COLUMN 昭和女子大学
「学生のキャリア自律」を育む キャリア支援センターの取り組み 加納輝尚氏 昭和女子大学 キャリア支援部 部長/グローバルビジネス学部 会計ファイナンス学科 教授
木村葉子氏 昭和女子大学 キャリア支援センター長
加納輝尚氏
新卒採用が、企業と個人が長く続く「関係性資産」を築くプロセスへと転換するいま、私たちは求職者である学生たちの内面的な変化をどれだけ理解できているだろうか。本コラムでは、昭和女子大学の先進的なキャリア支援の取り組みを取材した。学生の「キャリア自律」のために日々伴走する現場だからこそ見えてくる「等身大の葛藤と変化のプロセス」から、これからの採用コミュニケーションの在り方を考える。
[取材・文]=本間 幹 [写真]=昭和女子大学提供、編集部
「売り手市場」の裏で広がる学生の不安要素
かつての就職氷河期に比べると、現在は内定を得やすい売り手市場である。そうした状況を背景に、「学生1人あたりのエントリーシート提出数は減少している」と話すのは、昭和女子大学キャリア支援センター長の木村葉子氏。
「Webで簡単に応募できるので、とりあえず登録しておこうという学生は多く、登録自体は増えています。ただ、いざエントリーシートを作成する段階になると、そこで応募先を絞り込む学生が多い。生成AIを使えば簡単に作成できるとはいえ、それなりの労力はかかりますから」
こうした変化が見られる一方で、学生たちは楽観的に就職活動に臨んでいるわけではないと木村氏は指摘する。
「就職活動の早期化が進むなか、かえって不安を募らせる学生もいます。売り手市場だからこそ、早期に内定が得られず焦ってしまう学生は珍しくありません。また、3年生の夏のインターンシップに向けて2年生から準備を始めても、思うような活動ができず、そのまま調子を取り戻せないと悩む学生も増えています」
さらに「配属ガチャ」「内定ガチャ」など、SNSやWeb上で就職に関するネガティブな情報に触れる機会が増え、配属先や入社後の労働環境に漠然とした不安を抱える学生も多いという。そのため、学生たちは企業選びの際、給与や福利厚生、転勤の有無といった労働条件を重視するようになった。
「2026年度のインターンシップ説明会には約300名の参加者が集まりましたが、そのうちの約100名が1年生でした。例年、1年生の参加はごく少ないためとても驚きました」と木村氏。就職やキャリア形成へのプレッシャーは、確かに入学後の早い時期から高まっているようだ。
教職協働で養うキャリアデザイン力
そして、学生たちの就職観や企業選びに関する意識も大きく変化している。2011年度の大学設置基準改正でキャリア支援体制の整備が義務付けられたことにより、多くの大学でキャリア教育の充実が進み、早い段階からキャリア形成を考える機会が広がったことも無関係ではないだろう。
昭和女子大学でも、キャリア教育を推進すべく、2011年度に建学の理念を体現する3つの方針(アドミッション・カリキュラム・ディプロマの各ポリシー)に加え、「キャリアデザイン・ポリシー」を制定。以来、学生が卒業後のキャリアや生き方を主体的に設計する力を養う取り組みを進めてきた。
同大キャリア支援部長の加納輝尚教授は、「キャリアデザイン・ポリシー」について次のように説明する。
「単なる就職支援にとどまらず、卒業後に自分の適性に応じた仕事に就き、自立した社会人として人生を歩むための方針です。就職活動の成功という短期的な目的を実現することだけではなく、生涯を通じて自分の力でキャリアを考え続けるための“キャリアデザイン力”を養うことを重視しています。なぜなら就職はゴールではなく、社会人としての人生の始まりだからです」

