J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2012年08月号

特集 考える習慣と物事の捉え方がカギ 問題発見感度を高める

どんな職場でも渇望される「問題解決」。「問題」を解決するには、具体的な手法を活用することも大切だが、そもそも、問題への感度を高め、物事を深く捉えることが必要である。本特集では、具体的にどうしたら問題への感度を高め、解決へと実践できるのか、ヒントとなる方法や考え方、優れた事例を紹介する。

問題が発見・解決される職場には考える習慣が溢れている編集部

まず問題を“発見”することから

『 問題解決のための○○~』といったノウハウやスキルについての情報が、巷に溢れている。そして企業の中でも、問題解決へのニーズは高い。「問題解決力のある人材の育成」は、人材開発の大きなテーマの1つとなっている。2001年から社長・頭取たちは、日本の教育が抱える問題に、「問題発見・解決能力の不足」を挙げているし(日経新聞アンケート、図表)、また、若手社員の危険(問題)予知能力の低下に危機感を覚え、危険予知に関する教育を用意する企業もある。

弊誌では、この難易度の高いテーマを、「問題発見感度」という視点で考察したい。なぜなら、問題発見は問題解決のスタートであることとともに、「目標と手段を発見することであり、すなわち、発見した時点で『問題解決』もできることがほとんど」だからである(Opinion安西祐一郎氏、P26)。

そして、ビジネスや職場における、複雑な問題を解決していけるような人材は、一朝一夕に育成できるわけではない。「知識と経験が必要」(前出、安西祐一郎氏)であり、若いうちから問題を問題として認識する感度や能力を高めていく訓練が必要なのだ。

では「問題発見感度」は、どうしたら高めることができるのか。その感度や能力が低くなってしまう要因を考えることが、ヒントとなる。

問題が問題として表現されない理由

そもそも問題とは、「あるべき姿とのギャップ」――ある基準に対し不足がある、または外れていること、である。

このギャップを、働く個人が素朴に「何か変では?」と感じられない、または感じていても表現できないとしたら、その理由には、次の2つ―― ①基礎的リテラシー教育不足 ②組織風土の影響、が考えられる。

① 基礎的リテラシー教育の不足

「基礎的リテラシー教育」とは、かつて製造業で活発に行われていたIE(Industry Engineering:生産工学、科学的な生産管理技法)、QC(QualityControl:品質管理)といった仕事の進め方のもととなる知識やスキルのこと。それらの教育は、製造現場で本来、作業効率化や現場で働く人のモチベーションアップに寄与するものであるはずだった。しかし、ストップウォッチを使っての細かい作業研究やQC事例発表(自体の目的化)が、作業者に精神的圧迫感ややらされ感を与えたため現場に抵抗感が生まれ、1990 年代後半頃より多くの製造現場で行われなくなった。当然、他の産業にそうした教育が受け継がれる機会も失われた。

また、IT化やそれに付随する技術の進展によって、さまざまな「テンプレート」が簡単に手に入る時代になった。フレームワークやツールを利用し、“当てはめる”ことに慣れると、物事の捉え方が表面的になってしまう。脳が汗をかくほどに“、考える”ことがなくなったことが、ビジネスパーソンの本質に迫る洞察力や、それを表現する力を衰えさせているのではないだろうか。

問題発見感度の低下は、こうした基礎的リテラシーや、物事を深く考えるための土台を、もう一度しっかりと固め直すことで回避できる。

② 組織風土の影響

そしてもう1つ、問題を問題として捉えられないことには、「組織風土」が大きく関係している。たとえ問題に気づいたとしても、「いえない」または「いわない」風土が蔓延している職場が多い、ということだ。

この理由には、

○価値観の多様化

○偏った成果主義導入の弊害

があるだろう。

● 価値観の多様化

周知のことながら、世の中の価値観や、“働く人としての個人の価値観”が多様になってきている。さまざまな価値観を持つ人が入ってくれば、組織の風土も当然、変化する。

多くの伝統ある企業では、これまで暗黙的に受け継がれてきた理念や行動指針を、社員の行動や考え方のもととなる“価値基盤”として改めて定め直す必要に迫られている。

企業内の価値基盤が統一されないと、どんなことを問題として捉え、表現するべきかの基準も、人によってばらつく。すると、たとえ問題意識や問題発見感度があっても、「これを問題と感じているのは自分だけなのではないか」などと考え、いわずにいてしまったり、問題だと口に出したとしても、認識の違いで放置されたりすることになる。

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