無断転載ならびに複製を禁じます。なお内容は取材・掲載当時の情報です。

企業事例1 アイシン高丘 ものづくりの基盤技能を育成するPMマスター研修制度
自動車関連の鋳物を生産するアイシン高丘は、TPM活動の高さで知られるが、その基盤になっているのが、ものづくりの「核」となる班長クラスを育成する3ヵ月間のPMマスター教育である。30年間もの長きにわたり継続されている、このプログラムの概要とは。
班長昇格の要件PMマスター
「うちの会社は、やめるのがヘタな会社ですから、一度始めたらいつまでも続けるんです」と語るのは、アイシン高丘 総務部教育センター チームリーダーの水野徳秋氏。同社は、ものづくりに力を入れる名古屋地区の企業の中でも、「TPM(総合生産保全)」※1や「からくり改善」※2で全国的に知られる会社である。1960年、トヨタ自動車と新川工業・愛知工業(後のアイシン精機)の鋳造部門を統合し自動車部品の鋳物に特化した高丘工業を設立、その後アイシン精機の資本などが入り、1986 年アイシン高丘が誕生する。現在は、自動車部品を主体とする鋳造・機械加工、塑性加工および音響製品の製造・販売などを行う。
業務が鋳物の成型とその加工だけに、加工技能は同社のものづくりの基盤になっており、それだけに、技能者教育は必須要件だ。1981年にはTPMの導入を決め、自主保全活動に取り組んできた。そして、翌1982年、技能者教育の基盤としてスタートされたのが、3ヵ月間の集合教育で生産現場のリーダーを育てる「PMマスター教育」制度である。
以来30年、25歳~35歳の製造部門の班長候補者を対象に、研修センターで年に4回開催される。1回の参加者は10人ほどで、年間40人ほどが育成される。
これまでの修了者は917名に上り、そのうち現社員は665人、全社1848人の3分の1を占める。主催は総務部教育センターで、水野氏がチームリーダーを務めるが、水野氏自身も、これまで116 期が行われたこの研修の24 期生である。
水野氏は、1979 年に同社に入社後、工機部、TQM(総合的品質管理)・PM(設備保全)推進部、生産技術部TPM推進担当と業務を担当し、2011年7月から技術統括部TPM担当と、教育センターのチームリーダーを兼任。技能出身者が教育センターで技能教育のリーダーを務めているということからも、同社の技能教育にかける意気込みを知ることができる。
図表1には、同社で行われている技能教育が記されているが、ここにある以外で改善実践が行われているのはTPS 研修である。PMマスター教育は、好不況の波にも変わらずに実施され、同社の技能を支える屋台骨の研修という位置づけだ。
上司と本人のやる気が第一事前面接でしっかり確認
残り:3,103文字
/
全文:3,879文字
記事の続きはご入会後、
お読みいただけます。
プロフィール
アイシン高丘
1960年(昭和35年)3月設立。基盤である自動車部品事業の拡大と技術の向上をはかるとともに、そのノウハウを他分野で活かし、新たなビジネスの創造をめざす。
資本金:53億9600万円、売上高:1944億円(連結、2012年3月期)、従業員数:2446名(2012年3月31日現在)
[取材・文] = 梶 文彦