J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2012年10月号

企業事例3 パナソニック エコソリューションズ創研 退職OBの活用で連結企業・サプライヤーの製造力を強化

ものづくりの高度化やグローバル化が進み、企業の存続は、連結企業、サプライチェーンなどを含めた改革・効率化が不可欠になっている。そんな中で、連結企業・サプライヤーの経営体質強化と人材育成に力を入れているのが、パナソニック エコソリューションズ創研。ものづくり人材の育成こそ重要な課題という同社にその狙いと仕組みを伺った。

加藤 憲男 氏>> 代表取締役社長
岡村 武司 氏>> 専務取締役 技術製造推進担当
吉川 章 氏>> 技術製造コンサルセンター 所長

パナソニック エコソリューションズ創研
1992年設立。コンサルティング、研修、審査・診断、研修コンテンツ開発事業を行う。経営体質強化をめざし、経営戦略とSCM(サプライチェーンマネジメント)の視点から、幅広い領域の課題解決をトータルにバックアップする。
資本金:3億円、従業員数:280名(提携コンサルタント、講師含む)(2012年8月現在)

[取材・文・写真] = 梶 文彦

OBの専門人材を活用してサプライヤーの支援と人材育成

パナソニック エコソリューションズ創研のスタートは1992 年。当時、松下電工内にあった生産技術研究所を母体として設立された松下電工技研がそのルーツである。同社代表取締役の加藤憲男氏は、次のように語る。「もともと松下電工には、人材育成を専門に担当する部門があり、社内の人材育成はそこで行われていました。しかし、経営環境の変化とともに、経営体質の強化や高度な製品づくりには社内だけでなく、サプライヤーを含めたよりグローバルな体質強化や人材育成が必要になってきました。そこで、ものづくりのプロ集団である生産技術研究所に、社外の人材を育成する部門をつくり、後にそれを分社化して、設立されたのが当社です」

同社が担当する業務は、大きく2つ。ものづくり支援と営業支援(販売力強化支援)である。それぞれ、研修、審査・診断、コンサルティングと新規事業である研修コンテンツ開発事業の4事業が行われている。これら全てのプログラムが、同社の連結企業やサプライヤーにオープンにされ、提供されている。

発足以来20 年が経ち、同社が対象とする事業所、社員数は増加。その人材育成はいわば、本体の屋台骨をしっかりと支えるための土台づくりともいえる。その意味で、同社がパナソニック㈱エコソリューションズ社グループに経営革新・人材育成の面で果たしてきた役割は小さくない。

その同社の特徴は、社員約100 名の他に、生産技術・管理技術・改善などに関する高度な専門家のコンサルタント、インストラクター、180 名を擁していること。そのうち140 名ほどは、同社のOB。

もともとスタッフは生産技術研究所の専門家として、松下電工のものづくりをつくり上げてきた人たちだけに、ものづくりに対する思いやノウハウはDNA化している。同社が蓄積してきた技術やノウハウを伝承するためには、願ってもない効果的な環境といえる。

同社が提供する研修は、多岐にわたる。たとえば、ものづくり支援「技術製造編」の集合研修では、階層別に「商品技術・生産技術」「製造スキル・工程管理」「営業・購買・生産管理」「品質管理」「ISO・安全衛生・環境」「グローバル」「電気関連公的資格」「住宅建築関連公的資格」の8分野で130近くのプログラムが用意されている。その多様さは60 ページを超える案内用の冊子からもうかがえ、ものづくりの基本から幹部研修まで実践的なテーマが網羅されている。研修案内は、直接、連結企業・協力企業に連絡がいき、東京と大阪にある常設の研修所で研修が行われる。これらの研修が、DNAを伝えていく場となっている。

製造力強化に人材育成めざすは3つのトランジット

集合研修の他に特に力を入れているのがコンサルティングである。専務取締役技術製造推進担当の岡村武司氏は、コンサルティングへの想いをこう話す。「コンサルティングでは、支援企業の改革を進め、ものづくり力を強化することをめざしています。それに加えて、私たちの狙いはもう1つあります。人材育成です。コンサルティングで成果が出て良かった、で終わらせたくないのです。支援する企業のスタッフに改革のプロセスを一緒に体験してもらうことでノウハウをトランスファー(伝承)することができます。つまり、コンサルティング活動を通じたOJTで人材を育成することをめざしているのです」

こうした人材が、支援企業の中で中核人材として育ち、その後、自社の改革を積極的に進める担い手となる。そして、一層の改革を進めてもらうというのが同社コンサルティングのイメージである。企業内企業としての役割は明確である。

では、どのような人材を育成しようとしているのか。

日本のものづくりの特徴は、高度な品質にある。緻密につくられたパーツを高度な技能を持った作業者が組み上げることで高い品質を確保し動作を保証するが、近年、そのものづくりの世界で大きな変化が起きている。

変化をもたらしている要因は、製品の高精度化、技術の高度化・複合化・細分化、生産の多品種少量化、開発・生産工程の短納期化、国内ものづくりの現場でのパート・派遣社員の増加、技術のモジュラー化による新規参入の増大とコスト競争の激化――などで、これらが複雑に作用し、ものづくりの現場にさまざまな問題を起こしている。

そうした環境の変化は同社が支援する企業も同様。ものづくり力の強化とは、つまりこうした変化に自律的に対応できるものづくりの現場を育てるということになる。いいかえれば、与えられたマニュアル通りの作業を行うだけではなく、問題を未然に発見し、QCDの不具合を事前に食い止めることができる人材である。「私たちは今、①エネルギーのトランジット、②人のトランジット、③グローバルのトランジットという3つのトランジットを戦略に掲げています。エネルギーのトランジットとは省エネ体質への転換、人のトランジットとは技術や技能の伝承と育成、グローバルのトランジットはグローバル化へのシフトです」(岡村氏)

特に人のトランジット、技術技能の伝承と育成は同社の重要な課題になっている。「エコソリューションズ社グループにおける政策連動の中で、今、特に力を入れているのが、製造力の強化と、そのための人材育成です。ものづくりの現場で備えるべき能力には、①担当する業務を処理するための高いスキルと、②その業務をいかに効率的に処理するかというマネジメント力の2つがあります。この2つは、私たちの重要な課題です」(加藤氏)

とはいえ、パナソニックグループ内に技能を育成する工科短期大学校があるので、同社が支援するのは、技能そのものにはならない。技能を伝承・向上させるための仕組みづくりと、その支援、そして業務処理のマネジメント能力、要するに、問題解決力である。

「1人の100歩より100人の1歩」を育てる

「マネジメント力や問題解決力を備えている人材が、ものづくり中核人材ということになるのでしょう。中核人材の育成というと、ものづくりの現場を取り仕切る“エース”を育成すると考えがちですが、実は私たちがめざしているのはそうではないのです。もちろん、現場のエース人材も必要ですが、私たちが心がけているのは、1人で100歩を進むエースではなく、1歩ずつ進む100人を育てることなのです。こうした考えは、華やかさはありませんが、松下の伝統である全員参加の経営に近い思想だと思います」(岡村氏)。

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