J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2017年09月号

巻頭インタビュー 私の人材教育論 働き方が多様化する今こそ 仕事の作法と会話を大事に

「こころを動かす空間づくりのプロフェッショナルであり続ける」。
人と人、人とモノ、人と情報が行き交う空間を創造する丹青社は、
飲食店から病院、ホテル、博物館まで、
幅広い案件の調査・企画、デザイン・設計、
そして、制作・施工、運営を手掛ける。
卓越したセンスや設計技術、
多様な専門家とコラボする“総合力”をどう育んでいるのか。
独自の手法で体験を積ませるという、
同社の育成方針を取材した。


高橋貴志(Takashi Takahashi)氏
丹青社 代表取締役社長
生年月日 1955年9月9日
出身校 都立工芸高等学校

主な経歴
1974年 4月 丹青社 入社
1999年 6月 執行役員 制作統括部 公共空間制作1部長
2010年 4月 取締役執行役員 商業空間事業部
プロダクト統括部長
2013年 2月 取締役 デザイン・制作全般
及び品質、技術、安全、協力会社担当
2015年2月 取締役常務 デザイン及び制作全般担当
2016年2月 取締役副社長
2017年 4月 代表取締役社長
現在に至る

企業プロフィール
丹青社
設立は1959年。戦後活気づく百貨店の店内装飾を東京・
上野で手掛けたことから事業をスタート。以来、エポックメ
イキングな空間創造に多数携わりながら、「こころを動かす
空間づくり」への取り組みを続けている。
資本金:40 億2675万657円(2017年1月31日現在)
連結売上高:707億8100万円(2017年1月期)
連結従業員数:1131名(2017年1月31日現在)


インタビュー・文/村上 敬
写真/中山博敬、丹青社提供

インバウンドを追い風に業績好調

―2017年1月期決算は増収増益でした。好調の要因は何でしょうか。

高橋

当社は店舗等の商業空間、博物館等の文化空間、展示会等のイベント空間と、人が行き交うあらゆる空間づくりの課題解決を事業として展開しています。前期は中期経営計画3カ年度の2年目でしたが、おかげさまで目標を1年前倒しで達成できました。経済状況が全体的に良かったことが追い風になりましたね。中でも、ホテルなどのサービス分野が好調でした。インバウンドの効果でしょう。今期は計画を上方修正して、過去最高益をめざしています。

―従業員数の伸びも好調の要因と言えますか。

高橋

確かに、新入社員は毎年30人以上入社している一方、離職率は低下しているため、人員は自然増です。ただし、売上が伸びているのは、量より質の向上の賜物でしょう。制作部門であれば資格取得に励み、デザイン部門ならばデザイン力を磨くなどして、みんな実力アップに励んでいます。全体に人材の質が底上げされつつある、という実感がありますね。おかげで、一人ひとりが手掛ける案件の規模が大きくなっています。

異分野との交流が人を育てる

―改めて、貴社の人材面での強みとは。

高橋

高い専門性と、それをうまくコラボレーションできる総合力です。社内には博物館を長年手掛けている人間もいれば、飲食店のプロフェッショナルもいる。各分野のエキスパートたちが、分野を越えて刺激し合い、より良いものをつくり出しています。

―社員の皆さんは人事ローテーションによってさまざまな分野を経験し、ネットワークを広げるのでしょうか。

高橋

職種別採用制を採っているうえ、高い専門性を基に何年もかけて1つのプロジェクトに携わる場合もあります。頻度の高いローテーションというよりも、いろいろな意見を取り入れる風土、仕組みが大きく影響しているように思います。今年度には、当社のトップデザイナーを中心に構成したクリエイティブ局を新設しました。各部門横断の中心にあり、全社の知恵とノウハウを縦横に組み合わせることで、連携を強化しました。横串を通すというより、輪でつなぐイメージ。社内では「クリエイティブ・リンク」といっています。

―普段のお仕事の中で、異なる分野の人材が交流する機会はありますか。

高橋

近年は複合的な施設が増え、自然と交流が生まれやすくなっているように思いますね。例えば2013年、東京駅前の中央郵便局跡にできたJPタワーの「KITTE」には、商業施設だけでなく、東京大学との産学連携による博物館が併設されています。このような総合力が求められる空間づくりに携わるにあたっては、異なる畑の人間同士のチームワークが不可欠です。

