J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2010年09月号

フィンランド コミュニケーション教育の重要なヒント 今、日本で求められる「ことばの力」

さまざまな人が協働する現代社会では、かつてのように“あ・うんの呼吸”が通じなくなり、代わりに、言葉をつくして、わかり合うことが求められている。そんな今、日本人に必要なのは、言葉の限界を知りながらも、言葉の力を鍛えることだ。

北川 達夫(きたがわ・たつお)氏
1966年東京生まれ。高校生の時に儒家の拝師門徒となり、四書五経を学ぶ。早稲田大学法学部卒業後、外務省入省。在フィンランド日本国大使館在勤(1991~1998)。帰国後退官し、国際的な教材作家として活躍。

インタビュアー/宮本 惇夫 写真/柚木 裕司

変わる日本社会必要なのは?

日本で今、「ことばの力」が求められている。ことばの力とは、読む・書く・話す・聞くという、言葉の基本的な運用能力である。今、その力の必要性が改めて強調されているのは、日本社会における多様化が加速し、本格的なダイバーシティー時代が到来したからだ。

ダイバーシティーの最大の魅力は、異なる価値観を持つ人々が出会うことで、新たな価値が生み出されること。だが、当然ながら摩擦も起こる。

たとえば日本企業では定年が延長され、世代の多様化が促進されている。組織内に非正規社員が増え、働き方や立場の違いから生まれる多様化もある。組織内の多様性が拡大した結果、チームワークを成立させる難易度が格段に高まった。このように多様化が進んだ場所で求められるのが「ことばの力」だ。ことばの力を使って、「私にとって大切なこと」と「あなたにとって大切なこと」を明らかにしながら、ともに受け入れられる「私たちにとって大切なこと」を導き出すのである。

「線型の理論」と「点型の理論」

「ことばの力」について考えるうえで、最低限理解しておくべきことがある。「線型の理論」と「点型の理論」についてだ。

線型の理論とは、「AはDである」と言いたい時、「AはBである。BはCである。CはDである。だから、AはDである」と、AからDまでを途切れることなく、言葉でつないでいく理論である。

一方、点型の理論とは、「AはDである」といおうとする時、「AはDである。わかるでしょ?」としか説明しない。しかしいわれたほうも、これでわかる。それは、説明する側もされる側も、AとDを含む価値の総体を共有しているからだ。いわば面を共有しているために、点と点を結ぶ線を必要としないのである。

一般に、点型の理論に基づいたコミュニケーションが行われているのが、地縁・血縁社会である。地縁・血縁社会とは家族を中心に親戚や近所の人々など、「知り合い」だけで構成されるコミュニティーだ。このコミュニティーに属する人々は長い時間を同じ空間でともに過ごし、同じ価値観を共有している。そのためAとDの間をつなぐ言葉を必要としない。

では、企業ではどうだろうか。欧米では線型の理論が支配しているのに対し、日本では点型の理論が支配している。「いわなくてもわかるはずだ」「上司にいわれてから動くようではだめだ」といったことがしばしばいわれるのがその証拠である。

だが企業を取り巻く環境は、ますます多様化してきている。今、我々日本人が強化すべきなのは、線型の理論に基づいたコミュニケーションの力であることはいうまでもない。

言葉の限界を理解させる教育

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