J.H.倶楽部

無断転載ならびに複製を禁じます。なお内容は取材・掲載当時の情報です。

Learning Design 2020年09月刊

特集│CASE 3 博報堂 フリーハンドのマネジメントから脱却 ツールを活用して マネジメントの暗黙知を形式知化

「成果主義から成長主義へ」をコンセプトに、人事制度改革を進めてきた博報堂。
部下の成長の鍵を握るマネジャーを、様々な施策で支援してきた。
同社で人材育成に長年携わってきた白井剛司氏は「これらの施策は、With コロナ・マネジメントにも活きる」と話す。
コロナ禍においてマネジャーをどう支援していけばいいか、また今後どのように支援しようとしているか、話を聞いた。

白井剛司氏 博報堂 人材開発戦略局 マネジメントプラニングディレクター

株式会社博報堂
1895 年創業。以来、マーケティングやクリエイティブ、デジタル、コンサルティング、リサーチなど幅広い事業を展開。
「生活者発想」と「パートナー主義」をフィロソフィーとし、ソリューション・サービスを提供する。
資本金:358 億4800 万円 
連結売上高:1兆97億8,300万円(2020年3月期)
社員数:3,870名(2020年4月1日現在・契約社員含む)

[取材・文]=谷口梨花 [写真]=編集部

コロナ禍におけるマネジメントの課題

新型コロナウイルスの感染拡大で働き方が大きく変化するなか、特に困っているのはマネジャー層だ。コロナ禍で顕在化したマネジメントの課題として、白井氏は以下の5点を挙げる。

課題❶ 関係性構築の難しさ

「チームで成果を出すためには、心理的にも安心安全な職場環境を整備したうえで、メンバーと信頼関係を築いていくことが重要です。しかし、コロナ禍で顔を合わせてのコミュニケーションは激減し、安心安全な職場環境やメンバーとの信頼関係を築くことが、以前に増して難しくなっています」(白井氏、以下同)

課題❷ 仕事スタイルの理解

どんな仕事スタイルが快適かは、人によって異なる。

「たとえば、未確定な状態でもまず動くというスタイルの人もいれば、きちんと要件定義をしてからでなければ動きたくない、という人もいます。テレワーク下では仕事スタイルの違いがより顕著になるため、プロジェクトが始まる前などに、快適な仕事スタイルを話し合う場を設けることが必要になるでしょう」

課題❸ 様々な立場の人への配慮

どんな組織でも、現代のマネジャーは多様なメンバーをマネジメントしているもの。しかし、With コロナ時代には、特に配慮が必要なメンバーがいる。

「たとえば、新入社員や中途入社者は、弱い立場になりがちです。マネジャーからも、彼らに気軽に声をかけたり、伴走したりできる機会が減り、育成が困難になっているという声が多く聞かれます。不安を抱えているメンバーをどのように気遣い、育成していくかは大きな課題です」

課題❹ 業務依頼方法の変化

働き方が変化したことで、業務依頼の方法も変化している。

「これまでは、部下と何度もやりとりしてすり合わせたうえで、業務を依頼してきたでしょう。また部下と並走する時間も、それなりに長かったはずです。しかし、リモート環境では、そのようなすり合わせは難しくなっています。これからは、業務を依頼する側があらかじめ要件を明確に定義したうえで、例えるなら、一つひとつの業務単位をモジュール化したうえで依頼し、複数メンバー間の成果物を組み合わせていくようなやり方になるのではないでしょうか」

白井氏いわく、「『すり合わせ』から『組み合わせ』への変化」である。

「今は非定型の業務が多いので、要件定義の難易度も高いですが、マネジャーは落としどころを見据えて、業務を明確にしたうえで人に渡していくことが求められるようになるでしょう」

また、モジュール化することで、「要件を満たしていれば、後は自由にやっていいよ」と任せやすくなるだろうと白井氏。

「リモート環境では毎回小刻みに報告していたら仕事になりませんし、そもそも全部のプロセスを把握することは不可能です。権限委譲は今後ますます進んでいくでしょう。ただし、権限委譲するにしても、外してはいけないポイントはマネジャーがきちんと押さえておく必要があります」

組み合わせを成功させるには、業務を依頼するマネジャーのスキルが、これまで以上に問われるようになるのだ。

課題❺ 非言語情報の減少

リモート環境では、どうしても非言語の情報が少なくなりがちなことも課題である。

「たとえば、誰と誰が仲良しだとか、誰がスランプに陥っているといった情報は、テレワークでは見えづらくなります。非言語情報の減少は、組織のカルチャーやコンディションの悪化につながりかねないので、マネジャーは、1on1の親密な対話機会などを意識してつくっていくことが求められます」

マネジャーに求められる3つのスキル

以上のような課題は、With コロナ・マネジメントにも大きな影響を及ぼすだろうと白井氏。それに対して、会社としてマネジャーをどう支援していくのか。

「当社では、2018年に『成果主義から成長主義へ』というコンセプトで人事制度改革を行いました。成長主義への転換のために重要な役割を担うのが、部下の成長を支援するマネジャーです」

同社では、マネジャーに求められるスキルセットとして、次の3つを挙げ(次ページ)、これらを磨き、部下の成長支援に活かしてもらえるよう、会社としても様々な施策でマネジャーを支援している。

❶対話

1on1コーチングで尊重と共感ができ、話しやすい関係を築くスキル

❷内省支援

経験から学びを得てもらえるように、言語化や概念化をサポートするスキルや、権限委譲し、仕事を任せることができるスキル

こちらはJ.H.倶楽部会員限定記事です。
ご入会後、続きをお読みいただけます。

残り:2,274文字

/

全文:4,547文字

【入会・年会費無料】

J.H.倶楽部は人事の仕事に役立つ特典が満載です!

  1. 総数2000本以上の人事の実務に役立つ記事(※)が閲覧可能
    ※専門誌『Learning Design』(旧『人材教育』)の記事
  2. 新サービス・お役立ち情報(調査報告書・ホワイトペーパーなど)の先行案内
  3. 会員限定セミナーへのご招待/講演動画・配布資料の閲覧
  4. 興味関心に沿った必読記事を、メールマガジンでお知らせ!