J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2011年08月号

Opinion② 管理職手前で身につけるべき母性的リーダーシップとその強化方法とは

管理職、リーダーシップ育成の文脈でよく寄せられるのが、「 もっと早くに育成しておく必要があった」という意見だ。では、ベテラン中堅層に、具体的に何を学んでおいてもらえばいいのだろうか。コンサルティング会社代表、経営コンサルタントの河合太介氏は、変革の時代こそ「母性的リーダーシップ」に目を向けるべきだ、と語る。果たして、ベテラン中堅が身につけるべき“ 柔”のマネジメントとは。


河合 太介(かわい・だいすけ)氏
株式会社 道(タオ)代表取締役社長。早稲田大学大学院 商学研究科及び多摩大学経営情報学部 非常勤講師。金融系総合研究所、外資系コンサルティング会社を経て現職。成長、変革、戦略推進のための組織人事の専門家であり、近共著に『不機嫌な職場』、著書に『フリーライダー~あなたの隣のただ乗り社員~』(ともに(講談社現代新書)など多数。

取材・文/西川敦子、写真/日本能率協会提供

リーダーの育成不全が「負の連鎖」を生む

個人化が進む昨今の職場でよく聞かれる、マネジメント層の脆弱化。リーダーたち自身の声にはこんなものがある。

「仕事の仕方などを教えても、いつ辞めるかわからないから、時間がもったいない」

「教えたら自分が追い抜かれるかもしれないから、教えない」

「自分のことに精一杯で、後輩にものを教える時間がない」

マネジメントは企業における“文化”といえる。こうした上司に育てられた若手たちは、やがて自分に後輩ができた時、同じような扱いをしてしまいかねない。

この負の連鎖を断ち切るためにも、リーダーになる手前の、ベテラン中堅社員の段階で、しっかりとリーダーシップと、リーダーたる態度を育成することが重要だと私は考える。

信頼が人を育てる「母性的リーダーシップ」

リーダーシップと一口にいうが、リーダーシップには「父性的リーダーシップ」と「母性的リーダーシップ」がある(図表1)。昨今、企業のリーダーシップ研修で焦点が当てられているのは主に前者だ。「ビジョン構築」「戦略思考」など、目標達成に向け、組織を力強く牽引するためのカリキュラムが組まれることが多い。

成果を効果的に上げるためには、ぶれない軸を示し、課題を達成させる「父性的リーダーシップ」がもちろん重要である。また、戦力になる人材を常に補給できるような新陳代謝の激しい企業においては、リーダーシップとは、ビジョンの構築力や戦略思考力などに他ならない。

だが、こうした具体論の前に「リーダーシップの土壌」について、もっと目を向けるべきではないだろうか。

良いリーダーシップの土壌は、「信頼」によって成り立っている。信頼できない上司の言葉は誰しも受け入れることはできないだろう。少なくとも、「目上だから」と従順になることはできても、その上司自身にコミットするのは難しいはずだ。たとえ上司の威圧感から、瞬間的に部下が120%の実力を発揮したとしても、その状況を維持できるとは到底思えない。結局、部下は潰れてしまい、その穴埋めに上司が奔走し、共倒れになるのがオチではないか。

では“信頼”できる上司とは、どんな要素を備えた人間を指すのだろうか。一言で言えば「honesty」を持つ人間ではないかと私は考える。マネジメントの研究者、バリー・Z・ポスナーも自らの「リーダーシップの信頼性」研究において、「誠実さ(正直さ)」の重要性を掲げている。もちろん、部下を掌握するには能力も必要だが、最も大切なのはやはり誠実さである。

誠実さを表す行動特性を具体的に挙げると、

「言行一致している」「逃げない」

「嘘をつかない」「感謝する」などだろう。

その逆は

「自分は逃げて、責任はメンバーに丸投げ」

「自分は後ろ向きなことばかりいい、メンバーには挑戦を強いる」

「自分は非協力的で、メンバーには協力を強要する」など。このような振る舞いをするリーダーに、いったい誰がついていくだろうか?

この他、「人の長所を認められる」ことも、リーダーとしての大切な要件だろう。人は誰かに認知されることで大きく動機づけされる。だが、多くの組織の評価軸は一元化されており、多元的な良さが活かされないことが多い。

多元的な良さとはたとえば

「いつもみんながやりたがらない仕事を引き受ける」

「部下の面倒見がいい」

「トラブルの際、仲介役を引き受けてくれる」

「クレームに対していつも誠実に向き合う」

「どんな時も元気に振る舞う」が挙げられるだろう。

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