J.H.倶楽部

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Learning Design 2020年11月刊

気づきのエンタ ART 日本美術家列伝 室町〜江戸時代前期篇 大胆かつ機知的なデザインとマルチな才能で活躍した本阿弥光悦

人材開発担当者にご紹介したいエンタメ情報です。
仕事の合間の息抜きにぜひ!

矢島 新(やじま あらた)氏

跡見学園女子大学教授。東京大学大学院博士課程中途退学。渋谷区立松涛美術館学芸員を経て現職。
専門は近世を中心とする日本宗教美術史。
著書に『日本の素朴絵』(ピエ・ブックス)、『マンガでわかる「日本絵画」の見かた』(誠文堂新光社)など。ゆるカワ日本美術史』(祥伝社)など多数。

本阿弥光悦という人物を一言で述べるのは難しい。千利休、古田織部に続いての登場だが、茶人という枠には収まりきらないだろう。現代でいえばアートプロデューサー、あるいはアートディレクターといった呼称がふさわしいのだろうが、洋の東西を見渡しても、17世紀初頭の時点でマルチな才能を発揮した光悦は、かなり突出したアーティストであった。利休や織部にもそうした面はあったが、光悦は自らの手で表現する部分が大きかった点で、偉大な先輩たちを超えている。

光悦は刀剣の鑑定や研ぎなどを家職とする本阿弥家に生まれた。刀剣は刀身や鍔つば、鞘などを総合する工芸であり、それらを統括することから、おのずとモノを見る目は鍛えられただろう。京の上層町衆としての文化的教養を備えていたことは言うまでもあるまい。人となりを伝えるエピソードには乏しいが、残した作品が雄弁に語っている。きっとおしゃれな人だったに違いない。

歴史人名事典は書家という側面から記述を始めるのが常のようだ。近衛信尹や松花堂昭乗と並び寛永の三筆に数えられるが、光悦の書は筆の強弱が明確で、三筆のなかでも個性が強い。その持ち味は俵屋宗達が下絵を描いた料紙に筆を走らせるときにひときわ強く発揮され、2人の天才による奇跡のようなコラボ作品が多数残されている。複数人による共作は日本美術では決して珍しくないが、その頂点に位置するのは、間違いなく宗達の下絵に光悦が和歌などを書した作品群である。

刀剣に欠かせない鞘には通常漆を使った装飾が施されるので、光悦はこの分野にも精通していた。国宝に指定される「舟橋蒔絵硯箱」は光悦の作と伝えられ、古歌を踏まえたデザインで名高い。漆を使う作業そのものは職人が行ったのだろうが、その大胆で機知的なデザインは、自らの審美眼に対する自信と豊かな教養なくして生み出せるものではない。アートディレクターとよばれるのも肯けよう。

凡庸な表現を超越する繊細で微妙な美

おそらく光悦にはろくろの技術はなかっただろうが、美的センスを表現するうえでそうした技術は必要ではなかった。《雨雲》(写真)では手びねりゆえの形のゆがみと釉薬のムラが実に好ましいが、そうした繊細で微妙な美を表現するのに、先人は「味」や「景色」といった言葉を使っている。ありふれた形容詞では足りないのである。

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