おわりに 変革の旅路に進むのは今 持続的な組織に変わるために人事ができること
毎年恒例、編集部が選ぶ『HRトレンドキーワード』。今号の総括に入る前に、まずは昨年のキーワードを確認してみよう。「非認知能力」「人間知性(HI)」「パラドックス・マインドセット」「サステナブルキャリア」「ジョブ・エンベデッドネス」「ビジネスケアラー」「アルムナイ・コミュニティ」「弱いリーダーシップ」―― いずれも引き続き注視し、取り入れていくべきキーワードであり、今年のラインナップと共通する点も多い。キーワードから見えてくる、これからのHRに必要な視点とは何か。特集を振り返りながら考えたい。
人手不足は不可避持続可能な組織づくりを
特集の冒頭を飾った「2025年問題」は、トレンドというよりも今この瞬間に我々が直面している課題だ。団塊の世代は後期高齢者となり、15年後には全人口の約35%が65歳以上になる2040年問題が待ち受ける。若手・中堅人材の減少だけではなく、介護による離職問題なども表面化してくるだろう。人手不足は避けられない現状、どのような手を打つべきか。三菱総合研究所の柿沼美智留氏、木根原良樹氏は「シニア活用」と「アルムナイ」の重要性を述べる。アルムナイは昨年の本特集でも挙がったワードだが、社内外の壁を取り払い、柔軟なネットワークを構築することは、結果的に組織力の強化につながっていく。
組織の柔軟性という点では、「キャリアブレイク」にも注目したい。キャリアの空白期間を、「新しいキャリアに向けたポジティブな期間」として捉えることだが、人事担当者としての立場で見れば、手放しで推奨するにはためらいのある考え方だろう。だが同時に、離職や休職を忌避し、無限定総合職だけを推奨するには限界があることも理解できるはずだ。法政大学大学院教授の石山恒貴氏は、表面的な人事施策ではなく、「従業員体験」を大切にすることが重要だと述べる。入社前から退職後までの体験価値を向上させることは、エンゲージメント向上やリテンションにもつながるだろう。持続可能な組織づくりのために何ができるかは、人事の命題の一つといえるかもしれない。