J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2011年09月号

TOPIC 2 ~グローバルサプライチェーン・マネジメント~ 知識体系の共有が生む国際競争力

供給網の安定的な確保、事業継続計画策定といった視点から、サプライチェーン・マネジメント(SCM)の重要性が高まっている。とりわけグローバル・サプライチェーン体制の整備に取り組む企業が増加しつつあるものの、日本では、これまで具体的な運用のための共通言語を持たなかった。そこで今回、日本生産性本部によりSCMの国際資格が日本でも認定可能に。その概要と日本における可能性を紹介する。


黒田 和光(くろだ わこう)
1960年東京生まれ。上智大学卒、日本大学経営大学院卒。ジョージタウン大リーダーシップコーチングコース修了。日本生産性本部入社後、人材開発プログラム開発、海外技術協力担当、米国事務所長代行などを経て、2010年9月よりグローバル・マネジメント・センター長を務める。中小企業診断士、エグゼクティブ・コーチ。

サプライチェーン・マネジメントの重要性

3月11日に起きた東日本大地震による影響は、地域住民の生活や企業活動を支えるサプライチェーン(供給網)に甚大な影響を及ぼした。過去の経験を踏まえたBCP(事業継続計画)の重要性が認知されており、多くの組織体でBCPが策定されている。サプライチェーン・マネジメント(以下、SCM)の重要性も言及されている中で、今回の震災は、より一層SCMの重要性の認識を高め、多くの課題を提示した。具体的には、SCMにおけるリスクマネジメント、そして、GSCM(グローバル・サプライチェーン・マネジメント)体制の構築である。GSCM体制の構築には多くの企業が着手しているが、その具体的な運用において確立された共通言語を持たないため、多大なコミュニケーションロスによる生産性の低下を招くケースが散見される。そのような課題への処方箋として、APICS(The Association for Operations Management Advancing productivity, Innovation andCompetitive Success)が認定するSCMの国際資格がある。

SCMの提唱団体であるAPICSの役割

APICSは1957年に設立され、米国内でSCMの概念を提唱した専門家団体である。現在、全米に250支部、世界36カ国に44もの提携機関を持つ、SCM分野の草分け的な機関となっている。主要な事業として、1.会員の組織化・会員向けサービス提供とそのための調査研究、2.サプライチェーン専門家向け教育・教材の開発、3.サプライチェーン専門家の認定、の3つが挙げられる。APICSは、職業別組合組織にも似たサプライチェーン従事者自身の集まりで、常にサプライチェーン・マネジャーの知識体系のアップデートや、専門家としての地位向上を支援している。本部職員90名に対して600名のボランティアで活動がまかなわれていることからも、この性格がわかる。また、APICSの最大の特徴は、グローバルな普及だ。APICSは、一部のSCMの専門家にはよく知られてはいるが、日本では一般的に馴染みがない。しかし諸外国では、サプライチェーン・マネジャーや購買スタッフの求人欄には、「APICS資格保有者優遇」と記載されているのが通例だ。APICS調査部の最近の調査では、APICS資格保有者は無資格者より11~13%平均年棒が高いという統計結果が出ている(図表1)。こうした状況を見た日本でのグローバル・サプランチェーン・プロフェッショナルたちは、APICSの資格受験のため、中国、韓国、ベトナムといったアジア近隣国に渡航して受験する状態であった。そんな中、2011年4月に日本生産性本部が、APICSの知識体系を普及啓蒙する日本の代表機関としてAPICSと協定を締結。日本での普及がようやくスタートした。

APICSの提供するコンテンツ

米国を除く海外で提供されるAPICSのコンテンツは、「SCM専門資格」「専門資格取得に向けた教育プログラム及び教材」がメインである。「SCM専門資格」は、CPIM(Certifi ed in Production and Inventory Management)とCSCP(Certified Supply Chain Professional)の2種類が主流だ。CPIMは、SCMに関するグローバル・スタンダードの知識を保有していることを認定する国際資格である。5科目で構成され、1科目ずつ受験して5科目揃ったところで資格認定される(図表2)。現在世界で最も普及しているデファクト(事実上の)・スタンダードで、資格保有者は世界で約9万5000人にのぼる(2009年末APICS調べ)。一方、CSCPは、SCMに関するマネジメントの統合的知識を保有していることを認定する資格であり、「顧客・サプライヤーのリレーションマネジメント」や「SCMへの情報技術活用」といった4つのカテゴリーで構成される。これらの4領域を1回の試験で受験し、認定を受けることで資格を取得できる。APICSのメンバーになると、サプライチェーン専門家としてネットワークに仲間入りとなる。Webで提供されるコンテンツから情報を得たり、さまざまな国際会議や地域フォーラムへの参加が可能になる。

共通の知識体系が求められる背景

では、日本でAPICS資格を保有することの意義はどこにあるのだろうか。まずその背景を見てみたい。日本企業のグローバル化へのラッシュが激しい。経済産業省の委託調査として日本生産性本部が2011年に実施した「企業の人材マネジメントの国際化に関する調査」では、約300社の上場企業回答社のうち、60%以上が海外拠点を設置済みであり、製造業だけだと80%以上であった。

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