J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2011年04月号

組織風土というOSの バージョンを上げる PDCA

きちんとPlanにコミットする人材、計画をDo(実践)する人材、
自らを振り返る(Check)人材、
改善のために行動する(Action)人材……
こうした人材が育つ組織とは、どういった組織なのか。
それは、間違いなく、良好な組織風土を持つ組織だ。
そして、組織風土を良くするためにも、PDCAは活用することができる。
CS 経営と経営品質に造詣の深い田村均氏がそのポイントを語る。


田村 均氏(たむら・ひとし)
1971年リコー入社、営業およびマネ
ジャーのライン活動や販売促進およ
びセールス教育など、ライン支援活
動に従事。1993年CS推進室の創設
に伴い異動。経営品質管理本部CS
推進室長を経て現職。日本経営品
質協議会の広報委員長も務める。

取材・文/木村美幸

“何”に対してPDCAを回すのか

あらゆる企業にとって、業績の向上や優れた人材の育成を実現するために何より重視すべきなのは“組織風土のレベル”を上げることではないのか?

私の頭の中に漠然とあったこの思いを確信に変えたのは、高校野球の強豪校何校かを取材した、テレビの特集番組だった。“3年生の引退や新入生の入部で、野球部のメンバーは毎年変わり続けているのに、なぜ優勝候補校の多くが毎年のように甲子園まで勝ち残れるのだろう?”というのが長年の疑問だったので、各校の練習方法をつぶさに観察したのだが、これといった共通点は見出せない。

しかし、どの監督の話にも一致することが一つだけあった。それは「時間厳守」「用具の扱いは丁寧に」「整理整頓」「礼儀正しく」「授業にきちんと出る」など、野球の技術以外の生活全般に関して、とてもうるさくいっているということ。それを聞いて、組織風土の大切さについて改めて考えていたところへ、今度は行く先々の高校で吹奏楽部を大会優勝へと導く名物指導者を取り上げる番組が放映された。するとその先生も、やはり時間を守ることやきちんと挨拶することなど、楽器の演奏とは直接関係ない部分を厳しく指導していたのだ。

野球にせよ吹奏楽にせよ、優勝争いに絡むようなトップクラスになると、技術的にさほど大きな差があるわけではなく、各人の日々の心構えなどがつくり出す“組織風土”の成熟度こそが、プレーに多大な影響をもたらす。そしてこれは、そのまま企業にも当てはめることができる。こうした考えが、私の中で確固たるものになった。

制度や仕組み=アプリ組織風土=OS

それ以来、組織風土のレベルや成熟度を高めることの重要性を、ことあるごとに訴えているのだが、なにぶん組織風土は目に見えるものではないので、その大切さに心から納得していただくのはなかなか難しい。

そこで野球部や吹奏楽部であればトレーニングのメニューや、試合や演奏の際のスキルに相当する部分、すなわち企業内の制度や仕組み、人材育成の個々のカリキュラム、業務プロセスにおける手法など全てを、コンピュータの「アプリケーション」なのだと仮定してみた。

では、それらのアプリケーションを動かすため絶対に欠かせない「OS(オペレーティングシステム)」は何に当たるのか?

それこそが“組織風土”だと思い至ったのだ。すると、たとえば“A社で成功した仕組みをB社でも導入したが、全くうまく機能しない”といったケースの場合、“B社のOSのバージョンが低いから、そのアプリケーションがうまく動かなかった”と捉えることができ、それまで混沌としていた多くのことが一気にスッキリした。

かつての日本企業にとって、“OSのバージョンアップ”は全く必要なかった。高度経済成長で“右肩上がり”が当然だった時代は、いつも需要が供給を上回っていたため、企業は“より速く”“より多く”ということだけに注力していれば着実に業績を上げることができたからだ。皆の口から出てくる言葉は“効率アップ”。経営者や各部門のリーダーたちは“前年比何%”“何期連続達成”と、目に見える数字だけを追いかけていればよかった。

ところが1990年代になると市場は成熟期に入り、大量生産大量消費の時代は終焉。お客様は、好き嫌いや価値観によって製品やサービスを選ぶ時代になった。そうなると、企業サイドは“お客様はどういうものが好きか?”“どういうものは好まないのか?”ということを敏感に感じ取り、アウトプットを変える必要が生じてきた。アウトプットを変えるには、当然ながらプロセスも変えなければならない。すると“OS”もそれに対応できるようなものへと変えなければならなくなった。

つまり企業は、高度経済成長期に使っていた古いOSから、現在の市場環境に対応できる最新OSへのバージョンアップに意識的に取り組まなければ、「どんな手法や仕組みを導入してもうまくいかない」という状態を打開できなくなっているのだ。

いい人材が育つ組織風土の条件とは?

まず最初に結論をいってしまうと、組織風土が健全であれば、人は必ず育つ。ここでめざすべき健全な組織風土とは、“普通の人が会社に入り、そこで普通に仕事をしていれば、何年後かに他社と比べて格段に素晴らしい人材に育っている”という環境のこと。たとえば“若いうちに幹部候補を選抜し、そのメンバーだけに特別な教育をする”といった育成の仕方は、私にいわせれば残念ながら邪道だ。これからの経営者は、普通の社員が自然といい人材に育つような組織風土をいかにしてつくるか、真剣に考えていくべきなのだ。

身近な例でいえば、社員全員が和気あいあいとした雰囲気の中、明るく挨拶を交わしている職場に新入社員が入ってきたら、「挨拶しろ!」などと教えられなくても、自然と明るい挨拶をするようになる。それが組織風土というものだ。

では、いい人材が育つ組織風土に求められる条件とは何か?

そこにはいくつもの要素が考えられるが、中でも重要なのが“平等なパートナーシップ”。たとえば昨今よく話題になる「対話力」だが、まずは互いが心を開いていなければ、テクニックだけを覚えても意味がない。その職場のメンバー全員に“平等なパートナーシップ”が浸透していれば、互いの意見が違っても、相手の意見を「ダメ!」と決めつけるのではなく「なぜ違うんだろうね」と一緒に考えてみることができる。あるいは間違った考え方をしている部下がいた場合。まずは本人の話をしっかり聞いてから、「こういう風には考えられないかな?」と問い掛ける。すると本人も「あ、そうか!」と素直に考えられる……。そんな本当の意味での対話ができるはずだ。

そして“平等なパートナーシップ”が身についたリーダーは“決めるのは私、やるのはキミたち”というトップダウンではなく、何事も話し合いで物事が決まるような職場、誰もが自由に意見をいえるような雰囲気、誰かが困っていたらすぐにみんなで力を合わせられるような環境を提供できる。

こういった前提なしに、「PDCAを回せ」「対話力の強化だ」「ホウレンソウを守れ」「コーチングで能力を開発」などと、手法やカリキュラムだけを追求しても、なかなか効果は上がらない。やはり組織風土=OSのレベルを上げるしかないのだ。

もちろん、これまでやってきたことを否定する必要は全くない。理想的な組織風土=理想的なOSヘバージョンアップするために、今までの何を変えて、何を加えればいいか?しっかりとプランを立て、実行していけばよい。そこで大いに活用してほしいのが、PDCAの手法だ。

PDCAを活用して組織風土のレベルを上げる

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