J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2013年07月号

Opinion 2 グローバル化は究極の民主化 自社の“変わり者”をグローバル人材に新たなビジネスチャンスを見つける

グローバル化とは民主主義の究極の形だと天野氏は言う。世界では、組織名抜きで個人が自らを主張できなければならない。個人より組織を重視する日本企業の習慣を持ち込んでは、相手にされないのだ。そうした状況で、これから日本企業が打つべき手を紹介する。

天野 雅晴( あまの まさはる)氏
カリフォルニア州立大学サンディエゴ校工学部修士課程修了後、1990 年Global Vision Technology, Inc.を米国シリコンバレーに設立、日米技術の架け橋としてのコンサルティング業務やベンチャーキャピタル業務を行う。2003年日本法人を設立。著書に、『自分をグローバル化する仕事術』『シンプルでうまくいくコミュニケーションの技術』(共にダイヤモンド社)などがある。

[取材・文]=熊谷 満 [写真]=グローバルビジョンテクノロジー提供

相手にされない日本企業

米国人「このプロジェクトをあなたの会社と一緒にやりたい。私はこれからすぐにボストンに発たなくてはならないのだが、今ここで回答をくれないか」日本人「ええと、まずは本社に確認をとらないと。日本の本社が開く時間までちょっと待ってください」

このようなやりとりをしているようでは、グローバル社会では相手にされない。実際、日本企業と話をしてもスピード感がなく、結果が出ないということで、日本企業を相手にしない風潮がシリコンバレーの一部に広がっている。

中国人のビジネスマンだったらこう言うだろう。「そのプロジェクト、とてもいいですね。ぜひ検討しましょう」。

これは何も中国人に限った対応ではない。韓国人でもインド人でも、アメリカで働くビジネスマンであれば皆そう答える。つまり彼らの答え方こそがグローバルスタンダードなのだ。日本人だけが残念ながら違う。

今、世界で進むグローバル化とは、「個人」をベースにした大きな社会の変革だ。そこで人々は組織ではなく、個人として世の中と渡り合う。

私は米国の大学院を卒業した後にシリコンバレーで起業し、日米間の技術分野のコンサルティング業務や人材育成業務を20 年以上にわたって続けてきた。シリコンバレーは今この瞬間にも世界中から優秀な人材が集まり、数々のイノベーションが起こっている。グーグルなど世界的な企業が数多く誕生しているのもご承知の通りだ。

まさにグローバル化の最前線といえるこの場所には、日本企業の駐在員も数多い。しかし、残念ながらその存在感は極めて薄い。シリコンバレーでは「ちょっと本社にお伺いを」などと返答する人間は相手にされない。自分で判断できない人間だと思われるだけだ。

もちろんシリコンバレーにいる日本人駐在員は優秀な人材に違いない。だからこそわざわざシリコンバレーまで派遣されているのだ。しかし、何事も組織の判断を第一とする日本と、個人の判断で物事を進めていくグローバルの現場は、言ってみれば水と油のようなもの。日本人の駐在員がその中に混じってやり合うことは難しい。

また、本人がそれを望んだとしても、私の知る限り、彼らは本社への業務報告に追われているのが現実だ。これでは彼らの優秀さが全く生かされないし、わざわざアメリカにいる意味もなくなる。

イノベーションのインサイダーになる

シリコンバレーに限らず、アメリカの各地には「エコシステムイノベーション」と呼ばれる、イノベーションを生むための「生態系」が存在する。これこそが新たなビジネスが生まれる現場であり、そこには世界中から人が集まるから、グローバル化を推し進める「ハブ」のような役割もある。

エコシステムイノベーションとは、自然界の生態系のようにさまざまな構成員が持ちつ持たれつ、互いに協力・競争しながら、イノベーション活動をしている状態を指す。たとえばあるアイデアが生まれ、実現の可能性があるとなれば、それをサポートする人材や技術、資金援助する投資家、パテント調査の弁護士、またはプロトタイプをいち早く作るための会社など、必要なヒト・モノ・カネがつながり、その後押しをする。アメリカでは大学を中核にして、こうした生態系が各地に存在している。

毎年シリコンバレーだけでも1万7,000 社もが起業する。もちろんそのほとんどが失敗に終わるが、その中には必ず「当たり」がある。また、たとえ失敗してもそのアイデアをブラッシュアップしてまた別の会社を興したり、次に転職した会社で試してみたり、そうした連鎖反応が至るところで起き、新たなイノベーションが生まれている。

日本企業もこの生態系のインサイダーとして入り込む必要があるだろう。しかし、そこで交わされるのは「私にはこんなアイデアがあるんだ」「へえ、面白いね。じゃあ、会社つくろうか」という個人同士の会話だ。決して「我が社は」ではない。

たとえば、シリコンバレーでは自由に参加できる各種イベントや小ミーティングがあちこちで開かれ、盛んに情報交換が行われている。日本の異業種交流会であれば最初に会社の名刺を出すが、シリコンバレーではまず「私がどんな人間で、何をしたいのか」を個人として主張する。そこで話が盛り上がれば名刺交換となるのが普通だ。逆にいえば、そのスタンスでなければ話もしてもらえない。

これは組織の意識が強い日本との決定的な違いであり、日本人が生態系のインサイダーになれない理由はここにある。

グローバル化とは歴史の必然

そもそもグローバル化とは何だろうか。私はそれを「究極の民主主義」だと定義している。

人類は文明の発生と共に少しずつ民主化してきた。その過程においては多くの困難があり、それをサバイバルするためにさまざまな社会体制を生んだ。たとえば君主制や軍国主義も、完璧なものではないが、ある意味その時代をサバイバルするための国家戦略だったといえる。

本来、生物としての人間は自己の存在を主張したいという欲求を持っているはずだ。しかし、生存環境が厳しい中、それぞれが好き勝手に振る舞っては種としての存続ができない。そのため、人類は長く個人が自由や権利を手にすることができなかった。

しかし文明が進んで世界が豊かになるにつれ、個人が自らを主張できるようになってくる。そしてインターネットに代表される情報技術革新が決定打となり、距離や時間の壁が壊れ、さらには性別、国籍、民族、宗教、年齢差など、それまで障害だったものが一気に撤廃されていった。

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