J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2018年03月号

世界で闘うリーダーになる 最終回 グローバルで闘う方法論 ~その2 リーダーシップと 「 志(こころざし)」

「今、日本企業にはリーダーが足りない」――。そう話すのは、日立製作所でグローバル人財戦略を担った山口岳男氏。リーダーを増やすために、まずは人材開発の担当者一人ひとりが、自身がリーダーになる意識を持ち、努力する必要があるという。
日本企業がグローバルで戦う方法とは。また、グローバルで通用するリーダーシップはどのように身につければよいのか。本連載では、同氏がこれまでの経験で得た知見を交えて、5回にわたり解説する。


Profile
山口岳男(やまぐち たけお)氏
EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング 特別顧問/
元 日立製作所 人財統括本部 副統括本部長

1975 年に日立製作所入社。一貫して、人事・総務関係を担当。1985 年~日立アメリカ(米国ニューヨーク)勤務。その後、本社勤労部国際グループ部長代理等を経て、2003 年~ Hitachi Global Storage Technologies,Inc(米国カリフォルニア・サンノゼ)の人事部門責任者(Vice President)。2009 年~ 日立総合経営研修所取締役社長、2011年~ 日立製作所人財統括本部副統括本部長、2014 年~日立総合経営研修所取締役社長。現在、EYアドバイザリー・アンド・コンサルティングで特別顧問を務める。

リーダーシップへの危機感

先月号で私は「世界で闘うビジネス・パーソンになるための強化メニュー」についてお話しました(図1)。今回はその中の「2リーダーシップを鍛錬する」について説明します。

私は、日立が買収したカリフォルニア州サンノゼの会社に赴任し、人事責任者として仕事をしていました。その間、ずっと抱いていたのが「日本人のリーダーシップは、どう見ても見劣りする」という危機感でした。

日立はリーダーの育成に多額の投資をし、経営者の育成、グローバルリーダーの育成に関して、さまざまな仕組みやプログラム、トレーニングを整備していたと思います。それなのになぜ、太平洋をまたいで組織で業績を上げようとすると、日本人のリーダーはつまずくのか。仕組みや仕掛けが上手くいっていないのか、リーダーとしてのスキルやマインドに問題があるのか――。これは、買収した会社を運営するうえで、大きな経営課題でした。

6年半の米国勤務を終えて日本に帰国した後、有能なリーダーが発揮していたリーダーシップを思い起こして、リーダーシップの在り方をまとめてみようと思いました。サンノゼで目にしたリーダーシップは、個人のキャリアや経験により千差万別である一方で、多くの部分で共通するものがありました。そうした共通するリーダーシップをリーダーの初期段階で計画的に身につけさせることが必要なのではないか、と思い至ったのです。

リーダーシップの方法論

私はリーダーシップの方法論は「守破離」にあると考えています。デジタル大辞泉によると「剣道や茶道などで、修業における段階を示したもの。『守』は、師や流派の教え、型、技を忠実に守り、確実に身につける段階。『破』は、他の師や流派の教えについても考え、良いものを取り入れ、心技を発展させる段階。『離』は、一つの流派から離れ、独自の新しいものを生み出し確立させる段階」とあります。私が高校の体育で少しだけ柔道を習った際、最初に学んだのはいわゆる「受け身」でした。これを何度も何度も繰り返し、身体が覚えるまで練習するのです。

基本的にはリーダーシップの鍛錬もこれと同じではないかと思います。意識せずに身体が自然に動くレベルまで持っていく。つまりリーダーシップと意識せずとも、リーダーとしての立ち居振る舞いができるようにならなければならない、ということです。

リーダーシップの7 つの型

この立ち居振る舞い方、つまりリーダーの初期段階で身につけるべきリーダーシップの基本型を、私は7つの型に整理しました。これは守破離における「守」の段階に当たります。一つずつ説明しましょう。

・第1の型『Inspire』

まずは「ビジョンを示す」ということです。「リーダーたるもの、ビジョンを示せ」と言いたいのです。ただし、格好だけよい、綺麗な言葉を書き連ねたビジョンを作って伝えろと言っているのではありません。組織や仕事をどのような状態に持っていきたいのか、自分なりの想いや意志を示すことが必要です。

まずは自分のやりたいこと、本気で実現したいこと、在りたい姿を明確にし、自分の言葉で表現してみる。それを自分のステークホルダーに伝えることで、彼らをその気にさせるのです。つまり「自分のやりたいことを言語化し、表現して相手を心の底から感動させてその気にさせる」ということになります。

