J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2014年09月号

CASE.2 ワークスアプリケーションズ エントリーマネジメントこそ、最重要課題  ゼロから1を生み出せる「クリティカルワーカー」を発掘

大手企業向けの経営インフラを提供するワークスアプリケーションズ。同社の採用の要諦は、問題解決能力のある人材を発掘することに尽きる。そのため、採用を最優先の経営課題と位置づけ、独自のインターンシッププログラムを通して素質のある人材を見極めている。そのエントリーマネジメントは、実際どのように行われているのか。同社の鶴田麻衣氏に伺った。


鶴田 麻衣 氏 リクルーティングDept. プランニング&ディレクションGrp.

ワークスアプリケーションズ
1996年設立。大手企業向けERPパッケージシステムの開発、販売、コンサルティングを行う。近年はグローバル採用を強化し、中国、インド、シンガポール、アメリカ、イギリスなどでの実績がある。資本金:約36億2650万円、連結売上高:約300億円、連結従業員数:2855名(2013年4月)

[取材・文]=道添 進 [写真]=ワークスアプリケーションズ提供、菊池 壯太

●考え方・背景 シリコンバレーでの興奮が発端

20日間のインターンシップを、採用目的で春夏2回、年間1000人もの学生に実施するワークスアプリケーションズ。その内容は、通常のインターンシップのように、オフィスで社員を補佐するというものではなく、会場を借り切って一人ひとりの潜在能力を測るというものだ。その間、マネジメントに携わっている正社員が直接指導や面接に当たる。採用コストは年間数億円にのぼるという。なぜ、そこまで大きな投資をするのだろうか。

「採用は最優先の経営課題です」と語るのは、同社のリクルーティングDept.プランニング&ディレクションGrp.の鶴田麻衣氏だ。同社が採用、研修を含めたエントリーマネジメントにかける熱意の源は、創業時にまで遡るという。

同社が創業した1996年当時、企業が自社で使用する経営インフラを構築する際には、多くの場合は外国製のパッケージ製品を自社業務に沿ってカスタマイズするか、全てを個別に、一から開発するスクラッチ開発が主流だった。そのため投資コストは膨大になり、日本企業の成長を阻む要因の1つと言われていた。

一方、欧米ではすでにパッケージソフトを使うことが主流となっており、より安価なコストシェアの考え方が浸透していた。ワークスアプリケーションズを創業した牧野正幸氏は、ノーカスタマイズの国産パッケージソフトの開発と販売にこだわり続けているが、それにはこうした背景があったからだ。

日本企業の情報投資効率を世界レベルへ──この考え方を同社の経営における第一の理念とするなら、もう1つの成長エンジンというべき柱が、「クリティカルワーカー(詳細は後述)に活躍の場を」という人材開発の理念だ。

牧野氏は、かつてシリコンバレーのITベンチャー企業と多くの仕事を経験したという。世界の才能が集積するこの地に赴き、受けた衝撃は、名もなき新興企業に優秀な人材がどんどん入り、必死になって働いている姿を目の当たりにしたことだった。彼らがあえてチャレンジングなキャリアを選択するのは、そうした環境のほうが、自らが圧倒的に成長できると考えているからだった。

だが牧野氏は帰国後、さらなる衝撃を受けた。日本には、前例のない仕事に挑戦し、自らの思考でブレークスルーしようとする人が極端に少なく、そもそもそういうイノベーションを起こせる資質を持った人が活躍する場すらなかったのだ。

それが創業の2つめの理念──採用を軸とした人材開発への熱意となって表れる。

●求める人材像 クリティカルワーカーとは

同社が定義する、「クリティカルワーカー」とは、「前例のない仕事に取り組み、自らの思考、発想でブレークスルーする人材、問題解決能力の高い人と定義しています」(鶴田氏、以下同)

そして、その問題解決能力とは、2つの要素から構成されているという。1つは高い論理的思考力、もう1つは高い発想転換能力(クリエイティビティ)だ。これらが両輪となって、前例のない問題に対して自ら解決方法を考え、実行することを可能にする。同社の採用活動とは、この能力を見極めるための施策であり、インターンシップはその実践なのである。

創業当初、まず同社はエンジニア職の中途採用を開始した。当時のキャッチコピーは「勉強ができた人を、仕事ができる人に育てます」というもの。現在の問題解決能力発掘インターンシップの下敷きとなる中途採用向けプログラムだ。経験は不問で、頭の柔らかい人材に焦点を当てた。

●施策① 20日間のプログラム育成よりも採用に投資

反響は予想以上に大きく、大手でくすぶっていた営業、元コンサルタントなどが一気に集まった。そして6カ月間の研修を行い、突破した人たちを採用した。

「学生のうちにこのプログラムに出会っていれば、自分の能力をいかに発揮できるかを見極めたうえで仕事を選ぶことができたと思う」──受講者からそんな多くの声が聞かれたことを受け、2002年から学生向けに横展開し、現在に至っている。

インターンシップとはいえ、学生を半年間も拘束することはできない。そこで20日間に凝縮したプログラムを春休みと夏休みの時期に実施している。2014年度の場合、エントリー者数は約4万人。そこから筆記試験で絞り込み、春と夏とを合わせて約1000人のインターンシップを受け入れた。

「筆記試験は企業の昇格試験で用いられる内容で、論理的思考力を測るものです。これは今の日本の学校教育が得意とする分野です」

一方、クリティカルワーカーのもう1つの資質である「発想転換能力」の判断は難しい。そこで次のステージで見極めを行う。

ここでは学生に課題を与え、実際に考え、解決策を提案させる方法が取られる。会社から離れた会場でアセスメントセンターのようなインターンシップを行うのだ。

内容は、例えば「ある自動車メーカーの拠点が世界に50カ所あり、今、人材管理に苦戦している。そこで起きている問題を想定し、解決策を提案せよ」といったものだ。この課題に対して、グローバルタレントマネジメントの視点から取り組むのもよいし、あるいは業務を最適化するオペレーションシステムを構築するといったアプローチでも構わない。要は、それを学生がゼロベースで考えられるかだ。そのため、あえてネット環境を遮断し、答えを他から探すのではなく、自分の頭で徹底的に考えさせる。その他、グループワークなどの課題にも取り組む。最終的には発表という形を取るが、成果物よりも重視している側面がある。

「それは思考のプロセスです。学生が何を考え、どこで悩んでいるか評価者が継続的にレビューします。その結果、どのようなマイルストーンを経て解決にたどり着いたかが評価の対象となります」(鶴田氏)

評価者は同社のマネジメントを担っている正社員だ。20人ほどの学生に対して1人の評価者が張りつく。

専用会場を借り切るこの間、担当社員の業務はストップするが、あえてこの時期に採用のために思い切って人的リソースを投入することで、結果的には入社後に育てていくよりも、育成コストが抑えられるという。

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