J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2017年09月号

CASE 2 Dell EMC 自由と変化を楽しみ、経験を活かせ 「どんな姿勢で、どう行動するか?」 カルチャーが染み込む育成術

DellとEMCの統合で誕生した米Dell Technologiesは
7つのブランドを展開中だ。PC、サーバー、ストレージ、ビッグデータ、
セキュリティー、クラウドサービスと事業分野も多彩。
日本法人のDell EMCでも、事業拡大に伴い中途採用に力を入れる。
人材の流動性の高い外資系IT 業界で、いかに社員の心を束ね、
自社に定着させるか。あの手この手の取り組みを取材した。


武藤直子氏
Dell EMC(デル株式会社)人事本部長

Dell EMC
2016 年9月、DELLとEMCの統合により、DellTechnologiesが誕生。PCやサーバーの「Dell」、ストレージの「Dell EMC」、ビッグデータの「Pivotal」、セキュリティーの「SecureWorks」、「RSA」、クラウドサービスの「Virtustream」、仮想化ソリューションの「VMware」の7ブランドを展開する巨大企業に。日本法人はデル、EMCジャパン(Dell EMC)、SecureWorks の3社。
従業員数:2550人(2017年7月現在)


[取材・文]=村上 敬 [写真]=編集部

●前提 統合で高まる人の需要

2016 年にDellとEMCの統合で誕生したDell Technologies。両社の統合は大きなシナジーに結びつき、グループとしての成長にドライブがかかることが予想される。急伸する事業に人材が追いつかずに、事業にブレーキがかかることがあるが、同社はそれを避けるために現在、人材への投資を増やしている。日本法人であるDellEMCの積極的な中途採用も、その一環だ。

社員約2550人のうち、直近1年間で入社した中途採用者の割合は17%(2017年6月22日現在)。ほぼ6人に1人という計算だ。人材流動化が進んだ外資系企業においても比較的高い割合といえる。

もちろん力を入れているのは中途採用だけではない。人事本部長の武藤直子氏は次のように明かす。

「創業者で会長兼CEOのマイケル・デルは、新卒採用をグローバルで全社員の25%まで引き上げる、と言っており、日本でも今後増やしていきたいと考えます。ただ、欧米のように通年で新卒採用しているわけではないので、同じようにはいきません」(武藤氏、以下同)

新卒採用は毎年20人前後だが、中途はその20 倍以上の人数を採用しており、現時点では開きが大きい。当面は中途採用が中心になりそうだ。では、彼らをどのように育てているのか。次から、同社における多様な育成の仕組み(図1)を見ていこう。

●フォロー体制 研修、コーチ、バディで支える

中途採用の大半は営業職だ。技術的経験を活かす営業、エンジニアのサポートをする営業、パートナー経由の販路を担当する営業、電話応対による内勤営業など、職種は細分化されている。

採用方法は主に2パターン。欠員補充と、事業拡大に伴う増員である。欠員補充の場合は、具体的なポジションに空きが出てから募集をかける。

事業拡大に伴う増員もかなりピンポイントだ。他の多くの日本企業のように、大量に採用してから入社後に適性を見極めて配属を決めるのではなく、「担当する業界はここ、職種はこれ、役職はこれ」というように、戦略を立てて採用する。したがってその業種や職種、役職の経験者が採用されるケースが多い。それもあって、中途採用者の平均年齢は36歳と高めである。

■1カ月間のトレーニング

このように即戦力化を意識した中途採用を行っている同社だが、研修は基本的に1カ月間と、みっちり行う。

「最初の2週間はグローバル共通のコンテンツでトレーニングを実施し、次の2週間は担当する業界やお客様に特化したトレーニングを、配属先の部署主導で行います。その後、実際にフィールドに出て仕事をしながら覚えてもらいます。その際、上司の他、バディという2、3年上の先輩がつき、分からないこと、悩みごとの相談に乗ります」

内勤営業の場合は、電話応対の未経験者も採用するため、上記の研修後、中途採用社員3〜5人にコーチが1人ついて、仕事を教えていく。期間は5カ月間。毎日1時間程度のミーティングを行い、時には実際に顧客と電話で話した録音音声を聞いて指導をしたり、実際に商談中のメンバーの隣でアドバイスを行って、お客様との商談を進めていく等のOJT指導もする。

●マインド面 カルチャーギャップ超える教育

前職で経験を積んだ中途採用社員は知識やスキルの面でつまずくケースは少ない。心配なのは、カルチャー面である。というのも、中途社員の大半は、日本企業出身者のため、外資系企業ならではの仕事の進め方や慣習に戸惑うことが多いからだ。

「よく聞くのは、“スピードの違い”です。当社では、基本的に1日ごと、少なくとも週に一度は営業の進捗状況を上司が細かくチェックします。『前の会社では半年から1年かけて顧客と関係づくりをしていて、その間、進捗も問われなかったのに』と、違いに驚く中途社員もいるようです」

変化についての考え方も、中途社員がギャップを感じやすい点だ。

「Dell EMC では、お客様や市場に変化があれば、それに合わせて躊ちゅうちょ躇なく組織体制や仕事の進め方を変更します。こうした大胆な変化にワクワクできそうな人を採用していますが、めまぐるしく変化する環境では落ち着かない、もっとどっしり構えて仕事をしたい、と感じる人もいるでしょう」

■パーパスとカルチャーコード

カルチャー面のギャップを埋めるうえで重要な役割を果たしているのが、評価軸ともなっている「パーパス(目的)」と「カルチャーコード」だ。

同社のパーパスは、「人類の進化を牽引するテクノロジーの創出」。一方、全社員が身につけるべき価値観であるカルチャーコードは、「お客様」「共に成功する」「イノベーション」等、多岐にわたる(図2)。

「いずれも当社の文化として社員の意識に染みついています。もちろん、結果も重視しますが、パーパスとカルチャーコードにそぐわない方法で、利益に飛びつくようなことはしません」

どの会社も、経営理念や行動指針は持っているだろう。だが、実際のところ、中途社員は即戦力と捉えられ、すぐ結果を出すことを求められがちだ。同社では、その前にどんな仕事の姿勢を持ち、どう行動すればよいかをしっかりと意識づける。そのために、中途社員がパーパスやカルチャーコードに触れる機会は何度でも設ける。

最初は内定時。採用が決定すれば、入社前にオンラインで計約1時間のトレーニングを行う。会社の概要を知ってもらうための研修だが、この段階で、パーパスとカルチャーコードもしっかり伝える。

入社後は、毎月初めに開かれるニューハイヤーオリエンテーションに参加してもらう。その月に入社した人を集め、会社のことを知るセッションをクラスルーム形式で行う。ここでもパーパスやカルチャーコードについての解説がある。

配属後もマネジャーとの「1on1ミーティング(面談)」でパーパスやカルチャーコードについて、何度となく話し合う。

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