J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2012年08月号

企業事例3 未来工業 モットーは「常に考える」。改善提案で問題発見の感度と視点を養う

岐阜県大垣市に本社を構える電材関連メーカー、未来工業。取り扱う製品の多くが業界で高いシェアを占め、創業以来黒字決算という経営面ではもちろん、『常に考える』という経営理念に基づく、数々のユニークな施策で知られる。問題改善提案制度もその1つで、近年は年間1万件を超える提案があるという。同社では、社員が自発的に問題を感知し、提案し、改善することが、日々の仕事の中に組み込まれているのだ。社員自らが問題を発見し、改善する力を育てるにはどうすべきか。同社の仕組みを聞いた。

阪本 誠 氏
総務部 総務課 課長

未来工業
1965年創業。電気設備資材、給排水設備およびガス設備資材の製造・販売を行う総合メーカー。約2万種類の商品数を持ち、高い業界シェアを誇る製品も多数。「常に考える」をモットーに、創業以来赤字なしの経営を続けている。2011年第1回「日本でいちばん大切にしたい会社」(法政大学、日刊工業新聞、あさ出版共催)大賞受賞。
資本金:70億6786万円、売上高:219億円(2011年3月期)、従業員数:780名(2011年3月20日現在)

[取材・文・写真] = 石原野恵

「常に考える」ことで問題が発見される

年間約140日の休日日数、定年70歳、報・連・相禁止……数々のユニークな施策で知られる未来工業。創業以来赤字なしという優良経営企業としても有名だ。

社員数780 名という規模で、製造・販売する商品は約2万種類。産業財産権の保有数は3058 件(特許559件、意匠2216 件、商標283件)にも上る(2011年時点)。

これらの商品の中には、社員の提案によって生まれたものも多い。同社独自の改善提案制度によって上げられる提案の数は、年間約1万件超。内容は多岐にわたるが、上司の悪口と給与の不満は禁止という以外、一切の制約はない。中には、1人で年間200 件もの提案をした従業員もいるという。

なぜ、これほどまでに活発な改善提案がなされるのだろうか。同社の活動について、総務部 総務課 課長の阪本誠氏は次のように話す。 「社員が自主的に考え行動できるような環境をつくり、いかに問題発見と改善への意欲を持たせるか。この点が最も大事だと考えています」(阪本氏、以下同)

環境を整え、社員の意欲さえ引き出せれば、自発的な行動が生まれ、問題発見、そして改善につながる――同社のこうした取り組みの根底を支えるのが、「常に考える」という経営理念だ。同社の社屋や工場内には、至るところにこの「常に考える」という言葉が掲示されている(写真)。

「問題解決のための手法や理論を学ぶことも大切ですが、自分が仕事をどう進めていくかは自分で考えなくてはいけません。それには、まず認識の持ち方から変えていくこと。たとえば『不景気だから』という言葉に惑わされて考えるのをやめていないか。慣習だからといって漫然と仕事をしていないか。こうした物事の見方を変え、行動に移すということが、『常に考える』を実践するということです」

仕事が楽になるから改善提案が生まれる

提案制度の詳細を見てみよう。提案はまず各職場に設置されている「提案箱」に集まる。それらの内容を各職場で確認し、職場の責任者(上司)が実施する・しないを判断。職場で解決できない問題であれば、該当する部署に依頼することになる。

「改善提案が特に多いのは工場ですが、事務職の社員からも提案が出るように、毎年1回は『提案月間』を設け、改善提案の提出を促しています。こうした呼びかけを行うのは各部署から1名ずつ選出された提案委員ですが、普段は特に、提出を促したり、呼びかけたりする活動は行っていません」

にもかかわらず、改善提案は、制度開始以来減ることなく集まってくる。その大きな後押しとなっているのは、提案を実施する・しないにかかわらず、1件当たり500円の参加賞が支払われることである。

参加賞を出す理由について、「考えて実行に移せばプラスになるということを示すため」と阪本氏は話す。「プラスになる」というのは、金銭的な面だけではない。改善が実施されて成功すれば、仕事がやりやすくなる。仕事がやりやすくなって自分が楽になるとわかれば、自主的に問題発見のための視点を持つようになるというのが同社の考えだ。

たとえば、同社のヒット商品「スライドボックス」(P45写真)は、社員からの改善提案によって生まれた。電気のスイッチの裏側に取りつけられるケーブル配線用ボックスで、これまで数々の提案によって改善が施され、業界では同社の製品が80%以上のシェア率を誇るという。

「スライドボックスはもともと、穴2つにビス留めして壁や柱に設置するものでしたが、設置した後に位置を調整できるようにしたらいいのではないか、という提案から、穴を溝に変え、スライドできるように改善しました。さらに、ビスを2つではなく1つで固定できるように改善しました。ビスの数を減らすことで、工程も、材料も減らすことができるんです」

提案内容だけではなく考えたことを評価

製品に関する提案以外にも、たとえば台車で移動する時の負担軽減や会議室の床のキズ防止といった改善提案もある。

それらが採用・実施されると、まさにその改善が施された場所に、「改善提案シール」が貼られる(写真)。

同社の社内を見渡すと、あちこちにこの改善提案シールが貼られている。誰の提案で何が改善されたかが一目でわかるようになっているため、提案者のモチベーションにつながるというメリットがあるという。

また、身近なあらゆるところに改善提案の実例があるため、どういった点を「問題」として捉え、どのように改善すればよいのかを身をもって理解することができる。

新入社員も、これらの実例を通して、改善提案の方法や問題発見の視点を学んでいく。問題発見の“見える化”といってもよいだろう。

個人での改善提案活動の他にも、同社では約30 年前からQC(品質管理)活動を行っている。異業種QC 大会、下請け工場とのQC 大会を行ったのも、日本では同社が初めてだった。現在も職場には約130のQCサークルがあり、年2回の発表会が行われている。

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