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CASE.3 企業内で自律的に学ぶ個人 みんなで学ぶことが自律と成長のきっかけとなる
渡邉明男氏は、2つの顔を持っている。表の顔は、富士ゼロックスの営業職。もうひとつの顔は、社内の「ドラッカー自習塾」を主宰し、社内外で行われる「知識労働者の自律促進の講座」の講師を務めるなど、自らも学びながら仲間と共に自律的に学ぶ場をつくる「学び人」だ。渡邉氏のユニークな活動を通して、自ら学び、学びを楽しむモチベーションの源泉について考える。
●具体的な取り組み「企業の目的とは?」熱く真剣に話し合う

オフィス内の人もまばらな夜の19時。東京・六本木にある富士ゼロックス社内のある会議室に、7名の社員が集まった。所属する部署は営業、研究開発、新商品企画などバラバラで、年代も30代から40代とさまざま。一見すると社内横断プロジェクトの打ち合わせ風景のようにも見えるが、実はこの集まりは社内の自主的な勉強会「ドラッカー自習塾」。月に一度、就業時間後の一時間半、社内の有志が集まってドラッカーの経営論について学んでいる。ただ、この勉強会、会議室を借りてはいるものの、社内的には非公認活動なのだという。
主宰するのは富士ゼロックスの営業職、渡邉明男氏。ドラッカー学会に所属するドラッカリアンである渡邉氏が、社内にドラッカーの経営論について学ぶ場をつくりたいと、仲間を募って始めたのがこの「ドラッカー自習塾」だ。
19時を少し過ぎたところで、渡邉氏を進行役に自習塾がスタート。「はい、では最初に経営学検定の過去問をみんなで解いていきます。今日は『企業システム』について。順番に問題文を読み、『これかな』と思う答えとその理由を答えてください」
まずは全員が、経営学検定の過去問題集の問題に取り組む。宿題は「みんな忙しいから」出さず、その場で取り組むというスタイルだ。最初に経営学検定の過去問に取り組むのは、ドラッカーを学ぶ際、経営学の基本的知識があったほうが理解しやすい、という理由から。また、社内の昇進/昇格にはMBA的な要素も求められるので、経営学検定の勉強をすることで、これらの基礎を予習的に学んでおくことができる、というメリットもあるという。実際、この自習塾の参加者の何名かは経営学検定にチャレンジし、合格している。
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プロフィール

富士ゼロックス
1962年富士写真フイルムと英国ランク・ゼロックス社(Rank Xerox:1997年10月にXerox Limitedへ商号変更)との合弁会社として創立。オフィスプロダクト事業、オフィスプリンター事業、プロダクションサービス事業、グローバルサービス事業、ソリューション・サービス事業などを手がける。資本金:200億円、連結売上高:1兆242億円(2013年3月期)、社員数:4万5040名(2013年3月期連結)
[取材・文]=井上 佐保子 [写真]=本誌編集部