Opinion―2 企業は社会との共生の パートナーとしての自覚を
昨今の企業不祥事は、高橋亀吉が昭和初期に『株式会社亡国論』で警告したことが、現在にも当てはまることを証明した。従来とかく企業は市場ランナーにとどまり、社会との接点を避けてきたきらいもあった。しかしいま、企業は、経済価値の提供者であるだけでなく、社会との共生のパートナーとしての自覚が強く求められている。
高橋亀吉とスチーブンソン
高名な経済評論家の高橋亀吉(1891~1977) は1930 (昭和5 )年、『株式会社亡国論』(英里閣書房) を刊行した。冒頭の一節を現代仮名遣いに直し紹介してみたい。
<日本経済今日の行き詰まりは、それの根幹的経営主体たる株式会社の欠陥に基づく所が少なくなく、それの改善は刻下の急務の一つである。顧みるに
日本における会社企業は、明治維新直後、急に大資本を要する世界資本主義経済に接触し、これに対応するため、速成的に人為的に祖製濫造せられたものであって、健全な会社経営に必要な準備的経済条件の成熟して、その上に発達したものでは決してなかった。勢い、重役も株主もその他の社会も、会社の健全なる発達を確保するに必要な資格を備えることなくして、会社経営に従事してきたがために、ここに重役、および株主の悪意並びに無知に淵源する多くの腐敗堕落が、わが会社経営を蝕むに至り、ひいては、産業の疾患となり衰弱となるに至ったのである>
近代化に出遅れた日本企業が『システム』と『知』の後進性を克服できないまま腐敗堕落していった断面”は、長期ビジョンの欠落、放漫経営、粉飾決算、経営倫理の欠如、経営者の不適格、大株主の横暴に表れているという。
その後、長い歳月を経て経済社会は倫理的に格段に前進したと思われたが、昨今の企業不祥事は、高橋の警告が現在にも当てはまることを証明しだ。