライン部門に多く与えられ、人材開発部門向けの研修というのはあまり存在しない。

そこで、こうした人材開発部門の再生・創出をめざして、人材開発部門に特化した研修プログラムの実施を、筆者は世の中に提唱している。本稿は、その取り組みの中で得た知見をまとめたものである。業績向上や組織活性化に大きな影響を与えられるようになるために得るべき能力と、それを高める方法について、志ある人材開発部門の方々に少しでも役に立つ情報提供ができればと願っている。

人材開発プロジェクトをマネジメントする能力

そもそも人材開発部門に求められる能力とは何かをまず考えてみたい。

日本企業の人材開発は場当たり的だといわれる。現場単位で行う教育であれば、その時々の事業課題に応じたものでも良いだろう。しかし、全社的な取り組みを行う責務のある人材開発部門が企画実行する教育はそうであってはならない。企業の人材開発は明確な意図を持って行われるものだからだ。

場当たり的ではない人材開発の実現には「なぜ人材開発をするのか(Why)」を考え、中長期の人材開発目標を明文化する。そこでは、人材をテーマにして、「いつまでに(When)」「どの地域・部門で(Where)」「誰を対象に(Who)」「何を(What)」「どのように(How)」教育していくのかを明示しておくことが重要である。こうした5W1Hの揃った人材開発計画を持ったうえで、現場ニーズに応じて、都度つど柔軟に計画を変更しながら、試行錯誤を繰り返す。

ここで求められる能力はまさに「プロジェクトマネジメント能力」。1年間の限られた予算の中で、計画を変更しながら、プロジェクト目標である中長期の人材開発目標を追いかける能力である。

現場が行う教育は「日常業務」の一環である。しかし、人材開発部門が行う教育は「日常業務」ではなく、「プロジェクト」であるという視座の高さが必要である。図表1にあるように日常業務とプロジェクトは異なる。貴社の人材開発部門は、人材開発をプロジェクトととらえているだろうか?

現場のニーズをもとに問題を解決する能力

次に、日常的なオペレーションに目を向けよう。「研修前」「研修中」「研修後」の3つの場面で、それぞれ洗練された、最適な活動が行われているかを振り返ってもらいたい。

まず第1に「研修前」の準備段階では、現場の社員たちが何に困っているのかを徹底的に洗い出しただろうか。各部門のキーパーソンにインタビューを実施したり、アンケート調査を実施したりしたか。経営者に中長期の事業方針を確認し、そのために必要な人材とはどのような人材なのか、どのような知識・技能・意識を社員に身につけてもらうことが今、必要なのかを議論したか。そのうえで、研修終了後の目標像を明らかにしただろうか。また、いったん研修を企画したら、本人が研修に参加する前に、当該研修の意義を本人やその上司にわかりやすく事前説明したか。

第2に「研修中」はどうだろう。積極的に研修受講生の輪の中に入り、受講者の議論内容や当該テーマにかける思いや課題を共有しただろうか。講義でわかりにくい点があったら、講師にフォローを依頼しただろうか。受講者の顔色を見ながら、その講座の評価を実施していただろうか。研修終了後には、講師に対して次の機会に向けたフィードバックを行っただろうか。

そして第3は「研修後」のフォローである。1人ひとりの受講生のその後の様子を観察しているか。事後の変化についてモニタリングし、次なる課題をヒアリングしているか。

ビッグピクチャーがない中で、日常的に研修プログラムをオペレーション志向で回すだけなら、研修部門に大卒の有能な社員を配属する必要はないだろう。現場の真のニーズを把握して人材開発施策に反映させるのが人材開発部門の社員に求められる役割である。

つまり、洗練されたオペレーションを行うために必要になるのは、コンサルタントのような「問題解決能力」なのである(図表2)。

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