J.H.倶楽部

無断転載ならびに複製を禁じます。なお内容は取材・掲載当時の情報です。

月刊 人材教育 2013年08月号

人材教育 The Movie ~映画でわかる世界と人~ 第11回 「街の灯」

「街の灯」
1931年 米国 プロデューサー・監督・脚本・作曲・編集:チャールズ・チャップリン

川西 玲子(かわにし れいこ)氏
1954年生まれ、メディア・エンタメ時評。中央大学大学院法学研究科修士課程修了(政治学修士)。シンクタンク勤務後、企業や自治体などで研修講師を務めつつ、コメンテーターとして活動。著書に『歴史を知ればもっと面白い韓国映画』『映画が語る昭和史』(旧・ランダムハウス講談社)等がある。


『街の灯』
DVD 発売元:角川映画 販売元:紀伊國屋書店 ¥3,990(税込)
©1931 Roy Export S.A.S. All Rights Reserved.
Renewed Copyright ©1958 Roy Export S.A.S. All Rights Reserved.
MUSIC COMPOSED by CHARLES CHAPLIN
except LA VIOLETERA by and Copyright ©Jose Padilla.
Photos ©ROY EXPORT S.A.S.
Chaplin aujourd’hui ©France 2003 MK2 TV/Roy Export Company Establishment/CNDP

チャップリンの映画はどうして、こんなに哀しいのだろう。悲しいのではなく、哀しいのである。名作『街の灯』のラストシーンには、誰もが涙を流す。だがそれは悲しみの涙ではない。人生の哀しさと愛おしさに胸を締めつけられて流す、万感の思いがこもった涙なのだ。これほど、人情の機微を教えてくれる映画はない。80年以上前につくられた無声映画が、かくも色褪せず、時代と国境を越えて胸に迫ってくるとは驚きである。変化の激しい時代だからこそ、こういう不朽の名作をじっくり堪能したいものだ。

哀しさと優しさ

チャップリンが演じる主人公は、いわゆる浮浪者で、社会の片隅で慎ましく生きている。定職もない。だが彼には、誰にも負けない優しさがある。目の見えない花売り娘に思いを寄せ、家賃が払えなくて立ち退きを迫られているのを、何とか助けようと尽力する。物語は、彼の純粋で一途な思いを縦糸に、飲むと人が変わってしまう大金持ちや、怪しげなボクシング試合の様子も織り交ぜて、爆笑シーンを交えながら進む。チャップリンの計算された完璧な身体表現は、芸術そのものだ。目の見えない娘は、自分を助けてくれたのは金持ちで、素敵な男性だと思っている。だから治療で目が見えるようになった後、自身で開いた花屋の前をチャップリンが通りかかった時、当初はわからなかった。だが娘は彼の手を握った時、それがあの男性だと気づく。チャップリンの笑いには、人を外見や経済力、地位などで判断する社会への批判が込められている。小柄ながら素顔はハンサムだったのに、敢えて人から馬鹿にされるような出で立ちで、おかしな歩き方をするキャラクターをつくり上げた。だが、山高帽をかぶってステッキを持ったこの男は、「放浪紳士」という、映画史に輝く比類なき人間像となった。

こちらはJ.H.倶楽部会員限定記事です。
ご入会後、続きをお読みいただけます。

残り:723文字

/

全文:1,446文字

【入会・年会費無料】

J.H.倶楽部は人事の仕事に役立つ特典が満載です!

  1. 総数2000本以上の人事の実務に役立つ記事(※)が閲覧可能
    ※専門誌『Learning Design』(旧『人材教育』)の記事
  2. 新サービス・お役立ち情報(調査報告書・ホワイトペーパーなど)の先行案内
  3. 会員限定セミナーへのご招待/講演動画・配布資料の閲覧
  4. 興味関心に沿った必読記事を、メールマガジンでお知らせ!