分野をまたいだ交流という意味では、「社内カンファレンス」が果たす役割も大きいです。お客様への提案内容は、事前に社内でレビューするのですが、その際、違う分野の社員も参加して提案内容を検討します。すると、内容はもちろん、プレゼンのやり方自体も変わっていく。

そもそもプレゼンの手法もさまざまで、例えば資料をびっしり揃えることもあれば、CGや映像を使って短時間で分かりやすく伝える工夫をすることもあります。社内カンファレンスで意見を交換し、違うやり方を知ることで、新しいアプローチを発見するようです。

実は当社は2015年にオフィスを移転しました。以前はビルが2 棟17フロアに分かれており、事業部門が分散していましたが、今回の移転によりワンフロアに集約しました。社員が集まりやすくなったことで、分野をまたいだ交流が頻繁に行われるようになりました。

センスは経験を積むことで磨かれる

―デザイナーの育成についてお伺いします。デザインのセンスは本人の資質によるところが大きいと思いますが、デザイナーの創造性はどうやって伸ばしているのですか。

高橋

センスを磨くには多くの知見に接し、経験を積むことが大事です。そこで、オフィスに著名なクリエイターを定期的に招き、トークセミナーを開催しています。また、セミナー終了後には、社内のデザイナーが交流できる場をつくっています。また、国際的な家具の見本市である「ミラノサローネ」に、若手を派遣して勉強させています。

デザイナーにはセンスだけではなく、知識のアップデートも求められます。映像を壁やモノに投影する映像・演出技術、プロジェクションマッピング等も、まさに日進月歩で技術革新が行われていますし。いろいろな事例を社内イントラネットで紹介し、新しい技術を学べるようにしています。

さらに付け加えれば、提案力も不可欠ですね。卓越したヒアリング力でお客様が真に求めているものを洞察し、期待を上回るものを提案していく。これは若手がすぐにできるようなことではないので、OJTで磨いていくしかないでしょう。

―制作部門の方はどう育成されていますか。

高橋

建築に関連した法律やルールは変わっきており、安全に対する要求も年々高くなっています。こうした変化に対応するために、施工管理技士や建築士といった資格の取得を支援しています。専門学校などの学費は、合格すれば大部分を会社が負担。独学で取得した場合は奨励金を出しています。大体何年目くらいまでにどの資格を取るべきかという目安を設けて、社員はそれを目標に日々勉強しています。建設業法で定められた公的資格の取得者は329名です(2017年1月31日現在)。

新人研修で実際にものづくりに挑戦

―ユニークな新人研修を行っているそうですね。どのような内容でしょうか。

高橋

新入社員教育の一環として、2005年から「人づくりプロジェクト」を行っています(19ページ上写真)。プロダクトを実際に自分たちの手でつくり上げてもらう実践型研修で、“ものづくりを通した人づくり”の取り組みといえるでしょう。

期間は、入社直後の基礎研修終了後から配属までの約100日間。新入社員全員が2~ 3名ずつの班に分かれてプロダクトを完成させます。営業やデザイナーといった職種に関係なく、プロダクトのコンセプトを考え、それを図面に落とし、予算と工期を考えながら制作を進めます。完成したプロダクトはそのプロセスで得た学びと共に役員へプレゼンしたり、ギャラリーで展示したりします。

―この研修の狙いは。

高橋

全体のプロセスを学べることが大きいです。先述の通り、当社は職種別採用ですが、配属前に全体の流れを経験しておけば、自分の仕事が全体の中でどのような役割を果たすのか理解できる。現場に早く配属してしまうよりも、長い目で捉えた時に、この学びは必ず活きると考えています。

“仕事の作法“を学んでもらうことも目的のひとつです。このプロジェクトには、第一線で活躍するデサイナーや一流の職人に参加いただいています。新入社員は専門家たちとコミュニケーションをとりながらプロジェクトを進めていきますが、この時、彼らと関係を築いてお互いの持てる力を最大限に引き出せなければ、いい成果物は生まれません。多様な人材の考え方や能力を活かし、ゴールへと結びつけていく。これこそ、当社の仕事において、最も重要な作法と考えます。

―初めての経験で、うまくいきますか。

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