J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2014年03月号

特別企画 KAIKA カンファレンス 第二弾 「能率」+「KAIKA」へ 新たな価値を生み出す“つながり”を求めて

30年以上続いてきた「HRD JAPAN(能力開発総合大会)」から、今年新たに生まれ変わった「KAIKAカンファレンス」。リニューアルの背景には、次世代組織をつくる運動として日本能率協会(JMA)が提唱する「KAIKA」の考え方がある。そこで今回は、KAIKAカンファレンスが生まれた背景やKAIKAの考え方、KAIKAにかけられている思いを紹介する。

前田 兼利 氏
日本能率協会 経営・人材センター 企画開発グループ 組織・人材開発チーム リーダー(KAIKAカンファレンス担当)
山崎 賢司 氏
長沼 明子 氏
日本能率協会 KAIKAプロジェクト室(KAIKA活動全般を担当)

[取材・文]=増田 忠英 [写真]=本誌編集部

ノウハウを提供するだけでは意味がない

──「HRD JAPAN」から「KAIKAカンファレンス」とした理由とは。

前田

私はカンファレンスを担当していますが、開催するにあたって、さまざまな人事担当の皆さんと話をする中で感じるのは、かつては事業の変化と人材育成のスピードが合っていたのに対して、最近では事業の変化のスピードのほうが速くなり、そこにギャップが生じているということです。そんな中、人材育成や組織変革のスピードを速めるニーズに応えようとするあまり、カンファレンスはノウハウだけを取り入れる場になってきていたように感じます。以前のような先を見通せる時代であれば、ノウハウ通りやればうまくできたのでしょうが、現在のように状況が複雑に絡み合い、先の見えない混沌とした時代には、ノウハウだけを取り入れてもなかなかうまくいきません。そこでカンファレンスを、一方的にノウハウを伝えるだけでなく、参加者の皆さんが事例やノウハウをいかに応用できるかを、共に考える場にしたいと考えてきました。そうしたリニューアルの方向性を考えている時に、我々の考えていることが、JMA内の別のグループが提唱していた「KAIKA」の考え方と一致することに気づき、思い切って「KAIKAカンファレンス」にリニューアルすることにしたのです。

“Connecting the Dots“

──その「KAIKA」の考え方とは。

山崎

働き方や価値観が多様化し、個人と組織、そして社会の関係が大きく変化しています。こうした変化を踏まえ、次世代の組織づくりの考え方、運動としてJMAが提唱しているのが「KAIKA」です。JMAではKAIKAを「個の成長と、組織の活性化と、社会との関係を同時に満たしていく運動」と定義しています。

長沼

KAIKAには、個人が開花すれば組織が開花し、時代や社会も開化する、という意味が込められています。ローマ字表記にしたのは、KAIZEN(改善)のように、ゆくゆくは世界に普及させたいという思いからです。

山崎

KAIKAの考え方の中で、我々が特に強調しているのは、組織の垣根を越えた「関係性」です。スティーブ・ジョブズがスタンフォード大学でのスピーチで話した「コネクティング・ザ・ドッツ」の考え方が、我々の言う関係性をよく表していると思います。「ドッツ」とは複数の点。それには人・物・金・情報などの経営資源もあれば、知見やノウハウなどのソフトもあります。社内外に点在しているそれらの点を緩やかにつないだり、つなぎ替えたりすることで、創発や知の化学反応が起こるという考え方です。その時に、個人がワクワクしたり、成長したりすることによって、組織の活性化を伴いながらイノベーションを起こすことが、KAIKAの状態を表しています。

──そうしたつながりは、どのようにつくっていけるのでしょうか。

山崎

つながり方に定石やマニュアルがあるわけではありません。大事なことは、「社会的感度」を高めることだと考えています。普段から世の中の大きなうねりや、小さな兆候に対する感度を高めて、「ここをつなげてみようか」と試行錯誤しながら進めていくのです。マネジメント側からすれば、個人がつながりやすい環境をいかに整えてあげるか、ということが重要になってきます。

「能率」の先に「KAIKA」がある

長沼

JMAでは、「能率」の意味を、人についてはその能力を、設備についてはその性能を、材料についてはその機能を、それぞれ活かしきることを追求するマネジメント、と捉えてきました。それは科学的なアプローチであり、100%にどれだけ近づけるか、という発想です。そのことは今後の組織においても重要ですが、既存の枠を越えること、創発を生み出すようなことは、あまり想定されていません。そのため、我々は今、能率を超えてKAIKAへ、という発信に力を入れているのです。

山崎

能率とは、あらかじめ目標や計画を立てて、あるべき姿と現実とのギャップをいかに埋めていくか、というPDCAを回すマネジメントですが、そういう発想からはイノベーションはなかなか生まれにくいものです。現場で試行錯誤をし、さまざまな人や知見などとつながりを持つことによって、そこから予期せぬ何かが生まれる、といったケースがほとんどです。KAIKAとは、そういうものをもっと大事にしようという考えです。

