J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2011年09月号

論壇 世界中どこでも通用する ユニバーサル・リーダーシップとは

国籍、人種、性別、宗教、年齢、受けた教育もバラバラなメンバーで仕事を行う時代が、すぐそこまで来ている。そこで必要なのが、ダイバーシティ環境をものともせず、活躍するグローバルリーダーである。では、どんな国でも通用するリーダーに求められる能力とはどんなものなのだろうか。この問いを解く研究を、現在もコンサルティング会社のニューヨーク事務所で、さまざまなバックグラウンドを持つ人材とともに働く藤村融氏が、自らの体験やヒヤリングなども含めて行った。


藤村 融(ふじむら とおる)
Grant Thornton Consulting ニューヨーク事務所 ディレクター
MBA、 教育学修士。KPMG(日米)を経て現職。10年以上にわたり、主に日米のグローバル企業の競争力向上のコンサルティングを行う。代表的な施策例としては、グローバル戦略立案/実行、業務改善、組織再生・改革(M&Aを含む)、組織・人材戦略などがある。製造業、通信、化学、エネルギー業界のクライアントが多い。

「早く、広く、深く、賢く」戦う時代

「(自社にとって)あるべきグローバルリーダーとは、どんなリーダーか?」――この質問に即座に答えるのは難しい。グローバルリーダー(シップ)は道具に過ぎない。戦略を実行するためのリソースであり、世界で勝つための武器だ。ビジネス環境が把握され、目標が明確になり戦略が完了した時初めて、その組織にとっての最適なグローバルリーダー像が具体化される。そこで、私たちが現在どのようなビジネス環境にいるのかをまず簡単に共有したい。1980年代半ばから1990年代、日本は国際市場で黄金時代を謳歌した。その後、下記に列挙したような新たな複雑化した競争フェイズに突入し、得意の固定的「中央集権(効率化)モデル」だけでは勝ち進むことが困難になった。1.各国の保護主義の高揚2.技術ライフサイクルの短縮化3.差別化の難化4.顧客のグローバル化5.業務の深化/専門化6.高まる不確実性舵取りは一段と難しくなったのである。それでも新たな市場を求め、多くの企業がグローバル化への道を進む。予知不可能な環境だからこそリーダーシップは、マネジメントにかかわる誰にとっても不可欠な能力となる。では、具体的にどのようなグローバルリーダーシップが求められるのか。そこで筆者はこの質問に答えるため、下記のデータや調査、その他リーダーシップに関する文献をもとにグローバルリーダーをモデル化した。このモデルは、私たちの多くが近い将来めざすべき「現場でのグローバルリーダー像」を想定している。●筆者が実施した過去のグローバル・プロジェクト●LinkedIn(SNSの一種)を使ったグローバル・リサーチ*1、2●(筆者の所属する)Grant Thornton社ニューヨーク事務所社員へのインタビュー*3●筆者のビジネス・スクール時代のクラスメイト(在米/帰国)へのインタビュー*3●日米欧中のリサーチ・ペーパーや書籍の分析

上記2~4の対象者の在住国/出身国:アメリカ、カナダ、イギリス、インド、中国、台湾、オーストラリア、ブラジル、イタリア、フランス、ロシア、日本、アルバニア、トルコ、メキシコ、プエルトリコ、エクアドル、コスタリカ

グローバルリーダーが持つべき4つの能力領域

結果、グローバルリーダーに求められる要件は、図表の4つにまとめることができた。順に見ていこう。

1)ユニバーサル・リーダーシップ(Universal Leadership)

そもそもリーダーは、異なる国でも同じように活躍できるのだろうか。文化が違えば求められるリーダーシップも異なるのではないか?調査の結果、世界のどこでも通用するリーダーシップはあるというのが、筆者が出した答えだ。「ユニバーサル・リーダーシップ」といえる。それは、どんなに文化が異なっても変わらずにコアとなる能力であり、「リーダーが実行すべき事柄(WHAT)」を実行することだ。戦略などを実行するためのPDCAプロセスと、その実行に必要なコンピテンシーから成るが、PDCAプロセスを実行する際欠かせないのが、「論点を押さえ仮説を立てる能力」である。これが確実にできれば、ユニバーサル・リーダーシップの半分以上はすでに身についていることになる。ユニバーサル・リーダーシップのPDCA実行プロセスは、大きく次の8つのステップからなる。1.自社/チームの置かれたビジネス環境と顧客、競合の動きを理解2.(上記を頭に置いたうえで)自社/チームの強みと弱みを再確認3.(さらに上記を頭に入れたうえで)自社/チームの目標を念頭に仮説を立て、達成までの戦略を描く4.3を共感しやすいストーリーにしてチームメンバーと共有する5.ストーリーに沿ってメンバーと目標達成までのアクションプラン(行程)を作成し、メンバー一人ひとりの役割を決定する。この際、指標を設定する6.彼らが役割を実行できるよう支援7.期待した成果が期待したタイミングで生み出されない場合は、原因を突き止め軌道修正する8.成果が得られたらさらに高い目標を掲げチームをリード。こうしたサイクルの中で、チームメンバーの能力向上と自律性を育成する一見するとごく常識的なタスクだが、実際に実行できているリーダーは、一説には30%以下だといわれている。やる気があっても誰もができるわけではなく、この一連の行動を可能にするコンピテンシーを身につけていなくてはならない。ユニバーサル・リーダーに求められるコンピテンシーはいくつもあるが、ここでは、今後特に重要になる2つについて触れておく。

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