J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2011年10月号

酒井穣のちょっぴり経営学 第9回 ファイナンス1 ファイナンスってなんだ?

第7回、第8回と会計について考えてきたが、今回からは、ファイナンスを取り上げる。簡単ではない概念だが、理解できれば、事業活動の意味を正しく判断できるようになる。今回登場する数式も、よくよく読めば中学生レベルのもの。落ち着いて読み通してみてほしい。


酒井 穣(さかい じょう)
フリービット取締役(人事担当/長期戦略リサーチ担当)。慶應義塾大学理工学部卒。TiasNimbasビジネススクールMBA首席。商社勤務の後、オランダの精密械メーカーに転職。2006年にオランダでITベンチャーを創業しCFO就任。2009年4月に帰国し現職。近著に『これからの思考の教科書』(ビジネス社)、『「日本で最も人材を育成する会社」のテキスト』(光文社)がある。人材育成メルマガ『人材育成を考える』(無料)を毎週発行している。
http://www.mag2.com/m/0001127971.html

どこが違う?会計とファイナンス

まずは図表に示した、会計とファイナンスの違いを見てください。簡単にいえば、会計とは業務改善のために「過去のお金を扱う」業務であり、ファイナンスとは投資活動として「未来のお金を扱う」業務です。ですが、そもそも論として、「未来」なんて誰にもわからないですよね?そこで出てくるのが「期待値」という考え方。期待値を使って未来のお金を考えるとは「その投資をすると確率的にどれぐらいのお金が戻ってくるのか」を考えることです。たとえば、宝くじを買う場合。1,000円で買うと、宝くじの期待値は47%と一般的にいわれていますから、470円が戻ってくる(確率的には530円の損をする)ということです。では競馬はというと75%。1,000円使えば750円が戻ってくる。宝くじより競馬のほうが期待値は高いのです。ここで重要なのが、特定のビジネスから得られるリターン(収益)は、ビジネスを切り盛りする自分たち次第ということです(収益率はビジネスによって異なる)。ビジネスに投資家のお金を集める(または予算の承認を得る)ためには、投資家(または予算権限を持っている人)に、期待される収益を期待値として説明する必要があります。

最重要の概念=お金の時間的価値

期待値を明らかにし、未来のお金を考えるためには、未来のお金の価値を、現在の価値に直して考えないとなりません。これを「お金の時間的価値(TimeValueofMoney)」といい、ファイナンスの世界でバイブルと呼ばれるどの教科書も、大概はこの説明から始まります。本質は単純です。お金の価値は時間によって変化し、同じお金でも、今日のお金のほうが、明日のお金よりも価値があるということです。これはどういうことで、なぜ今日のお金のほうが価値があるのか――3つの理由とともに説明します。

●第1の理由:インフレーション

基本的に世界の経済はインフレしていきます。以前は100円で買えた缶ジュースも110円になり、そして120円になりました。いずれは150円、200円となっていくでしょう。今は100円で買えるものも、将来は200円出さないと買えないならば、将来の100円は今の半分の価値しかないことになります。

●第2の理由:将来のリスク

明日もらえるお金に関する約束は、企業や金融機関の破綻や契約書の紛失などで不履行になってしまうかもしれません。さらに意外と忘れられがちなのは、お金を受け取るはずの自分がお金をもらう前に死んでしまう(企業であれば倒産してしまう)かもしれないという点です。

●第3の理由:機会費用

今、手元にあるお金は、さまざまな投資案件に投資することが可能です。身近なところでは、大手銀行の定期預金にでも入れておけばお金は増えます。同じお金でも、今ではなく将来受け取ることにするということは、こうした、“今できる数々の投資機会をあきらめる”ということであり、そこには無視できない機会費用(あきらめなければ得られたかもしれない収益)が発生します。

●例で考える――問A

たとえば誰かが僕に10,000円くれるとします。しかもこの10,000円は今日もらっても良いし、1年後にもらっても良い(問A)。とすれば、僕は先の3点の理由から、迷わずに今日もらうことを選択します。では誰かが僕に、今10,000円を受け取るか、それとも3年後に10950円受け取るか、どちらかを選べと持ちかけてきた場合(問B)、どっちが得か?これに答えるためには、ちょっとだけ計算が必要です。簡単に考えてみます。今現在のお金の価値のことを特に「現在価値(Present Value = PV)」と呼び、将来の価値のことを「将来価値(Future Value = FV)」と呼びます。この関係は上記3つの理由を考慮した金利(Interest = I)を用い、

という簡単な式で表現できます。あ、数学っぽいからってここで逃げないで!(笑)。少し我慢すれば、実際には中学生レベルの数学で十分理解できる話です。さて、金利は元本に利率(rate =r)を掛けたものですから、1年後に受け取れる金利(I¹)は

のように表現できます。たとえば10,000円(PV)を利率3%(r)で運用した場合の1年後の金利(PVr)は、10,000 × 0.03 = 300円です。これを先の式の中に挿入すると

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