J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2014年09月号

CASE.2 サントリーホールディングス  体験を積む場としての新人研修 「主体性」と「協調性」を軸に社会人への意識の切り替えを図る

1899年の創業以来、「やってみなはれ」の精神で成長を続けるサントリーグループでは、新入社員が入社1年後にめざす姿を明確に示し、Off-JTとOJTを連携させた育成に取り組んでいる。その考え方や育成方法などを取材した。


田端 昌史 氏 キャリア開発部 課長
山田 祥子 氏 キャリア開発部

サントリーホールディングス
1899年創業。2009年純粋持株会社制に移行。総合酒類食品企業として、酒類や清涼飲料事業の他、健康食品・外食・スポーツ・花・サービス関連事業など、多様な事業をグローバルに展開している。
資本金:700億円、グループ会社:228社、連結売上高:2兆402億円、連結従業員数:3万4129名(いずれも2013年12月31日現在)

[取材・文]=増田 忠英 [写真]=本誌編集部

●育成の考え方1年後にめざす姿を明確化

サントリーホールディングス(以下、サントリー)では、入社1年後までを新入社員の育成重点期間と位置づけ、OJTとOff-JTを連携させた育成を行っている(図1)。

新入社員は入社後、合宿形式による約2週間の「入社時集合研修」を経て、各職場へと配属される。配属後は現場でOJTを受ける傍ら、非生産部門に配属された人は生産実習、非営業部門に配属された人は営業実習などのOff-JTに随時参加する。

1年目終了時にめざすべき姿も明確にしており、ピラミッド状に3つの層で表している(図2)。一番下の「新入社員として発揮すべき基本姿勢」と真ん中の「新入社員として必要な基本スキル・知識」は全部門に共通する土台部分であり、この部分のOff-JTをキャリア開発部が担っている。そして、新入社員が配属になる部署では、この2つに上の「担当業務において必要な基本スキル・知識」を加えた3つを、OJTを通じて育成する。

新入社員が“働く自己(構え)をつくる”ために、サントリーが特に重視しているのが一番下の「基本姿勢」──「主体性」と「協調性」だ。キャリア開発部課長の田端昌史氏はこの基本姿勢について、次のように語る。

「例えば、上司や先輩から資料整理を頼まれたら、それをきちんとこなすことはもちろん、なぜその仕事を自分に指示したのかという、仕事の目的と意味を考えることが重要です。すると、それが自分自身の成長にとって必要な業務であることがわかり、最後まで責任を持ってやり遂げようという気持ちになるでしょう。そして、他にも未整理の資料がないか探してみたり、ファイリングのルールを提案したりといった一歩進んだ行動に発展し、上司や先輩からの信頼につながるかもしれません。

こうした主体性と協調性を身につけることが、社会人として働いていくためのベースになると我々は考えています」

「主体性」と「協調性」は、より具体的に理解しやすいよう、それぞれ3つずつの取り組み姿勢に分解して示している(図3)。

「以前は主体性と協調性というキーワードだけで育成を行っていました。しかし、上司や我々が新人に対して主体性や協調性の欠如を指摘しても、新人本人は、『自分はきちんとやっている』と認識していることが多く、そのギャップが大きかったので、より具体的に表現することで、互いのギャップを埋めるようにしたのです」(田端氏)

一方、新入社員として必要な“基本スキル・知識”を学んでもらうために、「考動発揮ガイドライン」という表を使い仕組み化した(図4、2006年~)。まず、“基本スキル・知識”を、「対仕事力」「対人力」「対自分力」「サントリアン(サントリー社員)の基本」の4分野・12項目と明確に定め、それらを達成した際の姿や、達成までに行うことをスケジュールと共に記載する。そして1年間、本人と上司で項目ごとに5段階評価をして振り返りを行えるようにした。

●新人の傾向素直だが、応用が利かない

キャリア開発部では、上記のような考え・仕組みに基づいて育成プランを毎年検討しているが、新入社員の傾向も考慮し、配属部署のマネジャーとも新人配属時に共有しているという。2014年には、新入社員世代の一般的傾向として次の4点を挙げた。①成長意欲が高く、努力を惜しまない人が多い。②モノや情報が溢れる時代に育ってきたため、情報収集能力が高い一方、良くも悪くも“悟り世代”。③ソーシャルメディアの影響か、他者からの評価に敏感である。人目を気にして失敗や批判を恐れ、突き抜けるほどの個性が持てない。④まじめで素直な反面、適応力・応用力が低い。

「自分はこんなものだろう、と自らブレーキを踏んでしまったり、言われたことはできても、応用を利かせることが苦手、といった傾向があるようです」(山田氏)

「1つの行動ができるようになっても、なかなか他の行動への応用が利かないというのは、会社や職場という空間の中で自分の置かれている立場が根本的にわかっていないからだろうと分析しています。入社時の集合研修では、こうした傾向を踏まえてプログラムを工夫するように努めました」(田端氏)

●マインドセット仕事の進め方を疑似体験

では、具体的な育成方法とは。入社時の集合研修を見てみよう(図5)。同研修はサントリー食品インターナショナル、サントリープロダクツと合同で行っており、2014年度は新入社員約200名が参加した。年齢も高専卒から大学院卒までと幅広く、また外国籍社員や障がいを持った社員も一緒に受講しており、多様性に富んだ環境で実施されている。

12日間(うち1日は中休み)にわたるこの研修で、最も多くの時間を割いているのが、学生から社会人へとマインドセットを切り替えるプログラムであり、研修全体の約4割を占めている。

まず研修初日に、前述の基本姿勢と基本スキル・知識の説明が行われ、新入社員は研修期間中、常にこれらを意識しながら考え、行動することを求められる。

マインドセットを切り替えるための中心的なプログラムが、3日目から行う、その名も「やってみなはれプロジェクト」だ。

これはいわば、チーム仕事を疑似体験するもの。まず新入社員を30数名ずつのクラスに分け、1つのクラスを1つの会社に見立てて活動する。クラスの中ではさらに5~6人のグループに分け、グループにはそれぞれ別々のミッションが与えられている。例えば「研修のルールを遵守する」「全員に自社製品の知識を身につけてもらう」といったものだ。各グループはそれぞれのミッションを研修期間中に達成するため、ビジョンを言語化したり行動目標を立て、計画を練りながら実行していく。

その内容は、ステップごとに外部コンサルタントと研修スタッフのチェックを受ける。内容のレベルについての評価もされるが、おじぎや挨拶の仕方、プレゼンの仕方など、細かいマナーやスキル、取り組み姿勢などについても厳しいフィードバックをもらう。

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