そのための要件は、まず①リーダーがビジョンを心の底から本気で信じているということ。そして、それは②自社や自組織のビジネスのコンテクストの中で考えたものであり、③少なくとも今後3~5年後の姿を想定したビジョンであること、が必要です。さらに、今はできていないが努力すれば達成可能だとリーダーが心底信じており、その内容は④チームをワクワクさせるような何か、でなくてはなりません。ワクワク感はチームを鼓舞し、自ら一歩を踏み出す勇気を与えてくれます。

・第2の型『 Motivate』

チームを奮い立たせるということも大切です。ただ単に「動機づける」ということではなく、「自ら先んじて行動を起こし、自分を、仲間を勇気づける」ということを意味します。未来の姿を実現するためにチームを本気でその気にさせるのです。

そのための要件は①ビジョンは繰り返し伝え続けること、伝え続ける意志を持つこと、さらに②チームに対してチャレンジングなタスクとロードマップを明示すること、です。複数年かかりますから、ロードマップやマイルストンが必要となるでしょう。こうした全体の大きなピクチャー(全体像)から、③ビジョンの実現がチームのメンバー個人の成長につながるようにしていくこと、でチームを本気に、いわばエンゲージメントさせることができるのです。

・第3の型『 Build and Lead』

これは真にリードするということです。そのためには、「チームを作って、旗を振り周囲を巻き込み動かす、そして自分も動く」ことが不可欠です。

その要件とは①ビジョンを実現することを理解して力を貸してくれる仲間、同志、あるいはあなたの「右腕」をチームに配置することです。とかく日本では決められたチームメンバーで進めようとしがちですが、必要だと思う人材はチームに入れることです。

そして②ビジョンの実現に向けて組織能力を正しく評価することも大切です。どんな能力、経験、スキルが必要かを明らかにして、それに対して現有の組織能力とのギャップも明確にする。現在の人材で十分な、また不足している組織の能力を特定して、不足している能力を持った人材を内部から探すのです。

内部では見当たらない、もしくは内部の人材の育成を待っていてはビジョン実現に間に合わないと判断したら、外部からその経験やスキルを持った人材を招聘することをためらわないことです。そうして作ったチームを率いて、自らも腕まくりをし、ビジョンの実現に向かって『Inspire』し『Motivate』することが『Buildand Lead』するということです。

・第4の型『 Communicate』

何度繰り返しても足りないのがコミュニケーションで、最初は『Communicate, CommunicateCommunicate』 と3度も重ねて伝えていたほどでした。これは、相手が分かってくれないということを前提に、それでもあきらめず、しつこく情熱を持って対話する、ということです。「コミュニケーションをすれば分かる」ではなく、分からないからコミュニケーションをするしかないのです。そして最終的には「相手の理解、納得、共感、そして行動を呼び起こす対話を英語でする」というのが目標となります。

そのための要件は①自らが率直でありオープンであること、②相手の意見に耳を傾けること、③心に響く熱意と頭脳に伝えるロジックを表現すること、です。この型は、英語で行うことになるので難度は高いのですが、グローバルで多様なチームメンバーを率いて仕事をする、あるいはチームの一員として協働する際には欠かせないものです。

・第5の型『 Focus on Results』

これは、ビジネスの世界に限りませんが、いったんやると決めたことを最後まで責任を持ってやり遂げるということです。

「結果を出してやり抜く」ための要件としては、①結果責任は自分が果たす、そのための覚悟と最後までやり遂げるという執念を体現して行動をとること、また、②結果を出すまでの過程にはさまざまな障害や課題が表出するが、これを対処するにあたってブレない自分の軸を持つこと、そして③結果を出すためにチームメンバーに任せるだけでなく、必要に応じて自らの手足も出すこと、最後に④仕事の節目節目で仕事の成果を評価して祝い、士気を高めること、が挙げられます。

ビジョンは、一朝一夕で実現させることはできません。一歩一歩進んで行くためには、チームメンバーを『Comfortable Zone』から『Uncomfortable Zone』に置くことが鉄則であるような気がします。そこでストレッチした結果、個人的には次の成長レベルへ、チームとしては次の高次レベルの組織へと高みに進むことができるのです。覚悟を持ってこれを率いていくのがリーダーだといえるでしょう。

・第6の型『 Network』

自分が信念を持って進めている仕事でも100%正しいとは限りません。落とし穴があったり、あるいは進める方向に微調整が必要なこともあるかもしれません。ですから、率直にものを言ったりアドバイスをしてくれる人を複数持つべきです。それは外部のコンサルタントだったり、ある分野の専門家、学者、あるいは社内の専門家かもしれません。日本人とは限りませんから、広く国内外にネットワークを広げるのです。名刺をチェックしてみましょう。大半は取引先など身内の人だけ、ということはないでしょうか。外部の人の名刺、外国人の名刺、どんな割合ですか。必要なのは、社内外の人的なネットワークを構築して互恵関係を持つことです。

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