J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2012年08月号

Opinion 2 「そうかもしれない思考」で高める問題発見能力・感度

問題解決のためには、そもそも問題を“問題”として捉える視点が欠かせない。しかし現在、変化が速いビジネス環境や、多くの情報が溢れる中で、じっくり物事を考え、多様な可能性に思いを巡らせることができなくなっている。和田秀樹氏は、精神科医、大学教授、受験指導塾運営、評論家、映画監督と多くの顔を持ち、年間40冊近い著書を刊行する。さまざまな問題に取り組む和田氏の、問題発見の視点はどのようにして身につけられるのか。問題発見能力習得や、感度を高めるためのポイントを聞いた。

和田秀樹(わだ・ひでき)氏
国際医療福祉大学大学院 教授/和田秀樹こころと体のクリニック 院長
1960年、大阪生まれ。東京大学医学部卒。東京大学附属病院精神神経科助手、アメリカ・カールメニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。国際医療福祉大学大学院教授(臨床心理学)。精神科医、受験アドバイザー、政治・経済の評論家、映画監督として活躍。心理学、教育問題、老人問題、人材開発、大学受験などの領域を中心に、著書多数。近著に『経営者の大罪』(祥伝社/刊)、『10年後も食える人 1年後すら食えない人』(青春出版社/刊)他。

[取材・文・写真] = 石原野恵

問題解決の前に問題発見感度を身につけよ

ビジネスにおいてはさまざまな場面で問題解決能力が求められるが、その前提として重要なのは、問題を問題として“発見”する感度だ。

しかし、日々の出来事や風景を当たり前だと思っている限り、問題には到底気づくことはできない。

そもそも問題に気づくことができない理由の1つは、テレビのコメントに見られるような、わかりやすく単純な結論に飛びついてしまい、考える習慣がないためである。

現在ビジネスにおいては、国際競争力をつけるために、早く結論を出して行動しなくてはいけないという風潮がある。一種のスキーマ(認知的・理論的枠組み)からくる強迫観念だといってもいい。

しかし実は、物事には急いで結論を出さなくてはいけないことと、じっくり考えなくてはいけないことがある。重要なのは、この2つの区別をつけて考えることだ。

たとえば、企業のブランドイメージに関することは、長期スパンで検証すべきことの代表だろう。

反対に、トライ&エラーで改良できるようなこと――商品のアイデアや仕組みの改善などは、どんどん試してみれば良い。失敗したらその教訓を次に活かせば良いのだ。

ただし、想定と異なる結果が出た時に、理論のほうが正しくて、現実に起きているほうが誤りであると捉えてしまうことがある。特に医療の世界で、ある事項について従来定説とされていた理論を覆す統計結果が出た時に、「検証条件が違うから」と事実を見ない傾向が強い。しかし、医学であれ他分野であれ、仮説検証の前提条件が何もかも一致して整うということは、現実にはあり得ない。

これまでの定説や理論を覆す調査結果が出てきた時に肝心なのは、事実を適切に捉え、「なぜだろう」と考えることではないだろうか。

神経症の精神療法である森田療法に「事実唯真」という考え方がある。事実は事実として素直に捉えるという意味の言葉だ。問題発見のために重要なのは、この言葉のように事実を素直に受け止め、柔軟に考えを巡らせること。そうしない限り、創造性は生まれるはずがないのである。

そうだったのか思考からそうかもしれない思考へ

では、どのようにしたら問題に気づくことができるのか。1つの方法とし、「そうだったのか思考」から「そうかもしれない思考」へと切り替えることをお勧めしたい。

これは、ニュースや新聞の情報全てを「そうだったのか」と鵜呑みにするのではなく、「そうかもしれない」と考えてみること。常日頃から、さまざまな可能性に発想を広げる習慣をつけることが問題発見につながるだろう。その際には、次の4つが重要なポイントとなる。

①豊富な知識を持ち、たくさんの答えを出せること

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