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月刊 人材教育 2017年09月号

人材教育 The Movie ~映画でわかる世界と人~ 第59回 「モダン・タイムス」川西玲子氏 時事・映画評論家

「モダン・タイムス」
1936年 アメリカ 製作・監督・脚本:チャールズ・チャップリン

川西玲子(かわにし れいこ)氏
1954年生まれ、メディア・エンタメ時評。中央大学大学院法学研究科修士課程修了(政治学修士)。シンクタンク勤務後、企業や自治体などで研修講師を務めつつ、コメンテーターとして活動。著書に『映画が語る昭和史』(武田ランダムハウスジャパン)、『戦前外地の高校野球 台湾・朝鮮・満州に花開いた球児たちの夢』(彩流社)等。



『モダン・タイムス Modern Times』
発売元・販売元:KADOKAWA
価格: DVD 3500 円+ 税 好評発売中
文明という名の機械化の波が押し寄せてきた1930 年代。工場で
働くチャーリーは、ベルトコンベアで次々送られてくる部品にスパナ
でネジを締めていた。ところが絶え間なく運ばれてくる部品を見てい
るうちに、彼の頭はだんだんおかしくなっていく。チャップリンが機
械文明に対して痛烈な諷刺を込めて描いた作品。
©1936 Roy Export S.A.S. All Rights Reserved.
Renewed Copyright ©1963 Roy Export S.A.S. All Rights Reserved. Photos©Roy Export S.A.S.

人生における仕事の意味、人間にとっての仕事の意味が、今ほど至るところで語られる時代はない。仕事が持つ比重が、かつてないほど強まっているのである。仕事は今、人間にとって生業以上の多様な意味を持つようになった。仕事は人格形成の手段であり、人間として必要な能力を磨く機会であり、人間として輝くための必須条件となっている。

その一方で、仕事が関係して起こる問題は後を絶たない。社会の変化が速く、時代についていくだけで大変だ。働く人には高い能力が求められるし、人間関係などで心身を病む人も多い。これからは、ロボットや人工知能とも競争しなければならない。

実は、こうした問題が起きるようになったのは社会がモダン・タイムス、つまり近代に入ってからなのである。産業革命が機械化と大量生産を可能にし、人々が自然から離れて会社で働くようになった時から、仕事をめぐる問題が生まれてきたのだ。だからこの問題を考える際には、歴史的視野と人文的素養が欠かせない。

私が若い時に最も影響を受けた本の一つに、バブル期に読んだ『「近代」の意味―制度としての学校・工場』(桜井哲夫著、NHKブックス)がある。自分がどういう時代に生きているかが分かって、まさに目から鱗が落ちたような思いだった。私にとって、その映画版とも言うべきものが『モダン・タイムス』だったのである。

○天性の才能で描く近代社会の問題点

この映画は喜劇王チャップリンが、大恐慌をようやく乗り越えたアメリカを舞台に1936 年に製作し、日本でも2年後に公開されている。他の作品同様、製作・監督・脚本・主演を1人でこなし、音楽も共同で作曲し、天才的としか言いようのないリズム感と運動神経を駆使して、近代社会が宿命的にはらんでいる問題を提起している。

チャップリン演じる主人公は工場で毎日、ベルトコンベアで流れてくる部品についているネジを、スパナで止めるという作業を繰り返している。経営者はモニターで工場内をくまなく監視し、絶えず作業のスピードを上げることを求めてくる。そういう仕事を続けるうちに、主人公はついに神経に変調をきたして精神科病院に入ることになってしまう。

ようやく退院したものの、不運続きで仕事が続かず街を放浪する。そんな時に貧しさからパンを盗んだ少女と知り合い、彼女と暮らすために一念発起。また仕事を見つけるが、なかなかうまくいかない……というストーリーである。

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