J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2013年04月号

論壇2 ~40代のキャリア開発~ 停滞する40代を活性化するキャリアデザイン研修の鍵

キャリア格差が開き始めることで、意欲と生産性の減退してしまいがちな40代中間管理職。
そうした彼ら・彼女らの活性化が、多くの企業で経営課題となっている。
企業も対策を講じてこなかったわけではないが、従来のキャリア研修では目覚しい効果が出てこなかった。
自分の能力に対して諦めの入った社員を活性化するためにはどうすれば良いのか。
その具体的方法を紹介する。

千代鶴 直愛 氏(ちよづる なおよし)
リード・コミュニケーションズ代表取締役。リ・カレント パートナー講師。
立教大学経済学部卒。40 代の内なるパワーを解き放つ人材育成コンサルタント。業績不振にあえぐ大規模事業部を半年でV字回復させたり、低迷していた中堅企業をわずか2カ月で成長軌道に乗せたりと実績多数。キャリア開発、意識変革、リーダーシップ、部下育成等々のテーマで研修を行う。

1なぜキャリア研修では40代の活性化ができないのか

今、多くの企業における重要な経営課題の1つに「40 代社員の活性化」がある。キャリア格差がついてしまい、意欲と生産性が落ちているのだ。その一番大きな原因は、昇給や昇格の望みを持てなくなっていることにあるといわれている。バブル世代で人員がだぶついているうえに、業績の低迷で昇給の原資も不足しているため、その多くは、「現状維持できればよし」という消極的な思考に陥っている。さらにこの世代は、部下を持たずに長年現場のプレーヤーとして働いてきたがゆえに、マネジメント経験の乏しい人が多い。マネジメント能力を身につけた後輩たちに追い抜かれ、自信をなくしているというケースも多い。そんな40 代を活性化させるための施策の1つとして、この世代に的を絞ったキャリア開発研修を実施している企業も少なくないが、満足のいく成果を上げているという声を人事担当者から聞いたことはない。成果が出ていないのはなぜか? それは、一言でいうと、従来のキャリア開発研修の多くは、“心理的エネルギー”を引き出すアプローチと、それを研修後も維持させる仕組みがないからである。ハーバード大学教授で組織行動学の権威クリス・アージリスは、次のように述べている。「人は初めからモチベーションを生む“心理的エネルギー”を持っていると考え、人為的に人をやる気にさせる方法を探るよりは、もともと備わっているこのエネルギーを認識させ、道を開いてやることが大事である」―彼のこの考え方は、「人間は自ら進んで委ねた目標に対しては自発的に取り組み、自我や自己実現の欲求を充足させようとするもの」というダグラス・マグレガーのY 理論と同じ立場のものだ。つまり、昇給や昇格という外的な要素だけがモチベーションの源泉なのではない。人は誰でもその源泉=“心理的エネルギー”を自らの内側に持っているということなのである。この一人ひとりの“心理的エネルギー”を引き出す機会や環境を与えることが、マネジメントや人事の仕事であり、キャリア開発研修はまさにその役割を担うものであったはずである。しかし、現在多くの企業で実施されているキャリア開発研修には、その肝心の“心理的エネルギー”を引き出すアプローチがほとんど見られない。キャリア開発研修の多くは、「強み弱み分析」や「スキルの棚卸し」など、自己分析に大半の時間が割かれている。そこでは冷静に自分を分析することはできるが、その中からモチベーションの源泉となるような“心理的エネルギー”を引き出すことは難しい。特に、キャリア格差をつけられてしまった停滞気味の社員たちが過去を振り返ったとしても、「そんな時もあったけど、所詮は過去の栄光だよ」と思うにとどまり、「もう一花咲かせてやろう!」という強い思いが湧くところまでには至らない。これでは受講後に行動の変容が見られないのは当然だ。

2“心理的エネルギー”の正体

では、そもそもこの“心理的エネルギー”の正体とは何か。実際にはさまざまな要素が複合的に絡み合っているが、中でも最も強く個を突き動かす推進力を持っているものは「ミッション」と「ビジョン」である。これらは、企業戦略や組織開発を考えるうえで必ず出てくる概念だが、パーソナルなキャリア開発でも、ビジネスパーソン一人ひとりの“心理的エネルギー”の中核を成すものである。ビジネスパーソンにとっての「ミッション」=「働く目的」であり、「ビジョン」=「めざしたい姿」「成し遂げたいこと」をビジュアライズしたものだ。ビジネスパーソンのコンピテンスを表す「氷山モデル」(図表1)が示すように、「テクニカルスキル」や「ヒューマンスキル」よりも、海面下に隠れた「主体性」「自立性」「価値観」「セルフイメージ」「モチベーション」といったもののほうが、パフォーマンスに与える影響力は遥かに大きいといわれている。ここにこそ人を突き動かす原動力が宿っており、これらの源泉となっているものが、パーソナルな「ミッション」と「ビジョン」なのだ。

3“心理的エネルギー”を引き出す4つの鍵

“心理的エネルギー”を引き出せれば、驚くほど人は変わり、成果を上げることができるようになる。その事例をいくつか紹介したい。全国に約500店舗を展開する某大手小売チェーンでは、ワースト20の店舗の店長6名を対象に、“心理的エネルギー”を刺激するための店長研修を実施した。その研修からわずか3カ月後、6店舗ともに全国平均以上の業績を上げるまでV字回復を果たした。うち2店舗は全国ベスト5、うち1店舗は全国1位の業績を上げた。彼らは店長の模範となり、その後も彼らの店舗は好業績を維持している。某銀行では、係長職に9年以上滞留している40 代を対象に研修を実施したところ、翌年の人事異動では課長代理に昇格したメンバーが続出した。また、某IT系企業では主にエンジニアを対象に研修を実施したところ、「明らかに言動が積極的になり、リーダーシップを発揮するようになった」という声が、それぞれの上長から聞かれるようになった。

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