J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2011年09月号

Opinion 仕事のルールをグローバル化すれば 誰でもグローバル人材に

日本に押し寄せているグローバル化の波。これまでさほどその必要性を感じてこなかった企業も、対応に大わらわだ。「グローバルビギナー」ともいうべき企業や個人はどんな問題に直面しているのか。最大の障壁は、日本特有の「ルールなき仕事のプロセスにある」と指摘するキャメル・ヤマモト氏。グローバル3.0時代を生き残る戦略について聞いた。


キャメル・ヤマモト(山本 成一 やまもと せいいち)
デロイト トーマツ コンサルティング ディレクター
東京大学法学部卒業後、外務省に入省。エジプト、イギリス、サウジアラビア、および東京に勤務。外務省を退職後、外資系人事コンサルティング会社(米国と中国に駐在)を経て現職。ビジネスブレークスルー大学教授。近著に『世界で稼ぐ人 中国に使われる人 日本でくすぶる人』(幻冬舎)。

取材・文/西川 敦子、写真/本誌編集部

グローバル3.0で何が変わるか

トーマス・フリードマンの『フラット化する世界』(日本経済新聞出版社)によると、「グローバル3.0」とは「個人が主役となるグローバル化」を指す。全ての個人がインターネットを通し、世界的なビジネスに参加できるようになり、以前であれば国によって生じていた差が消えつつある。国際人材市場では、欧米人も、日本人も中国人もインド人も、同等の競争にさらされるという新たな競争空間が出現している。実感はないかもしれないが、あなたのライバルや上司が外国人になりつつある。さて、このグローバル3.0の波が日本に本格的に到来したのが2010年だ。この年、楽天が英語を社内公用語にすると発表。ローソンでも17名の外国人留学生を新卒採用した他、ファーストリテイリングがグループ社員数百人を海外転勤させる施策に踏み切るなど、グローバル人材育成のさまざまな取り組みが目立った。ビジネスの舞台は国内から海外へ急速に移りつつある。これまでは国内の本社に勤める人々が主流で、海外拠点で働く外国人はローカル人材だったが、今後は逆に国内の人材がローカル人材とみなされる――そんなダイナミックなパラダイムシフトが今まさに起きようとしている。これまで時間をかけ、自社のやり方を土台に、徐々にグローバル人材を育成してきた企業はいいが、そうでない企業は、短期間に体制を変えなければならない分、衝撃も大きい。当惑しているのは社員も同じ。私の周囲でも、人事部や経理部といった、一見グローバルな業務と関連のなさそうな部署の人々が、ある日突然、海外スタッフとプロジェクトチームを組まされたりしている。また、昔からグローバル化を進めてきた企業の中でも、日本人責任者が現地トップを務めてきた企業、すなわち「疑似的な分権化」を進めてきた企業は、真のグローバル化をとげられず苦しんでいる。外国人と日本人トップの間に溝があり、外国人の力を活かした戦略が打てず、国際競争で優位に立てないからだ。これまでの経験では到底太刀打ちできない未体験の時代、グローバル3.0。そこで企業が遭遇するのは、どんな問題なのだろうか。

ルールで動く海外企業空気で動く日本企業

グローバル化において問題にされがちなのは「異文化の壁」だが、最大の問題は別にある。多くの日本企業がつまずいているのは、日本企業と海外企業における「仕事の進め方の違いそのもの」だ。海外の先端的なグローバル企業では、誰もが共通のルールのもと、コミュニケーションを重ね、仕事を進めている。最も違うのがリーダーのあり方だろう。多国籍の従業員を抱え、長期雇用も期待できない状況で人々をまとめていくには、リーダーが、ビジョンやゴールを明確に示し、そこに至るプロセスもはっきりと打ち出すことが必要だ。つまり人心を前向きにそろえて駆動するリーダーの構想力が問われる。リーダーの構想があって初めて、多様なメンバーの意見を、実行に向けて活かしていくことができる。一方、日本では、偉い人の意向は下が察して当然という文化があるせいか、リーダーはビジョンを明確に示さなくても済んでしまう。現場の人々の頑張りのおかげで、ハンドル(リーダー)がなくても何とか車(仕事)が進んでしまうという奇跡が現場では日常的に起きている。皮肉なことだが、こういう現場力のおかげで、日本ではリーダーの必要性が低く、グローバルに通用するリーダーが生まれにくい。リーダーなのかメンバーなのか目を凝らさないと見分けがつかない「リーダーレス社会」が出現している。しかし、グローバルゲームを戦うのにリーダーは欠かせない。どうやって、リーダーレス状況を解消するか?解消に向けた最優先の打手は、グローバルな舞台で適用されている共通のルールで仕事を進めることだ。グローバル共通のルールという土台がないところでは、グローバルリーダーは生まれにくい。たとえばプロサッカー選手が世界を股にかけて活躍できるのは、ルールが存在するからだ。サッカーのルールさえ知っていれば、上手い下手はあってもサッカーはできる。そう、ビジネスパーソンもこれにならって“下手なグローバル人材”を今から始めるつもりで、すぐに仕事のやり方を見直してほしい。

演技のつもりで仕事のやり方を変える

日本人ばかりの組織に、グローバルスタンダードな仕事のやり方を導入すれば、違和感が生まれる。阿吽の呼吸でわかっていることをいちいち説明するなど、わざとらしいことこのうえない。それは当然だ。だが、まず海外の人を採用してグローバルスタンダード(グロスタ)を習おうなどと段階を踏んだりせず、いきなり「とってつけたような努力」をして、グロスタに移行してはどうか。冒頭にも触れたように、昨年、楽天の英語公用化が話題になったが、同社の最大の狙いは単なる英語力の養成ではないと聞く。英語公用語化により、今後の海外事業展開のシミュレーションをしているというのである。その姿勢にならい、日本語でいいので、あらゆる日常の場面を捉え、日々、海外でも通用する仕事プロセスに自分たちを漬け込む実践トレーニングをして鍛えておこう。うってつけなのが会議である。「今日はグローバル式(グロスタ)で行こう」と決め、15分なら15分と時間を区切る。会議だけは英語でやると決めてもいい。日本流のダラダラ会議にならないよう、明確なゴールを設定し、プロセスや分担を決めるなどし、きちんと結論を出すようにする。また、上司と部下間の打ち合わせも、よい訓練になる。これも時間を区切って、最初の5分で部下から上司へ報告を行い、次の5分でディスカッション、最後の5分で、上司から部下にアドバイスをするなど、合計15分に限定するのがお勧めだ。5分刻みで打ち合わせを進めれば、いやでもポイントを絞った中身の濃いコミュニケーションができる。仕事のやり方を根底からグロスタに変更する方法として最適なのはプロジェクトだ。この仕事はプロジェクトだと宣言して、メンバーが初対面の外国人のつもりで、期待成果物、各自の役割、仕事の進め方、納期といったルールを決めて、やってみるのだ。もちろん、これらのトレーニングは海外の人を交えて行うのがベストである。人間は環境に左右されるもの。外国人が一人入っただけで、緊張感が生まれ本気になれる。実際やってみれば案外できてしまうから、自信をつけてほしい。私の周りで急に海外プロジェクトを任された人事部の方は、半年もたった頃には国際電話を使って、プロジェクトを回している。必要こそ人材開発の母である。

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