J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2011年10月号

論壇 目的を熟考し、未来から考える 解決困難な課題は“ブレイクスルー思考”で考えよ

一筋縄ではいかない課題が、職場には溢れているようにも見える。人や組織にまつわる課題が、なかなか解決を見ないのは、私たちの今までの思考が、そもそも合っておらず、解決に向かわないのではないか。従来とは全く違う思考も学び、使い分けていくことが必要なのだ。そこで、あらゆる制約をとっぱらい、目的、未来志向で考える新しい思考を紹介したい。


松永 譲治氏(まつなが じょうじ)
富士火災海上保険 人事部 人材開発担当/日本企画計画学会 東京支部 支部長
早稲田大学商学部を卒業後、日本の損害保険会社や外資系損害保険会社で営業、営業企画、営業教育、営業変革、人事教育、人材開発の責任者などを務める。また2010年にはJMコンサルティングを設立。人材開発の企画・作成・研修などを手がける。日本企画計画学会 東京支部 支部長、ブレイクスルー思考センター 顧問。日本企画計画学会東京支部HP http://bttnet.com/jps/tokyo/matsunagajoji@yahoo.co.jp

1.ブレイクスルー思考とは

次のような成功例に共通するものは何だろう?――エアコンのムーブアイ、セブン&アイ・ホールディングスの経営、大分県臼杵市の行政――こうした変革や開発を可能にするもの、世の中に3~8%存在するという超ハイパフォーマーの脳内に存在し、外部からは全く見えないあるもの……それが今回紹介する「ブレイクスルー思考」である。ブレイクスルー思考(以下BTT)は南カリフォルニア大学のG・ナドラー教授と中京大学の日比野教授が1980年代に米国で共同提唱した思考である。彼らは世の中にわずかに存在する優れた成功者や実践家の思考プロセスを研究し、それを誰もが使えるよう体系化した。そして混迷・激変・乱気流時代などといわれる21世紀に向けて、従来の思考“デカルト思考”では解決困難なさまざまな問題に解決策を与えてきた。考えてみてほしい。組織・人材に関連する多くの問題が、従来の思考法をもってして、根本的な解決に至っているだろうか――なかなか解決をみないのは、問題によって、従来とは別の思考で考える必要があることを示している。従来の一般問題解決モデルでは、要素還元主義、あるいは機械論的な立場に立つ。そこでは万物は要素に分解でき、その要素(部分)の和が全体であると認識する。そこでは、万物の本質はあくまで明示的な「事実・真実」、また真実は一つと捉えられ、そこから導かれる解決策は唯一の正解、どこにも通用する普遍の解(一般解)とされる。これに対しBTTでは、万物を、「ある目的を持った構成要素が相互に関連し合って全体性をなす1つのシステム」と認識する(システム観)。また万物の本質を、その時その場でそれにかかわる人間の「目的」と捉える。そして万物はそれぞれ独特の存在であり、表面的には同じに見えてもそこには必ず違いがあると考える(ユニーク差の原則)。この2つの思考はどちらも正しく、どちらかが間違っているということではない。上述のように思考の前提となるパラダイム(認識)が違うだけであり、私たちはこの2つの思考を上手に使い分けなければならない。世の中の問題を「原因・真理追究の問題」(例:なぜ営業成績が上がらないのか)と「企画・計画の問題」(例:いかにして営業成績を上げるか)の2つに分類すれば、前者は、なぜなぜなぜ、と考えていく思考が必要であり、科学の世界や学校教育のように普遍の法則や唯一の正解を導こうとする。よってこちらには従来の思考が適用されるだろう。一方、後者は何のために何のために……と考えていく問題だ。これらは企業活動や人生のような、社会的問題・多様性が認められる課題であり、こうした課題解決にはBTTが必要になるだろう。そう、我々が日常的に犯す大きな過ち(BTTでいう“第5種の過誤”)は、課題の種類にかかわらずその全てを従来の思考で解こうとするところにある。それは時として、解決不能・部分最適・対立構造・そしてもぐらたたき現象を呼び起こす。ノーベル経済学賞を受賞したハーバート・A・サイモンは「学校では(中略)『何が真実か?』を求めることだけを教え、『いかにあるべきか?』を追求する企画計画の方法論を教えていない」と語っているが、BTTこそ、まさにこれに応える思考なのである。

2.BTTの思考プロセスとは

図表1と2をご覧いただきたい。BTTの思考プロセスが理解しやすいよう、「(職場の)伝言メモの目的展開と伝言メモシステムの再構築」という事例を取り上げる。BTTでは、初めに場の設定(人間・時・場所)を行い視点を特定する。ここでは仮に職場メンバー・1年・職場としよう。また課題解決に対し、いつ誰を参画させるかを考える(1.人間フェーズ)。関係者を参画させながら解決策をつくることにより、その後の実行を保証させる。次にその視点で課題(解決)の「取り掛かりシステム」を決定する。ここでは仮に伝言メモとしている。そしてそのシステムの目的を考える(2.目的フェーズ)。目的(本質)は名詞+動詞で表現され、場によって異なるためいくらでも考えられる。チームや組織で考える場合は、各人の目的を統合しながら考えていく。図表2のように、目的は重層構造になっているので、掘り下げていく(目的展開していく)うちに大きな目的で必ず統合できる。伝言メモの例では、「用件を伝える」と「用件を知る」は「用件を共有する」に統合される。企業内では最後は最上位目的である企業理念などに統合されるべきだろう。そしてさらにその目的、その目的……と、より大きな目的を考え、その中の着眼目的に価値観・目標値・物差しを設定する。この過程を経ると対立の解消や目的不明の業務を排除できる。

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