J.H.倶楽部

無断転載ならびに複製を禁じます。なお内容は取材・掲載当時の情報です。

月刊 人材教育 2017年11月号

OPINION3 子どもも人事もビジネスパーソンも 戦略的に遊び、想定外の場で 「情報編集力」を鍛えよ

前ページまでに、人工知能や脳神経科学の視点から、
後の変化の予測と、組織と個人が準備・対応できることを見てきた。
同じことを、ビジネスの世界から教育界に転身し、
学校教育の改革に取り組む藤原和博氏はどう見ているのか。
子どもたちや、今を生きる我々が、どういう姿勢で、どういう能力を高めるべきか。
また、企業の人事・人材開発部門ができることについて聞いた。


藤原和博(ふじはら かずひろ)氏
奈良市立一条高等学校 校長/教育改革実践家

1978 年東京大学経済学部卒業後、リクルート入社。元同社フェロー。東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任。03 年4 月から杉並区立和田中学校に都内では義務教育初の民間人校長として就任。08 年から橋下大阪府知事、14 年からは佐賀県武雄市の特別顧問を務めた後、16 年より現職。『35 歳の教科書』(幻冬舎)、『10年後、君に仕事はあるのか?』(ダイヤモンド社)など著書多数。また、この10 年で400回以上、企業や公的機関で研修や講演を行う。

[取材・文]=渡辺清乃 [写真]=編集部

ピコ太郎と教育改革

今後10 年以内の変化で一番、国際社会にインパクトがあるのは「世界50億人がスマホでつながること」である。ジャスティン・ビーバーのツイートで世界中で大ブレイク。その年のうちに紅白出場というピコ太郎現象が、スマホで人間の脳がつながり始めたことを象徴している。言葉の壁を越えて世界中が交流できる日も近い。そこにAIや、ネットと接続したロボットがつながったら、世界の半分以上がネット内に構築され、子どもたちは人生の半分をネット内で過ごすことになるだろう。

教育界もそうしたAI 時代を見据えて、改革を行っている。2020 年には大学入試制度が変わる。数学・国語で記述式の問いが導入されることになったが、これは知識だけでなく、思考力・判断力・表現力を測れるようにするのが狙いである。

教育政策の世界標準を追究するOECD(経済協力開発機構)も、今後は考え方、創造性、批判的思考が問題解決の鍵となることや、ICTを含めた他者や世界と関われる力の教育が大切だと呼びかけている。

■生きる力の三角形

そんな中、僕自身は、校長を務める一条高校などで「よのなか科」という授業を行いながら、子どもたちの「生きる力の三角形」(図1)を育んできた。これらの力はもちろん、ビジネスパーソンにも同様に大切である。

土台は体力や精神力、集中力といった「基礎的人間力」。左上には「情報処理力」。狭い意味での基礎学力で、「1人で速く正確に情報を処理できる力」である。そして右上には、正解がひとつではない問題を解決する「情報編集力」を置いている。

情報処理力は知識のインプット、情報編集力は学んだことを駆使してアウトプットすること。言い換えれば、処理力は頭の回転の速さであり、正解を探す「ジグソーパズル型学力」で、編集力は頭の柔らかさであり、世界観を生み出す「レゴ型学力」ともいえる。

これまでの学校教育は、教科で点数がとれる情報処理力重視だった。三角形の要素はどれも重要だが、複雑で正解が見えないAI 時代においては、特に右上の情報編集力をどこまで高められるかが鍵を握る。

情報編集力5つのリテラシー

その情報編集力を構成するのは、図2の5つのリテラシーである。

例えば、「今、これがAという状態なら、次はBになるのではないか」というシミュレーション・リテラシーや、他者の立場に立ってロールプレイができる力、などである。

これらを身につけるには、知識のインプットではなく、「想定外の事象にどれほど対応したか」という経験の積み重ねが効く。子どもたちはこれを、例えば「6 年生だけで遊ぼうと思っていたら2年生の弟がついてきて、仲間に入れるなら遊びが限られる。どうするか」などと、遊びの中の状況対応で身につける。だいたい10歳までにたくさん遊ばないとこの力は身につかないのだが、10 歳を過ぎた場合には留学を勧める。親元を離れた不便なところに追い込まれることが必要なのである。

企業で情報編集力を高める方法

■効率化し、環境を整える

2020 年代のある時から、AIやロボットの導入コストが下がり、代替される仕事がたくさん生まれていくだろう。それまで、企業内で「特別な人材にしかできない」と思われていた仕事にもその波は容赦なく押し寄せる。情報処理側の仕事は徹底して機械化し、人間は情報編集側―クリエイティビティやイマジネーションが必要な仕事や、「正解」ではなく、自分も他者も納得できる「納得解」を導き出す仕事にシフトさせていかなくてはならない。

そのために、まず組織ができることは、情報処理をICTで合理化・効率化したうえで、従業員のパワーをなるべく情報編集力に注げる環境を整えること。そうして、さらなるコストダウンやスピードアップ・新規事業のアイデアなどを生み出し、付加価値を上げることを狙う。

■ブレストで育む

具体的に情報編集力を高める方法もある。「10 年後、あなたの仕事はあるか」をテーマにワークショップを行うのだ。やり方はいたってシンプル。以下の3テーマについて、4~5人1組で対話を行う。

1)当社でなくなる仕事/なくさなくてはいけない仕事は何か?

2)当社でなくなりにくい/残る仕事はどんな仕事か?

3)新しく生まれる仕事は?

それぞれのテーマ別に、まずは個人ワークで付せんにキーワードを書き出す。それからチームで、皆の付せんをA3 程度の白紙に並べ、グループ分けして名前をつけていく。

こちらはJ.H.倶楽部会員限定記事です。
ご入会後、続きをお読みいただけます。

残り:1,944文字

/

全文:3,888文字

【入会・年会費無料】

J.H.倶楽部は人事の仕事に役立つ特典が満載です!

  1. 総数2000本以上の人事の実務に役立つ記事(※)が閲覧可能
    ※専門誌『Learning Design』(旧『人材教育』)の記事
  2. 新サービス・お役立ち情報(調査報告書・ホワイトペーパーなど)の先行案内
  3. 会員限定セミナーへのご招待/講演動画・配布資料の閲覧
  4. 興味関心に沿った必読記事を、メールマガジンでお知らせ!