連載 調査データファイル 雇用・人事システムの構造改革 第44 回 若年者雇用問題①
現在、日本には卒業してもフリーターやニートといった、定職に就いていない若者が約250 万人もいるという。競争心がなく学力不足の学生が大量に生み出されてくると、新規高卒者や学卒者を大量に定期採用していた企業も採用に慎重になってきている。その実態について探ってみた。
1. 成果主義賃金は賛成だが不安
日本の社会は、急速に進行する高齢化の問題に気を取られているすきに、少子化の波に足下をすくわれ始めている。合計特殊出生率が1.29 人まで低下したという事実は、公的年金を中心とした将来の社会保障制度のあり方を動揺させるとともに、先の衆議院選挙の結果にまで大きな影響を及ぼした。
少子化を解消するためには、現在の若者たちに頑張ってもらわなければならないわけであるが、頼みの綱の若者たちが、何とも心細い状況になってきている。学校を卒業した後、これといった定職に就かずにアルバイトなどでその日暮らしをする「フリーター」が約200 万人、就職もせず学校にも行かず職業訓練も受けていない正真正銘の無業者である「ニート」と呼ばれる若者が、約50万人もいるようである。
フリーターやニートが増え続ける事態を放置しておくと、将来の税収や社会保険料が減少してしまうというお役所の懸念から、日本の人的資源が質的劣化を起こしてしまうといった社会的心配まで、幅広い議論がわき起こっている。こうした社会的状況を反映して、従来高齢者雇用が中心となっていた雇用政策も、急速に若者対策の比重が増し、厚生労働省、経済産業省、文部科学省が相乗りした対策も含めて、多様な対策が相次いで具体化してきている。
フリーターやニートという、古い世代から見て不可解な若者たちが増える社会現象は、成熟化した社会では共通したものである。フランス、ドイツ、イギリスなどヨーロッパ諸国では、かなり前から若年失業に悩まされ続けており、若者を対象とした多様な就業対策が実施されている。こうした側面から見ると、日本の社会も欧州諸国並みの成熟化社会になってきたようである。