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月刊 人材教育 2013年11月号

連載 社労士に聞く“職場あるある” 管理職のもやもや解決 第8 回 「退職する社員」

円滑な職場運営は管理職の重要任務の1つ。けれども、さまざまな人が集う職場では日々問題が起こります。中には、手を出しにくいデリケートな問題も。かといって、放っておくと大事に発展することもあります。どうすべきか、もやもやと悩んでしまう管理職も多いことでしょう。ここでは、社労士のところによく持ち込まれる管理職の悩みをピックアップ。人事にも把握しておいてほしい、解決方法を紹介していきます。

藤原 英理(ふじわら えり)氏
あおば社会保険労務士法人代表。東京大学大学院修了後、大手製薬会社で研究職に従事。93 ~97年米国在住。帰国後、2000年大手証券会社に入社。社会保険労務士、CFPの資格取得。03年に独立、04年から現職。

[文] = 山村友幸 [イラスト] = 秋葉あきこ

今月のお悩み退職する社員

職場のエースであるAさん。営業の業績も良く、いつもそつなく良い仕事をする。それなりの評価もしてきたつもりだったが、突然翌月末で退職したいというメールが来た。どうも人材スカウトらしき会社を通して、他社から高待遇で引き抜きを受けたらしい。チームの業績を引っ張っている人間なので辞めてほしくないし、引き継ぎを考えると翌月末での退職というのは無理がある。とりあえず少し考えさせてくれということでメールは返したが、どう引き止めればいいだろうか。

労働者には退職する自由がある

まず、労働者には退職の自由があり、労働者が退職の意思表示をすれば、2 週間経過すると、使用者の承諾がなくても原則として退職の効力が発生します(期間の定めがない労働契約の場合※)。辞表や退職願は、労働者からの退職の意思表示であり、これを会社側として認めない(つまり辞めさせない)ということはできません。昔のドラマで見かけた「とりあえずこの辞表は預かっておく」というのは、辞表を受理しているので、この時点で、2週間後以降に労働者が退職することを了解したことになります。

今回のケースに出てくる退職希望のメールについても、「いついつに退職します」とはっきり書いてあれば、それは辞表そのものですので、人事権のある方に到達した時点で退職の意思を示したことになります。

過度の引き止めは、パワハラに

引き止めの説得はしても構いませんが、本人が退職すると言ったらそれは止められません。貴重な戦力に突然抜けられると困りますから、引き止めたくなるのは当然です。しかし、退職したいとはっきり言ってくる時は、次の就職先が決まっているなどの場合も多く、引き止めたからといって止められるものでもありません。

過度の引き止めはパワハラになります。トラブルになる事例では、「退職願を出したら“会社都合で解雇にする。そうすると今後の職歴に傷がつくが、それでも退職するか”などと脅されて退職できない」「退職を思いとどまるよう毎日何時間も説得され精神的にまいってしまった」「“今抜けられると困るからもう少し待ってくれ”と言われて半年以上経つ」などといったものがあります。

会社によっては、部下の退職が上司自身のマイナス査定になる場合もあり、過激な退職引き止めを行う事例もあるようですが、「辞めたいと言っている社員を辞めさせない」というのは、パワハラの類型とされており、損害賠償請求の対象となります。

「退職届」と「退職願」

少し細かい話をすると、退職の意思を表明する文書には、次の2種類があります。

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