J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2013年08月号

CASE.2 オリエンタルランド 「強化」ではなく「支援」 組織・多面診断やメンター制度―― 内省機会と精神的支えを豊富に用意

組織診断や多面診断、メンター制度等、新任マネジャーへ手厚い施策を行っているオリエンタルランド。その施策の数々を貫くのは、同社ではマネジャーの「強化」ではなく、「支援」を行うのだという骨太の方針だった。
 「オリエンタルランド流 新任マネジャー育成・支援法」とは。

東郷 治人 人事本部 人事一部長
中平 朋子 人事本部 人事一部 人事企画グループ チーフリーディングスタッフ

オリエンタルランド
1960年に設立。東京ディズニーリゾートの経営や運営、不動産賃貸等を行う。資本金:632億112万7,000円、連結売上高:3,955億2,600万円、従業員数:正社員2,186名、テーマパーク社員795名、準社員18,675名(2013年3月期)

[取材・文]=西川 敦子 [写真]=本誌編集部

●ある取り組みの中の一コママネジャーの“語り場”

8~10人のマネジメントが一堂に会し、何やら話し合っている。全員、マネジャーたちだが、部署はバラバラ。ファシリテーターはいるものの、研修のワークショップというわけでもなさそうだ。いったい彼らは何を話し合っているのか――?

オリエンタルランドでは、「MGR課題共有会」と銘打ち、マネジャーが情報交換をする機会を設けている。「部下とうまくコミュニケーションをとるには?」「効率よく成果を出すタイムマネジメントのコツとは?」「年上の部下を上手にマネジメントするには?」。毎回、テーマを決め、マネジャーが抱えやすい問題について話し合う。「壁にぶつかった時どう乗り越えたか」といった具体的な体験や教訓など、リアルな知恵を交換できるのが魅力であり、経験の浅いマネジャーにも参考になる話が多い。

終了後は夜の親睦会へ。昼間は口にしなかった体験や思いが、どっと溢れ出すことも。「最初は『いったい何が始まるんだ?』という感じで、皆すごく緊張していましたね。『これは人事主導の研修ではなく、マネジャーが会社の中核になって、オリエンタルランドを進化させていくためにどうしたらいいか、皆で一緒に考える勉強会です』と伝えました。人事評価とは関係のない会であることをわかってもらうため、人事ラインとは別にマネジャーへ直接働きかけるチームとして担当部長を2名、専任でつけています。我々の目的は“教育”ではない。あくまで彼らを“支援”することなのですから」(人事本部人事一部長東郷治人氏)

●背景鉄は熱いうちに打つ

「“支援”して育てる」という方針は、そもそも2009年に打ち出された、と東郷氏は振り返る。2009年といえば、オリエンタルランドにおける大きな節目の年だ。同年3月、上西京一郎氏が社長兼COOに就任。

「『マネジャー育成に特に力を入れよう』と、当時の人事本部長が大きく旗を振りました。次の時代の成長は今の延長線上ではなく、もう一段、シフトアップしたところにある。これまでとは違った成長ベクトルへと切り替えなければならない。その時に中核となるのがマネジャーたちだと。そこでスタートしたマネジャー育成施策の一環として、新任マネジャー向けの施策も始めたのです」(以下、付記がない場合は東郷氏)

同社の支援型育成の最大の特徴は、そのきめ細かさ、手厚さにある。さまざまな施策があるが、大きく分ければ、「マネジャーの役割や基礎を学ぶ機会」「内省・気づきを促す施策」になる。ちなみに同社では、マネジャーに「トライアル期間」を設ける。その期間は人事通達より約半年から1年程度。そのうち最初のおよそ半年間にさまざまな支援施策が行われる。その後、任用見極め試験が実施され、改めて正式に任用となる。「トライアル期間」は真のマネジャーへの準備期間ともいえそうだ。

● 具体的な取り組み1役割が変わることを伝える

施策のスタートは早い。手始めに行うのが人事一部長による「事前講話」。人事通達の後、トライアル期間に入る前に、マンツーマンで30分程度の面談を持つのである。「マネジャー職に就くにあたり、まず必要になるのが意識転換です。登用される人々は皆、相当なハイパフォーマー。かなりの仕事量をこなし、高い成果を出してきた人たちです。ところがマネジャーになると、自力で成果を出すのではなく、メンバーが成果を出していけるよう、育成しなければなりません」プレイヤーとして優れているマネジャーのやり方を、チームの皆が同じようにできるわけではない。働き方のスタイルも違えば、仕事に対するモチベーションも違う。キャリアアップしていきたい人もいれば、育児を優先したい人、スペシャリスト志望もいれば、定年が近い人もいる。

「そうした中、自分のやり方を部下たちに押しつければ、双方の間に距離が生まれます。結局、マネジャーが1人で突っ走り、誰もついてこない、ということにもなりかねません」そこで、多様な部下たち一人ひとりと向き合い、育て、適材適所の組み合わせをしていくことで組織を引っ張っていく――そういうマネジャーになってほしい、という会社の期待や意識の転換について、最初の段階で彼らに伝えているのである。

トライアル期間の直前とマネジャー任用直後には、「役割理解研修」も行われる。ここでは、会社を取り巻く経営環境、マネジャーの重要性、そしてマネジメントとしての基本が語られる。「最初の研修では人事担当役員より直接伝えます。部下一人ひとりと向き合って育成し、成果を上げるというマネジャーの役割はもちろん、自信や好奇心、コミュニケーションの重要性も伝えます。中でも大切なメッセージは、マネジャーが持つべき倫理観や誠実さ、真摯さについて。マネジャーに欠かせない資質として一般職以上に高いレベルが求められていることです」

●具体的な取り組み2心を支え、気づきを促す仕組み

すでに触れたように、トライアル任用開始から半年間にさまざまな施策が行われ、任用開始月に実施されるものも少なくない(前ページ図表)。関係各部門長による講話の他、実務理解や労務管理、評価に関する研修などが集中し、新任マネジャーたちは多忙な日々を送ることとなる。

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