J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2017年11月号

ATDの風 HR Global Wind from ATD <第8 回>ATD-ICEにおける「ラーニングテクノロジー」

米国で発足した人材・組織開発の専門組織ATD(タレント開発協会)の
日本支部ATD-IMNJが、テーマ別にグローバルトレンドを紹介します。


田辺健彦氏
株式会社人財ラボ チーフ・コンサルタント/ ATD-IMNJ ラーニングテクノロジー研究会・広報委員会メンバー

20 年以上、テクノロジーベースによる企業向け教育に携わる。2016 年10 月から株式会社人財ラボに参画。2010 年よりATD(旧ASTD)事務局・広報委員として、日本における人財開発関連の最新情報発信・啓蒙に寄与。

Image by Merfin/Shutterstock.com

ここ近年、テクノロジーはめまぐるしいスピードで進化を続けており、人材開発や組織開発の分野においても、数年前には考えつかなかったような仕組み・手法・ツールが、「ラーニングテクノロジー」として実現されている。本稿では、先に開催された米ジョージア州アトランタ大会の内容をメインに、ATD-ICE(International Conference and Exposition)で紹介されたラーニングテクノロジーについて述べようと思う。

■オープニングスピーチの変遷

ATD-ICEでは、毎年1回目の基調講演の前に、ATD のCEOであるトニー・ビンガム氏がオープニングスピーチを行うことが恒例となっている。その際、よく扱うのがラーニングテクノロジーに関するトピックだ。実際、ここ3年のオープニングスピーチのテーマは、以下の通りである。
2015 年 モバイルラーニング
2016 年 ラーニング・カルチャー
2017 年 マイクロラーニング

2015 年、米フロリダ州オーランドのオープニングスピーチでは、34%の会社がモバイルラーニングを活用している、という調査結果と、いくつかのモバイルラーニングの事例が紹介された。モバイルラーニングについては、2010 年くらいからATD-ICEが発信するようになったが、その成果が現れたようだ。

2015 年は、「Bite-Size(バイト・サイズ)」というキーワードをよく耳にした年だった。Bite-Sizeは3~8分くらいの教材・コンテンツを、繰り返して学習することで、学習内容の定着を図ろうとするものである。

いつでもどこでも、好きなタイミングで学習できるモバイルラーニングは、近年、さかんに活用されるようになったが、それにつれてBite-Sizeも注目され始めた。「スマートフォン・携帯電話の1回当たりの平均利用時間は4、5分」といったデータもあり、Bite-Sizeの教材・コンテンツとは相性がいいと考えられたのだろう。

さらに、2014 年頃から話題になった「ニューロサイエンス(神経科学)」も、職場や日常業務への適用例など、より実践的なセッションが増えていたことが印象的であった。

2016 年の米コロラド州デンバー大会でのオープニングスピーチは、「ラーニング・カルチャー」をテーマとしたスピーチだった。ラーニングテクノロジーの導入についての直接的な内容ではなかったが、成功した企業・組織の31%がラーニング・カルチャーを築いていた、という調査結果や、そうした企業CEOのメッセージを紹介し、ラーニング・カルチャーの重要性を説いていた。

また、2017 年の米ジョージア州アトランタ大会のオープニングスピーチのテーマ、「マイクロラーニング」はBite-Sizeと同義だが、38%の企業が「既に使用している」、42%の企業が「将来使用したい」と答えた、という調査結果などが説明され、今後の活性化を期待させる内容であった。

マイクロラーニング導入のステップとして紹介されていたのは、以下の6項目だった。
・ Think forward(前向きに考える)
・ Think outside the classroom(教室以外で考える)
・ Be agile in your learning design(ラーニングデザインをアジャイルに)
・ Keep content short(コンテンツを短く保つ)
・ Address technology and security needs early(技術とセキュリティーの要望に早期に対応)
・ Get your leaders’ support(リーダーのサポートを得る)

また、リサーチ結果によればマイクロラーニングではビデオがよく使われていること、シスコシステムズのリサーチでは、モバイルでやり取りされるデータの50%をビデオが占めていることなどを示し、モバイルデバイスでのビデオによる、マイクロラーニングのアジャイルな学習について語った。

■ATD-ICE2017 における傾向

アトランタ大会での「ラーニングテクノロジー」トラックは41 のセッションで構成されていたが、今回の大会では、テーマが複数のトラックにまたがるようなセッションが多かった。

例えば、ニューロサイエンスから導き出されるインストラクショナルデザインやリーダーシップ開発、ラーニングテクノロジーによるトレーニングデリバリー手法の変革など、ハイブリッドな内容のセッションが目立っていた。

「ラーニングテクノロジー」トラックのセッションを、タイトルやサマリー内のキーワードでカウントしてみたものが 図1(P63)である。

「VR(Virtual Reality:仮想現実)・AR(Augmented Reality:拡張現実)」や、マイクロラーニングにも関連する「ビデオ・動画」、ラーニングデザインの第一人者、マーク・ローゼンバーグ氏がセッション(SU109:From Content Creation to Content Curation: An Emerging Critical Role)で取り上げた「キュレーション」などが上位に顔を出している。「LMS(学習管理システム)・TM(タレントマネジメントシステム)・xAPI」も相変わらず多かった。

予想外だったのはトップの「バーチャルクラスルーム」であった。

その国土の広さゆえに、バーチャルクラスルームのセッションは以前から少なくなかったが、今年は特に目を引くものが多かった。バーチャルクラスルームをより良く運営するための具体的なポイント、Tipsなどを紹介する実用的な内容も目立った。

日本ではまだ一般的ではないバーチャルクラスルームだが、今後、「働き方改革」が進むに伴い、テレワークやサテライトオフィスといった遠隔地就業は一般的になるだろう。やがて必須の手法となるに違いない。

一方、「モバイル」や「AI 」、一時期はよく見られた「ゲーミフィケーション」が、あまり顔を出していないのが意外であった。

■セッションの概要

ここでいくつかのセッションの内容を簡単に説明したいと思う。まず、一番多かったバーチャルクラスルーム関連のセッションを紹介しよう。

(1)成功の鍵

SU305:Secrets of Master Virtual Trainers : 5 Keys to Online Classroom Success

Speaker:Cindy Huggett, CPLP

「マスターバーチャルトレーナーの秘密」という興味深いタイトルの本セッションでは、「オンラインクラスルームを成功に導く5つの鍵」について、具体的に説明をしてくれた。それによれば、5つの鍵とは以下の通りであった。
1.Prepare Relentlessly(周到に準備する)
2.Engage Participants(参加者とエンゲージする)
3.Multi-Task Effectively(効果的にマルチタスクする)
4.Make The Most of Your Voice(あなたの声を最大限に活用する)

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