J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2013年08月号

人材教育最前線 プロフェッショナル編 考える力と自発性を導き出す 人事が成すべき教育の追求

高い専門性と技術を武器に、四輪・二輪車部品を国内外のメーカーに提供する山田製作所。“世界一級品”のものづくりをめざす同社が求めるのは、“自責で捉え、自ら考え、自ら行動する”人材だ。総務部人事課課長の星野和彦氏は、そんな山田製作所の人事・教育体系をつくり上げてきた中心人物。教育熱心な前社長・現社長とともに独自の教育施策を実行してきた。だが、星野氏は「私自身、まだまだ学ぶべきことがたくさんある」と語る。その言葉には“人事としてありたい姿”を求める揺るぎない信念と、社員への思いが宿っていた。

星野 和彦(Kazuhiko Hoshino)
事業管理本部 総務部 人事課 課長
1992年、山田製作所入社。総務部配属後、人事担当として人事・教育制度を立ち上げる。2000年、人事課課長に就任。2005年から3年間、生産管理及び技術研究所の開発管理ブロックマネージャーとして他部門を経験。2008年、人事課課長として総務部に異動、現在に至る。

山田製作所
1946年設立。四輪車、二輪車のエンジン用オイルポンプ、ウォーターポンプを中心に各種ポンプ製品、ステアリング関連製品、トランスミッション関連製品などの機能部品を開発・製造。
資本金20億円、連結売上高:823億1,000万円(2013年3月期)、社員数:1,680名(2013年3月31日現在)

取材・文・写真/髙橋 真弓

人事部門として何ができるか何をすべきか

「企業は人なり」を信条に、多彩かつ独自の教育プログラムを展開し、高い技術力と人間力を育てる山田製作所。そんな同社で教育体系の創生に深くかかわってきたのが、総務部人事課課長の星野 和彦 氏だ。同氏は1992年、30歳で山田製作所に中途入社。総務課に配属され、人事を担当することになった。その頃の人事はまだ“課”として組織されておらず、総務課が兼務していた。星野氏は当時をこう振り返る。「前任の人事担当者の退職に伴い採用されました。それまで人事の経験はなく、何もわからない状態で、引き継ぎもそこそこに仕事を任されてしまったのです」さらに会社自体、評価や等級、昇格など人事に関する明確なものもなく、星野氏は何年もかけ、少しずつ制度を構築していった。「山田製作所にとっても私にとっても、全てが初めてのことでした。とにかくやっていくしかないと思い、本や他社の人事制度などを参考にしながら勉強しました。教育も同様です。“教育”と呼べるような、きちんとした体系やプログラムはありませんでした」当初は形を整えるだけで精一杯だったという。しかし、年月を重ねる中で、“この階層にはこの教育”と単に整備するだけで人事の役割が果たせているのか?という疑問が頭をよぎるようになった。「人事のあるべき姿を求め、毎日が試行錯誤の連続でした。それは今なお変わりません」山田製作所がめざす“自ら考え、行動する”人材に育てるために、人事部門として何ができるか、何をすべきか。星野氏が育成施策を考える時、常にこの問いが行動の基準になっているという。

自ら考える習慣の下地を長期新人研修でつくる

“自ら考え、行動する”下地づくりには新人教育がカギを握ると考えた星野氏は、10年ほど前、新入社員研修の体系を見直し、新たなプログラムづくりに着手。研修を受けただけで終わらせないために、なぜその研修が必要なのか目的を明確にし、現場でどう活きるかにフォーカスした。1週間程度だった研修は、現在では3カ月と長期だ。さらに大卒の技術職は3カ月間の現場研修に加え、技術研究所で基礎技術を1年間学び、計1年半の研修を経て初めて配属先が決まる。最初の3カ月の研修では、さまざまな実習が行われる。たとえば、近隣のデイサービスや福祉施設で2週間、介護を体験する介護研修や、東日本大震災被災地でのボランティア活動もある。さらに、基礎技術の訓練校「ヤマダテクニカルセンター」で1カ月、旋盤や溶接といった、ものづくりの基礎も学ぶ。「この3カ月間は、実際の製品づくりに全く携わりません。介護研修などを通じて、そこで働く人たちのプロ意識や働き方を肌で感じてもらいます。また、一緒に働く仲間とのつながりを強めながら、机上の勉強だけでなく、実際に自分でやってみることで得られる“気づき”を知ってほしいのです」社会人としての心構えを学ぶ中で、“自ら考え、行動”していくための糸口を与えているのだ。

社員が仕事で力を発揮するための教育を

星野氏が“人事がすべき教育とはどういうことか”を考えるようになったきっかけの1つに、東日本大震災の復興支援ボランティアの企画があった。山田製作所では震災直後、有志を募り、被災地・宮城県石巻市でボランティア活動を行った。参加者は毎週10名ずつ、延べ220名に達した。それまでも地域の道路清掃や河川清掃などのボランティア活動は行っていたが、部署ごとに人数を決めて参加させていたため、やらされ感があった。しかしこの東日本復興支援ボランティアでは、自らの意志で本当にやりたい人だけを集めた。この時、星野氏は、ボランティアを経験した社員たちの、仕事の時にはなかった目の輝きを見て衝撃を受けたという。「自ら行動を起こした人の意欲、熱意、そして同じ目的に向かって取り組む社員の団結力やパワーを目の当たりにしました。ならば人事という立場の我々は、社員がそうした力を仕事でも発揮できるような場や教育を、どれだけ提供できているのか。ただ決まりきった研修をやっているだけでは社員は輝かないと思いました」社員が自発的にやろうと思えるような研修をもっと提供したい̶̶そう考えても、実際に教育という側面からやる気や力を引き出すのは並大抵のことではない。だが、その実現が自分の役目だと星野氏は意を強くした。

人事を離れ部下育成の重要性を痛感

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