J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2009年08月号

連載 人事担当者のための正しいメンタル不全対策 第5回  焦らず・慌てず・先走らず 医療機関へと促す方法

松崎 一葉(まつざき・いちよう)氏
筑波大学大学院社会医学系教授、日本精神神経学会指導医。1985年、筑波大学医学専門学群卒業、医学博士。労働者のストレスに関係した研究成果を広く社会に還元するために、労働者のメンタルヘルスから宇宙飛行士の選抜まで、幅広い分野で疾病の発生予防活動に取り組んでいる。

吉野 聡(よしの・さとし)氏
筑波大学大学院社会医学系助教、精神保健指定医。2003年筑波大学医学専門学群卒業、博士(医学)。産業精神医学と労務管理に関する法律が専門。東京都の産業医として休業労働者の職場復帰支援に携わった後、埼玉県の病院でうつ病患者の職場復帰支援プログラムを創設。

前回は、身近な社員にうつ病の初期兆候を発見したら、まずその人の話をじっくり聞き、除去が可能な職場のストレス要因はすぐ取り除くことが重要、ということをお話しました。しかし、ストレス要因を軽減するだけではケアとして不十分な場合があります。

たとえば、睡眠障害が表れている人の中には『眠れない→ 仕事に集中できない→ 軽減された仕事すらこなせない→ さらに悩む→ ますます眠れない』といった悪循環に陥っている人が多くいます。この場合、睡眠薬の処方を受けるなど、医療機関の力を借りることも必要です。そこで今回は、医療機関に行くべき人に対し、職場の上司(管理職)や人事労務関連部門はどう声をかければいいか、また、医療機関を勧める場合には、どこを勧めたらよいのかをお話ししましょう。

不調そうな人を病院に向かわせるには?

前回も申し上げましたが、他の人から突然、「精神科に行ったほうがいいよ」などと言われ、自分の“心の問題”を指摘されると、多くの人が強い抵抗を感じます。

これに対して、身体の不調については素直に周囲の助言を受け入れやすいものです。ですから「眠れない」「食欲がない」「頭が働かず、仕事が思うようにできない」「職場に来ると頭痛がする」など、具体的な身体面や行動面の症状に注目しながら、「眠れないのはつらいね」「あまりに食べられないようなら、病院で点滴を打ってもらったら」など、“体の健康問題”として受診を勧めると、比較的抵抗なく医療機関へと誘導することができます。最初は内科医への受診でも構いませんので、とにかく医療機関へつなげることが重要です。一度、医療機関につながれば、医師から精神科医療機関を紹介され、適切な医療に結びつくことがほとんど。いきなり病院にいくことに抵抗がありそうなら、より身近な職場の産業医や健康相談等を利用するよう勧めることも有効です。

では、そうして医療機関を受診した人から「精神科へ行くよう医者に勧められました」と報告を受けたら、管理職や人事部門としては、どう返事をするのが適切でしょうか。

こうした時、精神科医療に対する偏見や、本人を元気づけたい気持ちから「それほどひどくないのでは」などと言ってしまうと、せっかくの受診の機会を逃してしまうことがあります。そこで「仕事のことは気にしないで早めに行ってきて」「たくさん話を聞いてもらえるといいね」などといった言葉をかけ、本人が精神科に行きやすくなるよう配慮しましょう。

「働きたい」は「働かなければ」との焦りから

次に、その人が精神科で主治医から、一定期間の自宅療養を勧められてきた場合を考えてみましょう。本人も休養を取りたいと考えていればいいのですが、「今、私が抜けるとみんなに迷惑がかかる」と、休みをとることを躊躇している場合、もう1ステップが必要になります。本人が働きたいと言っているために、「本人の意思を尊重して働いてもらおう」などと思いがちですが、この選択肢は適切ではありません。なぜなら、不調者からの「働きたい」発言の多くは、「働きたい」という“意欲”ではなく「働かなければ」という“焦り”からの発言だからです。そして、この“焦り”はうつ病の典型的な症状の1つでもあります。

この場合は、きちんと休養してもらうべきなので、正しい対応としては、「仕事のことは心配しないでいいので、ゆっくり休んでください」「きちんと休んで、きちんと治してまた活躍してくれればいい」といった声をかけることです。こうすることで、安心して休みをとってもらいやすくなります。

精神科、神経科……どこに行かせるべきか

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