J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2014年03月号

OPINION 2 対話の質を問う タスク一辺倒の世界から、人中心の対話へ

なぜ、今、ワークショップをはじめとした人と人が話し合う場が、教育研修として注目をされているのか。組織行動論の研究者である金井氏に、その理由と対話の質について聞いた。

金井 壽宏(かない としひろ)氏
1954年生まれ。1978年京都大学教育学部卒業。1980年神戸大学大学院経営学研究科博士前期課程を修了。1989年マサチューセッツ工科大学でPh.D(マネジメント)を取得。1992年神戸大学で博士号(経営学)を取得。

[取材・文]=渡辺 清乃 [写真]=編集部

──対話型の研修が増えています。講義形式との違いは何でしょうか。

金井

自分の頭で考えて、学びを深められる点でしょうね。もちろん、講義形式のほうが効率的なテーマもあります。学ぶことは本来、やり方を工夫すれば楽しいものなんです。せっかく聞いてくる人も自分の考えを持っているのですから、話し手が一方的に話すのではなく、「一番気になることは何ですか」と質問して対話をスタートするほうが深まります。仕事も、頭ごなしの命令ではなく、「こんな時はどうしたらいいと思う?」と自分の頭で考えてもらうような対話が重要です。

──対話が苦手な人は、どうしたら。

金井

「対話」を扱う際、カギになるのが「質問」。質問の「質」によってその効果はいくらでも変わります。特に今、質問は「謙虚さ」がキーワードになりそうです。昨年、米国でヒューレット・パッカードやGEなど多くの企業で組織開発の活用についてヒアリングをしてきたのですが、「humble(謙虚)」という言葉がよく出てきました。MITのエドガー・シャイン先生の新刊も『謙虚な問いかけ』が書名です。家庭・職場・学校など、日常生活における組織開発がテーマです。「頭ごなし」「糾弾する」質問の反対語が「humble(謙虚)」な質問です。

──「謙虚な質問」とは。

金井

お母さんと子どもの会話を例にしてみましょうか。子どもが家に帰ってきた時に、顔も見ずに「まず宿題しなさい」と指示します。せっかく問いかけても、「宿題出ているでしょう?!」では、「問いかけ」というよりも「問い詰め」です。だから、「謙虚な問い」と、わざわざ区別して呼称する必要があるのです。

家族療法の平木典子先生に聞いたお話で、印象的なことがあります。「産業界の人たちは、頭の中がタスク(=課題・問題解決)中心になっているから、人の言うことを聞いたり世話をしたり、関係性を築くこと(=メンテナンス)が疎かになっている。例えば、子どもの服をつくることを楽しむ人は、ミシンに対しても愛情を持ってメンテナンスします。ミシン=マシンでもメンテナンスしケアし大切にするのに、人に対してそうできないなんておかしいでしょう?」

タスクとメンテナンス

金井

この考え方は、組織開発やリーダーシップ論にもつながります。そのほとんどが「課題関連の行動(=タスク)」と「人間関係の行動(=メンテナンス)」の2つに集約されるんです。お母さんと子どもの例でも、「はい、まず宿題!」とタスク一辺倒に入らずに、「学校はどんな一日だった?」と関心を持って問いかけ返事を聞いて、「楽しくてよかったね」と関係性をケアしてから、「宿題すませてからのほうが、友だちとのお遊びも倍、楽しいよ」と言うのがはるかにベター。

これは、よき上司が職場の仲間に対して、よき親が子どもに対して、自然に学び、知っているはずのことです。少なくとも、関係性が尊重されているからこそ、共同で推進する課題も進むのだと深いレベルで気づくわけです。

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