J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2014年08月号

OPINION 2 「現地化」と「グローバル化」で育成は変わる アジアで信頼関係を築く3つのマインドセットとは

成長著しいアジア新興国への進出が重要視される中、日本人駐在員の育成にも、ローカル人材の育成にも課題を抱えている日本企業が多いのではないだろうか。また、風土や文化、価値観、習慣などの違いから、現地の人と不必要な摩擦を起こしてビジネスが停滞、頓挫してしまうケースも散見される。中国やインドをはじめ、アジア各国における人材マネジメント事情に詳しい九門氏に、こうした課題解決の考え方や具体策を聞いた。

九門 崇(くもん たかし)氏
九門崇事務所代表取締役社長、亜細亜大学国際関係学部特任教授・東京大学特任研究員。
世界の社会問題を解決するため、アジアを中心にした次世代リーダー育成を行う。グローバルリーダー育成プログラムの開発、講演活動などをアジア各国で実施。2011年には「アジア・ソサエティ」の「アジア21 ヤングリーダーズサミット」日本代表に選出。グローバルな経験と、定期的に訪れているアジア各国の最新情報をもとに企業における研修、グローバルリーダー育成のアドバイスも行っている。著書に『アジアで働く』(英治出版)がある。

[取材・文]=坂田 博史 [写真]=編集部

「つくる」から「売る」へ

アジアはモノをつくる場所から、モノをつくって売る場所に大きく変わった。中国をはじめ、人口12億人超のインド、2015年に10カ国が共同体として成立し6億人超となる東南アジア諸国連合(ASEAN)を巨大市場と捉えて意識転換することが人事においても重要だ。旧来通り、アジアを工場と捉えていれば、日本流のモノづくりに長けた日本人が現地に赴き、現地のワーカーにOJTを通して技能伝承を行えばよい。しかし、市場と捉えれば、それだけでなく、顧客ニーズの把握、それを反映した商品開発、現地の商習慣に合致した販売などを行う必要がある。それらは日本人だけでは絶対にできない。現地に精通したローカル人材の協力が必要不可欠になる。工場から市場へと意識転換を図ることで、ローカル人材に求める能力や仕事が変わり、同時に日本人駐在員の役回りも大きく変わることがわかる。

「現地化」と「グローバル化」

日本企業の多くがもともとアジアを工場と捉えて進出し、現在、市場として捉え直しているのに対して、P&Gをはじめとする欧米企業は進出当初からアジアを市場と捉えている。また、大半の日本企業は現地法人の「現地化」が課題となっているが、欧米企業はすでに「現地化」が進んでいるケースが多い。また、P&Gなどグローバル企業では「人材のグローバル化」を進める企業もある。ここでいう人材のグローバル化とは、ダイバーシティに富む人材活用を指す。この点も大きな違いだ。現地法人の現地化とは、中国であれば中国人を経営幹部などに登用して、なるべく日本人駐在員を少なくしていくことだ。営業はもちろん、マネジメントも現地のローカル人材に任せていこうとする。他方、人材のグローバル化とは、中国であっても中国人だけでなく、欧米人や他のアジア人など、さまざまな国籍や背景の人々が一緒に働く組織をつくることである。欧米企業はもともと多国籍の人が働く組織であるため、現地法人であっても、国籍問わず最適で優秀な人材を活用するという発想だ。ここで重要なことは、自社が人材の現地化とグローバル化のどちらを進めようとしているかだ。それによって、日本人駐在員とローカル人材の育成方針が変わってくる。

海外経験がない人事の問題

こうした当然とも思えることをあえて最初に述べたのは、アジアの現地法人の人材育成を担当する日本の人事担当者には、あまり理解されていないと感じるからだ。グローバル人材の育成を担う人事担当者に会う機会は多いが、そのほとんどは海外での勤務経験がない。これは本質的な問題だ。

アジアにおける人材育成を担当するのであれば、最低限、アジアと言わないまでも、海外での勤務経験が必須なのではないだろうか。海外で働く現場を具体的にイメージできない人には、どんな人材が必要とされ、どう育てればいいのかはわからない。理想を言えば、現地を熟知した外国人も日本の人事にいることが望ましい。もし、それが難しいということであれば、外部リソースを活用するのも1つの方法だ。アジアでは数カ月で目まぐるしく状況が変わることが珍しくない。そうした中で人材マネジメントを行った経験や知識のあるコンサルタントなどを活用することもできる。人材育成は息の長い仕事だ。それは日本人に対しても、アジア人に対しても変わらない。にもかかわらず、数カ月の語学研修や1年足らずの人材開発プログラムしか持たない企業も多い。予算が1年ごとに決められているからといって、人材育成が1年ごとでいいはずはない。アジア市場で勝つために、人材育成がより重要になっている昨今、企業戦略の一環として数年単位の中期育成計画を立てることが、今後は特に大切になる。ある大手メーカーでは、アジアで働く適性があるかを日本にいる段階で見極めている。重視するのは英会話能力ではなく、まずは仕事ができる人材ということ、次に変化適応能力だという。人にも環境にも、いかに柔軟に対応できるかが問われる場面が多いからだ。

駐在員に必要なマインドセット

アジアで働く日本人を数多く見てきた経験から、私が考える駐在員に大切な3つのマインドセットを紹介する。1つめは「想定外が当たり前」という心構えでいること。アポイントをとった相手が、その日時、場所に現れないこともある。3カ月前にあった道路やビルがなくなっている。そんな日本では考えられないようなことが普通に起こる。

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