前田

例えば、現在の企業はシニア層が抜けていき、初めから成果主義しか知らない世代が増えています。成果主義はまさに能率を重視した考え方であり、その中で皆キャリアプランを意識し過ぎる傾向があります。キャリアプランをつくり、その通りに進もうとするのではなく、あえて寄り道をし、キャパシティを広げようと考えるのはKAIKA的と言えます。

山崎

あるべき姿を描くことが不得意な日本人は多いと思います。欧米人には「私はこうなりたい」と発信して思考することが比較的得意な人が多いですが、日本人の場合、何年後どうなりたいかと言われると、何となく落ち着かない。むしろ、やるべきことをやって、それを積み重ねていった先に結果として成長があるという発想のほうがしっくりくるものです。それもKAIKA的な考え方と言えるかもしれません。

長沼

ある経営者の方から、「クリエイティブなことをする時は、まずPDCAを徹底してやる」とお聞きしたことがあります。能率かKAIKAかの二者択一ではなく、能率の先にKAIKAがある、という関係ではないかと思います。

KAIKAの考え方を深め、普及するための「Lab.活動」

──KAIKAプロジェクト室が行っている活動と、その中での「KAIKAカンファレンス」の位置づけとは。

長沼

活動には「KAIKA Lab(. ラボ)」「KAIKA Awards」「KAIKA Action」の3つの柱があります(図)。KAIKA Lab.では、研究会型のLab.活動と、シンポジウムの開催、「KAIKA スタイルマガジン」(季刊)の発行などの発信活動を行っています。KAIKA Awardsは、KAIKAの考え方を実践する組織を表彰する制度です。KAIKA Actionは、組織診断や課題相談、教育プログラムなどのソリューションを提案します。「KAIKAカンファレンス」は、そうしたLab.活動や表彰などの発表が連動する場として位置づけています。

山崎

Lab.活動は、KAIKAの考え方を深め、普及させていくことを目的として、2013年7月から活動を始めました(87ページ以降も参照)。各企業の実務家を中心に、有識者、研究者の方々にも加わっていただき、月1回のペースで集まりディスカッションを行っています。13年度は、KAIKAの考え方にかかわりのある「つながりLab.」や「創造性Lab.」など7テーマのLab.を開催してきました。例えば「オーガナイズLab.」では、プロジェクトマネジメントにおいて、PDCAを回すことよりも、人にかかわる部分の重要性に着目し、「理念Lab.」では、社内と社外の垣根がなくなる中で重要性を増す組織のビジョンや理念がどのように受け取られ、浸透していくのかを研究しています。

──各社の人事担当者や研究者がつながり、アウトプットを生み出すLab.活動は、KAIKAの象徴的な取り組みと言えそうですね。

山崎

そうですね。明確なゴールやそこへの筋書きを事前に想定していない分、流れに紆余曲折はありますが、参加者の皆さんの感度や問題意識が高いので、私たちにとっても創発的で、非常に有意義な活動になっています。

前田

本来は合理的に行動する人が多く、早く結論を出したいところを、あえて思いとどまり、何か新しいものが出てくるのを待つ、というところが面白いですね。

山崎

Lab.活動での、いろいろな方々との意見交換を通じて、KAIKAの考え方は一層深化していっています。

KAIKAカンファレンスを参加者が「つながる」場に

長沼

KAIKAの考え方が生まれたのは2011年度ですが、大々的に発信するようになったのは2013年度からです。ですから、今回のKAIKAカンファレンスでは、KAIKAのエッセンスを随所にちりばめながら、そのニュアンスを伝えて、徐々に企業の方々と一緒につくり、広げていけたらと考えています。

前田

具体的には、KAIKAの考え方を取り入れてLab.活動で議論されてきた内容を発表して参加者の皆さんと共有したり、従来の事例発表も情報提供一辺倒にならないようにディスカッションを取り入れ、そこから参加者の皆さんが新たな気づきを得られるような工夫をしています。

山崎

まさにコネクティング・ザ・ドッツ、点と点がつながり、創発が生み出される場にしたいと考えています。

──カンファレンスと、「KAIKA」活動そのものの今後の展望とは。

前田

現在はLab.活動の参加者よりもカンファレンスの参加者のほうが多いですが、ゆくゆくはLab.活動に参加する人の輪が広がり、研究活動が発展してテーマごとにカンファレンスが開かれるようになればと考えています。それを全て我々が運営するのではなく、さまざまな組織とのコラボレーションを前提に、KAIKA活動を発展させていきたいですね。

山崎

KAIKAという言葉が経営やマネジメントの用語として世の中に普及し、我々とは無関係に、さまざまな組織でKAIKA活動が自律的に行われるようになることが理想です。KAIKAの考え方そのものがまさにKAIKAすることをめざして、これからも取り組んでいきたいと思います。

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