J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2017年08月号

社労士が斬る イマドキお悩み相談 第29回 ワークライフバランス時代の労働時間管理

働く人の価値観の多様化から「働き方」も変化し、現場の管理職の悩みも“イマドキ”なものになってきています。
そんなイマドキな悩みの解決方法を、社労士の藤原先生が紹介します。


藤原英理(ふじわら えり)氏

あおば社会保険労務士法人代表。東京大学大学院修了後、大手製薬会社で研究職に従事。93 ~97年米国在住。帰国後、2000年大手証券会社に入社。社会保険労務士、CFPの資格取得。03年に独立、04年から現職。

[文] = 柳本友幸 [イラスト] = 秋葉 あきこ

第29回 転職社員が持つ情報は活用できない?

競合企業からヘッドハントした中堅社員が活躍している。個人としてはもちろん、会社全体の業績向上にも貢献してくれている。ところが、前職の競合企業からその社員宛てに、営業妨害ではないかという旨の連絡があったようだ。前職の経験を活かして活躍すること自体に問題があるとは思えないが、トラブルになっても困る。どうすればいいだろうか。

前職の競合企業が損害を被る?

人材の流動性が高まり、競合する企業間での転職は一般的になってきました。情報や人脈の重要性が高まるにつれ、転職者が前職で身につけた情報やノウハウ等が転職先の企業にもたらすメリットも大きくなっています。

一方、こうした情報等の活用が以前に在籍していた企業に損害を与えるケースもあるようです。しかし一般的に、労働者は勤務する企業を自由に退職し、他企業に転職することが認められていますから、転職によって元いた企業に損失が出たとしても、それはその企業が自助努力によって回復すべきものとされています。したがって、競合会社からヘッドハントした人が活躍して、結果的に元いた企業が損失を被ることになっても、そのこと自体が即座に問題視されることはありません。では、問題になるのはどんなケースでしょうか。

法律的な論点は

問題となるのは、個人情報保護法と不正競争防止法という2つの法律に抵触する場合です。

個人情報保護法は、元の企業から持ち出した情報のうち、特に個人情報を対象にしたもので、刑事罰の適用があります。個人情報を取得する際には取得経緯を明らかにする必要がありますので、法律にのっとって個人情報を管理している会社であれば、仮に元いた企業の個人情報を転職先の法人の個人情報データベースに登録しようとしても、その時点で取得経緯が不正なものであると分かるはずです。

また、不正競争防止法では、故意に営業秘密情報を持ち出して商品形態の模倣や営業秘密の侵害を行った場合に発生した損害について、法律で定められた推定に基づく損害額の賠償と刑事罰を負わせる、としています。例えば、ヘッドハントした人材に、元いた競合企業の秘密事項を持ち出すよう指示し、その情報を用いて類似商品を開発して販売した場合には、その類似商品販売による利益額が損害額とされ賠償責任を負うほか、個人と法人に刑事罰が適用される可能性があります。

不正競争防止法は、損害額を一定のロジックで推定して算出できることが特徴であり、通常は立証が難しい損害額を確定させることで、営業秘密を使って利益を得た企業に対してより懲罰的な内容になっています。ただ、前職で知り得た情報やノウハウが全て秘密情報と見なされてしまっても困るので、秘密情報と見なされる条件を定めています。具体的には、「秘密として管理されていて」「その情報に事業上の価値があって」「公然に知られていない」情報が、営業秘密と見なされます(2017 年4月号・第25 回参照)。

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