J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2011年06月号

なぜ内省が できないのか?

現代の企業では、創造性を高めることが求められている。そこで有効なの
は、内省型リーダーシップだ。だが、自分を見つめ内省をするのは簡単で
はない。今回は、内省を阻む要因を紹介したうえで、どうしたらそれらか
ら解放され、内省ができるのかを紹介する。


八木 陽一郎氏(やぎ・よういちろう)
組織行動学を専門とし、「内省と対話」による
リーダーの成長、組織変革などの研究を行う。
2007年より、現職および慶應義塾大学SFC研
究所上席所員に就任。2010年より、NPO法人
ソーシャルベンチャーズ四国の共同代表およ
び理事。

リーダーシップの2つのタイプ

前号、内省がリーダーシップを発揮するうえで重要な要因であることを述べました。

優れたリーダーの多くは、内省し、自分の世界観や人間観を見つめ直す経験を重ねていることが、筆者のこれまでの調査の結果から明らかにされてきたのです。優れたリーダーは、表面的な物事にただただ反射的に反応するのではなく、自己の世界観・人間観を見つめ直し、より深く物事の構造やパターンを探究し、必要に応じて自己変革を起こし、周囲との深い対話によって事態をより良い方向へと導いていたのです。

筆者は、この内省を自分が自分をリードする「内なるリーダーシップ」と呼んでいます。実は、この内なるリーダーシップが、他者をリードする「外なるリーダーシップ」に対しても良い影響を与えていることが実証的にも明らかになってきたのです。

前回は、リーダーシップを2つのタイプに分ける考え方を紹介しました。

1つのタイプは、目の前の出来事に反射的に応じてしまう傾向が強い「反応型リーダーシップ」。これは一見すると意志決定がスピーディなようでありますが、実は自分が過去に学習したパターンを繰り返してばかりいるタイプです。

もう1つは、目の前の出来事の背景や構造を読み解き、内なるリーダーシップを働かせようとする傾向が強い「内省型リーダーシップ」です。内省型リーダーシップは、自分をコントロールし、場の中で自分が発揮する影響力を適切なものに配慮することで結果的に他者への外なるリーダーシップを高めていると考えられるのです。

これらの2つのタイプのリーダーシップを比較していくと、多くのリーダーが反応型から内省型のリーダーシップにシフトすることがとても重要であることがわかると思います。以下にそれぞれのリーダーシップのより詳しい特徴を挙げ、比較をしてみましょう。

反応型と内省型のリーダーシップの特徴

前回もご紹介しましたが、もう一度反応型リーダーシップの特徴について説明したいと思います。反応型リーダーシップは、即断即決のため、時に勇敢で効率的に見えます。けれども、実は出来事を深く掘り下げて見ていないために、問題の本質的な解決に至ることができない場合が少なくありません。

さらに、自分自身が問題の原因の一部となっている場合、そのことになかなか気づけず、問題を悪化させてしまうことさえあるのです。

図表1は、筆者が考える「反応型リーダーのチェックリスト」です。もし、当てはまる点がいくつかあれば反応型リーダーシップを発揮している可能性が高いので是非確認してみてください。

これらの点は反応型リーダーシップの特徴的な傾向と考えられるものです。一方の内省型リーダーシップの特徴はこれらとは対照的な特徴を持つと考えられます。「内省型リーダーのチェックリスト」(図表2)も同じく確認してみてください。

内省型と反応型は、そのどちらかにきれいに分類されるというよりも、誰もが両方のタイプの特徴を潜在的には有していて、経験を通じてどちらかが強くなったり、状況や仕事などによって傾向が変わったりする場合もあるかもしれません。ここでは自分の傾向をご理解いただく目安として活用していただければと思います。

さて、いかがでしたでしょうか?このチェックリストに示した内省型と反応型は、リーダーシップの特徴を対照的なタイプとして表したものです。しかし、このタイプはDNAや血液型のように先天的で不変的なものではなく、内省の経験によって変化しえる認識のあり方によるタイプ分けだという点が重要です。つまり、現時点で反応型であるとしても、変化できる可能性は十分にあるということです。

集団の創造性を高める内省型リーダー

内省型リーダーシップと反応型リーダーシップのどちらが優れているか――これは実は単純には断定できない問題です。たしかに、これまでに筆者が行ってきた実証研究によれば、内省型リーダーシップのほうが優れているといえるでしょう。

しかし、例外も当然考えられます。その例外の1つは、集団の創造性を重視する必要が全くない場合です。単純な作業をいかに効率的にさせるかが課題であるといった場合、いわゆるアメとムチ型の取引的なマネジメントが有効であると考えられ、したがってリーダーの内省はそれほど求められないように思われます。

しかし、現代の企業が抱える課題の中で、戦略的な重要性は単純作業の効率化というよりも、むしろ集団の創造性を高めることに移行しつつあるといえるのではないでしょうか。環境の変化が今日のように速く、ステークホルダーのニーズが多様になると、製品やサービスは陳腐化しやすく、単なる効率化を推進するだけではすぐにライバルにキャッチアップされ、競争力の源泉としては不十分だからです。

このような時代には、メンバーの創造性を高めることが戦略的により重要な要因であり、メンバーの創造性を高めるにはリーダーのより深い人間理解が不可欠であると考えられます。

こうした背景から、集団の創造性を引き出すうえで、深い人間理解をもたらす内省がリーダーにとって極めて重要な経験であり、内省型リーダーシップがより有効であると考えられるのです。

なぜ、内省ができないのか?内省を阻むもの

ところで、内省をすることが重要であるとしても、それが必ずしも簡単にできるのかといえばそうでもないのが現実です。

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