第22回 古河電気工業 新本社(東京都・港区) 稲水伸行氏 東京大学大学院 経済学研究科 准教授
全社からメンバーを集めたプロジェクトチームが中心となり、
ボトムアップで本社移転プロジェクトを推進した古河電気工業。
その取り組みの軌跡とフロア設計を東京大学・稲水准教授と共に追った。
2021年7月19日、本社を東京都千代田区の丸の内仲通りビルから「TOKYO TORCH(トウキョウトーチ)」街区内の「常盤橋タワー」に移転した古河電気工業。
この移転を従業員一人ひとりが新しい時代にふさわしい働き方やワークスタイルを実践するためのきっかけとして同社は捉えている。移転プロジェクトのコンセプトについて、リスクマネジメント本部総務部プロパティマネジメント課長の河井健一氏は次のように話す。
「ワークプレイスを変えることで、ワークスタイルも変える。これが移転の目的です。働き方改革が進み、コロナ禍も続くなか、座席やセクショナリズムに縛られた職場環境では成長は望めません。環境を変えることで、働き方や働く意識そのものの改革を行いたい。本社移転をそのきっかけとしたかったのです」
全社から集められた移転プロジェクトチームが牽引
移転プロジェクトは2019年早々に立ち上がった。メンバーは、基本的に各部門から推薦される形で全社から集められ、約2年半にわたって活動を続けてきた。
プロジェクトの活動には、オフィスデザイン、社内広報、書類削減、ICT化、運用検討など7つの分科会が設けられ、「目指す姿を整理する」→「働き方を設定する」→「働く場を設計する」→「仕組みで運用・浸透する」というサイクルを回しながら進められた。どの分科会も週に1回以上の活動を行うとともに、隔週でプロジェクトの全体会議が行われた。結果として、2年半の活動において850回の会議が実施され、検討された課題は1,000近くにのぼった。
分科会での活動についてビジネス基盤変革本部人材・組織開発部人材教育課の柴田無我氏はこう説明する。
「広報分科会は、プロジェクトで話し合ったことを従業員に周知し、時にはイベントを行ってみんなを巻き込んで盛り上げる役割がありました。書類削減の分科会は、結果としてキャビネット960段分の書類削減を実現しました。また、運用検討の分科会では、新本社の考え方や使い方に関するトリセツを作成。使い方やコンセプトを事前に伝えることで、従業員の不安を払拭しました。