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月刊 人材教育 2012年10月号

新連載 人材教育 the Movie ~映画でわかる世界と人~ vol.1 「七人の侍」
今月から始まったこの連載。映画を楽しみ、話題の幅を広げながら、世界と人間についての理解を深めようという試みである。第1回目は日本映画を代表する名作をということで、黒澤明が世界に飛躍するきっかけとなった「七人の侍」を選んだ。
この映画が、日本を代表する作品として、今も内外で変わらぬ高い評価を獲得し続けている理由は何だろうか。1つは、CGのような技術が全くなかった時代に、俳優の演技と演出、撮影技術という人間の力だけで、雨中の決戦シーンに代表される数々の名場面を生み出した完成度の高さだろう。後に「影武者」や「乱」で完成される馬の美しい撮り方の原型が、すでに現われている。
もちろん60年近く前の作品だから、史実と異なっている点もある。その後の歴史研究で、中世の農民は自ら武装して村を守っていたことがわかってきた。だがそれでも「七人の侍」が色褪せないのは、時代を超えた人間の内面を深く描いているからではないか。特に志村喬演じる指導者の姿が実に魅力的なのだ。日本における指導者像の、1つの理想像ではないかと思われる。
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プロフィール
1954年生まれ、メディア・エンタメ時評。中央大学大学院法学研究科修士課程修了(政治学修士)。シンクタンク勤務後、企業や自治体などで研修講師を務めつつ、コメンテーターとして活動。著書に『歴史を知ればもっと面白い韓国映画』『映画が語る昭和史』(旧・ランダムハウス講談社)等がある。
(2枚組)〈普及版〉DVD発売中
¥5,040(税込)
発売・販売元:東宝
黒澤映画の金字塔。野武士が野盗化していた戦国時代を舞台に、貧しい百姓たちが侍を雇い、全力を挙げて野武士の群から村を守ろうとする姿を描く。