J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2013年10月号

講演録 SoftBank World 2013 基調講演レポート 「グローバルクラウド」と「モバイルインターネット」の時代 情報革命・技術大革新が導く世界標準のワークスタイルとは

スマートフォンやタブレット端末の普及により、ワークスタイルが大きく変革している中、革新的なビジネススタイルの最先端情報を発信するSoftBank World 2013が、2013年7月23日~24日、東京都港区のザ・プリンスパークタワー東京で開催された。2日間で1万2,000人もの参加者を集めたこのイベントでは、基調講演の他、モバイルソリューション、クラウド関連の製品、技術、ソリューション、サービスの展示とセッション等が行われた。本稿では、初日に行われた基調講演から、一部を紹介する。

ソフトバンク 代表取締役社長 兼 CEO
孫 正義 氏
全日本空輸 取締役副社長
岡田 圭介 氏
イオンリテール 代表取締役社長
梅本 和典 氏

取材・文・写真/菊池 壯太、浦上 毅郎

挑戦する者にのみ未来は開かれる

(「世界へ挑む」という決意を表した映像上映。それを受けて)冒頭の映像は、弊社の決意を表したものだが、お集まりの皆様の中には、すでに世界へ打って出ている企業の方も多いと思う。日本経済はここへ来てようやく、成長の兆しを見せてきたが、この20年間、日本の経済は長らく停滞し、同時に少子高齢化と人口減少の時代を迎えている。だからこそ、これからの日本経済の成長戦略においては、世界に打って出ることが今まで以上に求められているのではないか。そして、そうした環境下では、いかなる企業もデジタル化の流れは避けられなくなってきている。今、最先端企業といわれる各社も成長戦略においては、もっと積極的なデジタル化の推進を図らなくてはならない。まさに「Digital or Die」である。では、ソフトバンク自身はどうやって世界に挑んでいくのか。ご承知の通り、我々は今年7月11日に米国の大手通信事業者のスプリント・ネクステルを傘下に収めることができた。これにより、携帯電話の契約者数は「世界」第3位となり、米国ナンバーワンを狙えるところまで来ている。スプリントを傘下に収めたことによって、世界30カ国の拠点と、世界165カ国に直接つながるグローバルネットワークを持つことになった。このスケールメリットをもって、我々のソリューションを活用する皆様の世界戦略を支援していきたいと考えている。未来は、大きく挑戦する者にのみ開かれる。逆に、自ら挑戦し続けなければ、未来を開くことも成果を生み出すこともできないのである。

「新30年ビジョン」で将来の社会の姿を考える

3年前、我々は約1年をかけて「新30年ビジョン」を策定した。創業からちょうど30年が経過した時期であったので、改めてもう一度、「新」30年ビジョンをつくり、全社員に問うてみようと思ったからだ。これから30年先の世の中はどうなるのか。いろいろな思いが巡ったが、「迷った時ほど遠くを見よ」といわれる。そこでこのビジョンの策定にあたっては、はるかに先の300年後の人類や社会の姿、そしてテクノロジーの進化について徹底的に考えた。私は20年ほど前に、人間の脳細胞の数が約300億個であることを知った。そして、その時に、コンピュータのワンチップに入るトランジスタの数が、人間の脳細胞の300億個を超えるのは何年後だろうかと計算してみた。答えは2018年。つまりわずか5年後には、コンピュータが人間の脳細胞を凌駕するということだ。そして、さらにそこから先はどうなるだろうか。西暦2100年には1垓(ガイ=1億×1兆)倍、2200年には1垓の二乗倍、2300年には1垓の三乗倍となるだろう。それほど劇的に上回ってしまう計算だ。感情を持ち、創造していく力を持つことが人間の特権であると思い込んでいたが、300年先を見渡すと、コンピュータが人間の脳をはるかに上回るハードウェア的機能を持つ―つまりコンピュータ自らが自己学習的にプログラミングをするという時代すらやってくるかもしれないのである。では、時間を戻し、30年後の世界はどうか。そこではまさに「情報ビッグバン」が起こるだろう。たとえば、現在と同じ価格のスマートフォンが平均的に持つCPUの能力は100万倍、通信速度は300万倍になると考えられる。すると、音楽にも映像にも限らず、何万年分もの膨大なデータの保存が可能になる。手元のパソコンのローカルディスクやモバイル端末の記録容量がそれだけ大きくなると、ネット上のクラウド※はむしろ不要になるのではないか、という話になるが、それは大きな間違いだ。記録容量の肥大化に比例して通信速度も300万倍になるわけだから、ローカルであろうがクラウドであろうが、同じようなスピードでつながっていく。無限大のクラウドが劇的に増えていくということは、あらゆるものがログとして記録され、クラウドに収納されるということを意味する。クラウドは人類最大の資産になるのだ。すると、どういうことが起こるのか。たとえば、メガネ型の通信機で瞬時に翻訳ができる。また教育においても、リアルタイムで意見交換をしながら、言語が異なっていても関係なく世界中の子どもがつながれるようになる。医療もはるかに高度化し、人里離れた場所にいても、世界の最先端医療が受けられるようになる。こうしたことが当たり前になり、生産性は爆発的に拡大するだろう。これが30年後の世界の予想である。

