新連載 勝ち続けるための企業遺伝子「コーポレートゲノム」 [第1回] なぜ、いま「組織風土」に着目するのか 企業変革を左右する組織風土
「組織風土」とは社員共通の価値観や、ものの考え方、行動パターンの総称。いま、この「組織風土」が経営理論的にも企業価値の源泉と認識され始めている。それは、企業価値を高めるべく変革に取り組み、合理的な経営手法を導入しても、「何も変わらない」といった経験を持つ企業が多いこととも無関係ではない。企業変革を成し遂げるには、自社の組織風土というものをしっかり把握したうえで、経営環境の変化をにらみながら最適なプロセスで推進しなければならない。そのための第一歩が組織風土を構成する企業遺伝子「コーポレートゲノム」を見極めることである。本連載では、組織風土が企業変革を左右する主要な因子という観点から、組織風土をいかに把握し、そしてそれを元にどう企業変革を推進していけばよいかを、事例を交えながら解説していく。
1. はじめに
企業は勝ち続けるためにあらゆる改革を試みている。しかし、これら改革が志半ばで頓挫することも多い。それは、戦略的なフレームワークに裏打ちされた「合理的」「外科手術的」な経営手法に基づく改革が、変革の過程をうまく乗り切るための必要な体制やノウハウ、従業員の意識を無視した結果である。
コンサルティングの場面において、多くの企業で[うちの会社は特別だから……]という言い訳に近い言葉をよく耳にする。しかし、考えてみてほしい。そもそも自社の独自性のない「特別でない」企業などあるわけはない。各企業が[特別]だからこそ、自社の特徴、強み、弱みを認識レ「特別」であることを前提とした「独白」の取り組みをしなくてはならない。企業変革の推進担当者なら、書店に多く並ぶビジネス書で紹介されているような、合理的な経営手法をそのまま自社に導入しても何も変わらないことを何度も経験してきたはずである。
外部環境の変化に対応し、変革が求められる経営環境のなかで企業独白の風土を認識し、最適なプロセスで企業変革を推進していくことが大事なのである。
本連載では、自社の組織風土と向き合い、変革へ向けた取り組みをした企業の事例を交えながら、組織風土に対するアプローチを5回にわたって紹介する。
2. 注目される組織風土
(1)企業価値を創造する第5 の経営資源: 組織風土
一般に、多くの企業が社内外に掲げる目標は財務指標であり、その多くは売り上げや利益である。成熟したマネジメントがなされている企業では利益率、特に投下資本に対する利益率(総資産利益率[ROA]や株主資本利益率[ROE ]など) も目標指標となっている。さらに、意識の高い企業では「企業価値」を目標指標として掲げている。
「企業価値」を捉える時には、一般には「財務的価値(Tangible) 」と「非財務的価値(Intangible) ]の2つに分けて考えられる。非財務的な企業価値とは、企業ブランドやのれん、企業文化、組織風土、行動様式などが構成要素とされることが多い。とりわけ、最近注目されているのが、組織風土(活性化しているか否か) が生か企業価値である。