J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2012年11月号

Opinion 2 ミドルの課題を解決するには、会社全体での支援が必須

日本経済団体連合会(経団連)は、2012年5月に『ミドルマネジャーをめぐる現状課題と求められる対応』と題する報告書をまとめた。報告書の作成に事務局として関与した労働政策本部主幹の新田秀司氏に、ミドルマネジャーの現状と企業が取り組める対応について聞いた。

新田 秀司(にった・ひでし)氏
1994年日本経営者団体連盟(日経連)に入局。2002年団体統合により日本経済団体連合会(経団連)となり、社会本部広報担当兼出版・研修事業本部タイムス担当、労働政策本部労政・企画グループ副参事、労政第一本部労政グループ副長などを経て、2009年より現職。厚生労働省労働政策審議会 労働条件分科会中小企業退職金共済部会委員、中央職業能力開発協会参与なども務める。

[取材・文・写真] = 千葉雅夫

増大する業務負荷と部下指導・育成に苦悩

報告書『ミドルマネジャーをめぐる現状課題と求められる対応』をまとめたのは、経団連の人事・労務委員会と同委員会の政策部会である。人事・労務委員会は経団連の企業会員の経営者・役員クラスの方々が中心メンバーになっているのに対し、政策部会は、実務に携わる人事労務部門の管理職の方々が中心となって活動しており、具体的な検討は政策部会で行った。

ミドルマネジャー問題をテーマに検討することになったのには前段がある。経団連が2010 年5月に公表した報告書『経営環境の変化にともなう企業と従業員のあり方』をとりまとめる議論の中で、職場における課題として「ミドルマネジャーをめぐる問題の解決」を挙げる意見が多かったことだ。

それを踏まえて当委員会では、ミドルマネジャーに関する問題を次の検討テーマに設定した。

本格的な議論に入る前に、ミドルの実態を把握するための調査を実施。現場のミドル(40歳前後の中間管理職が中心)314名、加えて経営トップ55名から回答を得た。

調査の結果、ミドルマネジャーの現状に対する認識として、次の2点が明らかになった。

1.業務量が増大する中、プレーヤーとしての活動を余儀なくされ、増大する業務負荷への対応と部下の指導・育成に苦悩している。

2. 職場に対する全体的な満足度は高いが、自社の教育訓練施策、業務量、人員面に関して低い。

また、経営トップの回答からは、自社のミドルマネジャーの働きぶりに対しては、高い満足度を示しているものの、「部下のキャリア・将来を見据えた指導・育成」と「経営環境の変化を踏まえた新しい事業や仕組みの企画立案」については、十分に役割を果たせていないと認識していることがわかった。

これらの調査結果をもとに、1年半以上にわたる議論を重ねてまとめたのが、今回の報告書『ミドルマネジャーをめぐる現状課題と求められる対応』である。

多岐にわたるミドルの基本的役割

報告書とりまとめに向けた議論は、ミドルマネジャーの基本的な役割を整理することから始めた。検討した結果、ミドルに求められる基本的な役割を以下の4つに集約した。

①情報関係

社内外の情報を収集し、周辺状況を分析して伝達する役割をさす。議論の中で重視されたのは、経営トップが示す方針をただ部下に伝えるのではなく、咀嚼して、自分の言葉で自らのチームがめざす方向性を明示すること。ミドルマネジャーには、経営トップと現場をつなぐ「連結ピン」としての役割が期待されているが、実際はできていないとの指摘が多い。この背景として、ミドルに限らないことだが、「解答」をすぐに求めたがる傾向が強まっていることや、考える力自体が低下していることなどを挙げる意見があった。

②業務遂行関係

いわゆるマネジメントである。自らもプレーヤーとして仕事の成果を上げながら、日常業務の処理や課題解決を図っていく――こうした基本的な役割に加えて、近年は、「新規事業やプロジェクトの推進」「イノベーションの創出」「グローバル化への対応」といった新しい役割も期待されるようになった。だが、現状は、新しい役割はおろか、基本的な役割すらこなせないほど、ミドルは傷んでいるのではないかとの声も多い。

③対人関係

コミュニケーション力の低下に伴い、対人関係力の低いミドルが増加しているとの指摘があるが、これは②の業務遂行にも関連する重要なものである。特に部下の教育に関しては、一人ひとりの性格を把握し、長所と短所を踏まえた指導・育成をしていく必要がある。

マネジメントの個別化が求められる現状において、部下によって指導方法を変えていかなければ、現場はうまく機能しない。また、パワハラやメンヘルの問題が増えてきた近年では、人間関係上のトラブルを早期発見し、メンタル面をフォローすることも、職場運営には欠かせない。

④コンプライアンス関係

ウエイトが高まってきている役割である。個人情報の管理、機密情報の漏洩対策などの他、雇用形態の多様化などを受け、現場を預かるミドルとして知っておかなければならない労働関連法規も広範にわたっている。

以上、ミドルマネジャーの基本的な役割だけでも、多岐にわたる業務が課せられている。基本事項から範囲を広げれば、ミドルの役割はさらに拡大することになる。加えて、ミドルはプレーヤーとしての活動も余儀なくされる中で、雑多な業務も数多くこなしているため、マネジメントに当てる時間が十分に取れない状況にある。

ミドルが機能しづらい“構造的”な要因

プレイングマネジャーという言葉が当たり前になり、ミドルの疲弊がクローズアップされてきてはいるが、この問題はなかなか解決されていない。それは、なぜなのか? 報告書では、ミドルマネジャーが「求められる役割を果たしづらい構造的な要因」を5項目にまとめた(図表1)。あえて表題に“構造的”という言葉を付けたのには理由がある。それは、ミドル個人で解決できる問題ではないという意味を込めているということだ。

これまでの議論の過程において、ミドルマネジャーが十分に業務を遂行できない要因として、ミドル自身の能力や経験不足が影響しているのではないかという意見も当然あった。だが、検討を進めていくにつれ、そうしたミドル個人の問題として片づけられない、本人の努力だけでは解決できない“構造的”な要因に起因していることが明らかになった。

経営環境の変化、雇用形態の多様化、コンプライアンス等に関する管理実務の増大などといった構造的な要因をミドル個人だけで解決することはできない。企業は、ミドルマネジャー本人の問題として突き放すのではなく、組織として適切な対応を講じていかなければならないことをしっかりと認識し、ミドルマネジャーが役割を果たしやすい環境を整備していく――これは企業に課せられた喫緊の課題といえる(図表2)。それでは、企業はミドルの環境を整備するために、どのような対応をすればよいのだろうか。

業務負担を軽減し社内研修を強化

報告書では、ミドルの課題解決に向けた具体的な対応策を3つに分けて提示している。前置きしておきたいのは、企業はこれら全ての対応策を講じなければならないわけではないということ。それぞれの企業やセクションが抱える課題に照らし、自社に適している対応策があれば、参考にしていただきたい。

〈ミドルの課題解決に向け、企業に求められる対応策〉

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