※データを個々の携帯やPCではなく、インターネット上に保存し使用・閲覧できるサービス、またはそのデータの置き場所のこと。

電波改善にビッグデータを活用

新しい技術が本当に役に立つのか。我々はすでにクラウドとそこに収められているビッグデータを経営資産として活用し、マーケティングや問題解決にあたっている。その1つが「電波改善」だ。これはソフトバンクが、これまで最も解決に悩んでいたものである。そのために、我々がつくったスマートフォン用のアプリから、1カ月に7億5,000万件もの通信履歴のデータをかき集め、リアルタイムにそれを分析した。具体的には、どのキャリアがいつどこで何回接続を行ったか、それがつながったのか、つながらなかったのか、競合他社のユーザーの接続状態まで把握して分析するという世界初の試みである。これまでも「200カ所で調査」「1,000人に聞きました」といった限られたスケールでアナログ的に行った調査はあった。7億5,000万件という規模になると、従来の方法ではコストがかかり過ぎて当然不可能ということになろうが、我々は技術をもってこれを実現させ、限られた設備投資で電波状況の改善に役立てることができたのだ。ビッグデータのもう1つの活用方法として、ツイッターのツイート解析がある。電波改善については前述の通りだが、我々には電波がつながりにくいという過去の評価があるため、それが払拭され、お客様が電波改善を実感するまでには時差があるはずだ。それを測るために、今年の3月から7月の間、1億2,000万件のツイッターの投稿を解析し、自然言語処理によって人々の感情を分析した。たとえば、プラチナバンドがつながった時やiPhone5の発売といったイベントに合わせて調査を行い、人々は前向きな感情を持ったのか、それとも後ろ向きのイメージを持ったのか、そしてそれがどのように変化したのかを分析した。たまにお客様の声を100件や200件集めたところで、わかることはたかが知れている。しかし、リアルタイムで何億というツイッター投稿をビッグデータとして活用すれば、はるかに多くの人々の感情がわかる。このように我々は、率先してクラウドやビッグデータを活用して、ワークスタイルを変えようとしているのである。

ワークスタイルの変革を

iPhone発売の翌月、ソフトバンクでは全社員にiPhoneを配布した。iPadも同様である。つまりソフトバンクの社員は全員、iPhoneとiPadを持っているが、それをクラウドでつなぎ、仕事で活用することを自ら率先している。これによって、法人営業で社員1人当たりの顧客訪問件数が2.5倍になるなど、売上伸長の大きな要素となった。これは、モバイル端末とクラウドの活用なしには考えられない成果であり、これらのツールによって、我々はいつでも、どこにいても会社のデスクと同じような生産性で仕事ができることを証明した。また、我々のソリューションを導入した鉄道会社では、運転士が紙では分厚いマニュアルを、薄くて軽いiPadに入れて持ち歩くようになった。その他各社で、紙のパンフレットやカタログに代わる動画の活用など、商談や顧客対応に大いに利活用されている。プレゼン方法も従来とは大きく変わり始めているのだ。世界へ挑む―挑戦することで初めて見えてくる世界と、挑戦なくしては決して見えない世界についてお話しさせていただいた。我々の挑戦の目的は、あくまでも人々に、より多くの幸せを提供するということ。皆様も、デジタル情報革命に向けて積極的に挑戦していってほしい。

お客様にこだわる「behavior」の変化

IT化の進展によって人々のライフスタイルとワークスタイルはどんどん変化し、世の中をますます便利にするアイデアが生まれているのに対し、航空業界はなかなか変わろうとしない。今の仕事のやり方がお客様にとってベストだと信じており、空港で働いている職員も、機内で働いている職員も、変化を受け入れない傾向にあるからだ。

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