J.H.倶楽部

無断転載ならびに複製を禁じます。なお内容は取材・掲載当時の情報です。

Learning Design 2020年11月刊

気づきのトピックス 社会課題を事業で解決、そして次世代人財育成も!? 『可能性アートプロジェクト』

本誌を開いてすぐの「気づきの扉」に掲載しているアート作品は、『可能性アートプロジェクト』という、凸版印刷が複数の障がい者支援団体とともに2018年から推進している取り組みに賛同し、今年5-6月号より掲載しているものである。
同社はこの取り組みにより社会課題の解決と経済的事業活動を両立させるビジネスモデルを構築し、そのプロセスをつうじて次世代リーダー人財を育成している。
同プロジェクトの誕生の経緯から具体的な施策、さらに今後の展望について聞いた。

巽 庸一朗氏 凸版印刷 人事労政本部 人財開発センター センター長

凸版印刷株式会社 Toppan Printing Co., Ltd.
1900年創業。長年培った印刷テクノロジーを基盤に「情報コミュニケーション事業分野」「生活・産業事業分野」「エレクトロニクス事業分野」の3分野にわたる事業活動を展開。
資本金:1,049億8,600万円
連結売上高:1兆4,860億円(2020年3月期)
連結従業員数:52,599名(2020年3月末現在)

[取材・文]=田中 健一朗 [写真]=凸版印刷提供

才能と可能性を最大限に引き出したい

『可能性アートプロジェクト』発足のきっかけは2017年にまで遡る。

とある夜、巽氏が偶然目にしたニュース番組で、「障がいのあるアーティストの作品が映画のポスターに採用された」という話題が取り上げられていた。巽氏は作品に目を奪われるとともに、同時に紹介された土江和世氏(NPO 法人サポートセンターどりーむ理事長)のインタビューでの発言に深い感銘を受けたという。

「土江理事長の『人間は障がいの有無に関係なく、才能をもっていると気づかせてもらった』という言葉は、当社の人財開発センターが目指すコンセプトと一致していると瞬時に感じました。私たちも日々、『社員一人ひとりの能力、才能を最大限引き出すためにどうすればよいか』と、試行錯誤していたからです」(巽氏、以下同)

サポートセンターどりーむ(以下、どりーむ)は、島根県出雲市を中心に活動している団体で、アートの制作によって障がい者の才能を開花させ、雇用を促進し、自立支援の在り方を提案している。

毎年、当社で制作している社員向けの自己啓発促進イメージポスターに掲載する作品の制作を、どりーむのアーティストに依頼したい――。強く思い立った巽氏は、すぐさま土江理事長に連絡をとり、部下数名とともに現地へと赴いた。

「ボランティア」ではなく「ビジネス」を前提とした発注

「当社の経営の基軸は『人間尊重』。選ばれた誰かではなく、社員一人ひとりが毎年成長することが何よりも重要であると考えています。だからこそ、『無限の可能性・才能』というテーマで作品を制作していただき、自己啓発促進イメージポスターを通じて、全社員へメッセージを共有したいという我々の思いを土江理事長にお伝えしました」

巽氏の熱意は伝わり、土江氏は、その場でアート作品の制作を快諾。そして巽氏は「ボランティア」ではなく、あくまで「ビジネス」としてアート作品を発注した。

「いわゆる社会貢献的な意味合いだけの活動支援ではなく、どりーむのアーティストは、当社の人財開発・育成活動にご協力いただいている対等なビジネスパートナーであるからです」

作品を選ぶ“葛藤”が一大プロジェクト化の契機に

発注から5カ月後の12月、作品が完成したという連絡を受け、再び出雲を訪れた巽氏は、大きな衝撃を受けることとなる。

「なんと14名のアーティストによる51もの作品が私たちを出迎えてくれたのです。依頼の際、作品点数や担当アーティストはどりーむに一任していましたが、我々の想像を超える多彩な作品が所狭しと並べられていました。さらに土江理事長から『ぜひ全部使ってください』とのお許しをいただきました」

出雲からの帰り道、巽氏の脳裏には、掲載する作品を選ばなければならないことに対する、ある種の葛藤が生じていた。なんとかすべての作品を活用したい。そこで、膨大な数の作品を有効に利用するための方法について、部下と語り合ったという。

「社内の自己啓発促進イメージポスターだけでは使いきれないので、試行錯誤の末、入社式に合わせた展示会※の開催を思いつきました。新入社員に対して『無限の可能性・才能』をテーマとしたアート作品で迎えるとともに、全社員で同じテーマを共有することは、人財開発の観点からも有意義であると考えました」

この展示会が前身となり、現在の『可能性アートプロジェクト』へと発展することとなった。
※2020年は新型コロナの影響により展示会は9月より開催。

『可能性アートプロジェクト』のしくみ

『可能性アートプロジェクト』は障がいをもつアーティストの作品※をトッパングループが有するコンピタンス(能力・技術)を用いて価値をさらに高め、社会的課題解決と経済的事業活動を両立するソリューションを創出することを目指した、全社員参加型のプロジェクトだ。前述のとおり「無限の可能性・才能」をテーマにした作品を毎年募集し、同社の社員による選考会を経て、プリマグラフィー(超高精細デジタルリトグラフ)化やカートカン(紙製飲料缶)・カレンダーなどの商品へと展開。毎年入社式に合わせてトッパン小石川ビルでも展示される(写真)。

アート作品が商品化された場合、生産数に応じて1枚あたり5円(最低使用料10,000円)のアート使用料として顧客に請求。障がいをもつアーティストへは使用料の80%、1枚あたり4円(最低使用料8,000円)が支払われる。残りのアート使用料の20%は、一般社団法人障がい者アート協会による活動サポート経費として充当されるしくみだ。

また、惜しくもプリマグラフィー化の対象とならなかった作品も特設サイト『アートの輪』に掲載されることで、引き続き商品化の機会が得られるようになっている。
※彫刻等の立体物は対象外(2020年10月現在)。

こちらはJ.H.倶楽部会員限定記事です。
ご入会後、続きをお読みいただけます。

残り:1,676文字

/

全文:3,351文字

【入会・年会費無料】

J.H.倶楽部は人事の仕事に役立つ特典が満載です!

  1. 総数2000本以上の人事の実務に役立つ記事(※)が閲覧可能
    ※専門誌『Learning Design』(旧『人材教育』)の記事
  2. 新サービス・お役立ち情報(調査報告書・ホワイトペーパーなど)の先行案内
  3. 会員限定セミナーへのご招待/講演動画・配布資料の閲覧
  4. 興味関心に沿った必読記事を、メールマガジンでお知らせ!