J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2017年11月号

おわりに 「人間とは何か」を突きつけるAI

この約40 年の間に、コンピュータの情報処理能力が上がってきたことで、AIが本格的に、さまざまなビジネスや仕事に導入され始めた。「AI が人間の仕事を奪う日が来るのではないか」「将来なくなる職業」といった情報が毎日のように流れてきて、将来に不安を覚える人も少なくない。

そこで本特集では、人工知能研究者、教育関係者等の識者や、既にAIを人事や教育に活用し始めた実務家に、AIと人間の知性の違いや役割分担、そしてAI本格導入時代にも重宝される人材像について聞いた。

AIと人間の違い

人工知能研究者の中島秀之氏(OPINION1、22 ページ)は、AI が我々の職を奪うのではなく、職が“変わる”というのが正しいと言う。

「一定以上の知識は、スマホで検索すればよく、ものをつくる実行過程で必要となる物理学の方程式や、細かい計算なども、AIに任せられるようになる」、よって、こうした仕事はAIに置き換わる。人間には、AIを使うための「情報論的思考」、AIを使って何がしたいのかを考える「どういう社会にしていきたいかを常に考える力」、そして実行時に人を動かす「人と人をつなぐ力」が必要だと述べた。

また、ヤフーのチーフストラテジーオフィサーである安宅和人氏(OPINION2、26 ページ)は、「AI にできないこと」(課題解決におけるAIのボトルネック)を明確に述べており興味深い。
<AIのボトルネック>
・意志がない
・人間のように知覚できない
・事例が少ないと対応できない
・問いを生み出せない
・枠組みのデザインができない
・ヒラメキがない
・常識的な判断ができない
・人を動かす力がない

こうした力がないために、AIは、到底人間のようには課題解決できない。よって、人の知的生産はそう簡単にはAIに置き換えられないというのである。ほっとさせられるが、これらを全て裏返せば、今後重宝される人材像が分かる。氏は他にも、「知覚を深める」重要性を説いている。

時代の変化への自覚

教育者の代表として話を聞いたのは、リクルートに勤務の後、学校教育分野に転身し、現在は奈良市立一条高等学校の校長を務める藤原和博氏だ(OPINION3、32 ページ)。

今後を担う若い世代に日々、向かい合っている藤原氏は、AI 時代に生き残るのは、「生きる力の三角形」の能力― 「基礎的人間力」「情報処理力」「情報編集力」が高い人であること。特に「情報編集力」が鍵であり、かつ、自ら主体的に自分のキャリアを切り拓いて「希少性」を高めていく人だという。

藤原氏のみならず、今回取材した識者は口を揃えて、今後、雇用の在り方が変わっていくと予言した。日本でも、仕事に一時的に雇用するスタイルへと、働かせ方が急激に変わっていくというのである。本当にそうした変化が起きれば、企業が抱え込むのは一部の経営人材のみとなり、専門職は一時採用、そして大量の情報処理や、専門的であっても計算などの作業はAIが担うことになる。

これは、産学官連携のうえで対応すべき、大きな社会変化である。早急に対応できることでもない。しかし、おそらく個人のキャリアへの意識は、この変化よりも先に変わる。自分の希少性を意識する優秀な若い世代は、1社に一生、勤め続けようとは思ってくれないだろう。その萌芽は見え始めている―少なくとも、今後の企業の人事・人材開発に携わる担当者は、この変化に自覚的であるべきである。

ついに育成にAIが入る

人事・人材開発部門としては、本分野で、今、AIがどの程度、導入されているのかも知っておきたいところだ(詳細は49 ページの「MINI COLUMN」参照)。

人事分野でのAI導入は、近年、採用のプロセスに取り入れられ、拡大してきた。今でも採用分野が先行しているが、ついに育成・人材配置にも活用が始まった。その例が、今回のCASE1、アサヒグループホールディングスのケースである(36 ページ)。

同社では、グループの次世代経営者育成―幹部社員のキャリアパスの検討や重点的な育成に、AIの入ったシステムを2017 年5 月より導入し始めた。AIは、「異動・昇進の、これまで多かったパターン」や、「○○というポストにふさわしい候補者」、「○○さんの成長のために、今後ふさわしいキャリアパス」を、蓄積されたデータを参照して提案してくる。

このことで、「“経営陣や人事の頭の中”を可視化して検討することが可能になる」ため、そこをAIに任せることで、「前例のない、でも人を成長させるキャリアパターンや人材配置を考えるといったことに時間を割くことができるようになる」(同社、柴田氏)という。頭の中だけではなく、過去の情報を探し出してくる、といった作業の時間も短縮されるだろう。そうして空いた時間を、より社員の成長、経験のアレンジに使えるようになることを、同社では期待している。

知識・スキルはAI教材へ

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