J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2017年08月号

寺田佳子のまなまな 第20 回 小学校栄養士 松丸 奨さんに聞く 全力を注ぐ給食づくり

今回の「まなまな」のお相手は、小学校で栄養士として働く松丸奨さん。
おいしい給食をつくるため、並々ならぬ熱意で日々研究を重ねる熱血漢です。
そのこだわりの強さは、「給食バカ」を自称するほど!
「給食なのに、なぜそこまでするんですか?」
その答えは、松丸さんがつくるおいしい給食そのものにありました。

松丸 奨(まつまるすすむ)氏
東京都文京区立金富小学校栄養士。華学園栄養専門学校を卒業後、栄養士として千葉県内の市立病院に勤務し、病院食の献立作成や栄養管理に5年間携わる。2008 年より文京区立青柳小学校、2016 年からは文京区立金富小学校に勤務。第8回全国学校給食甲子園優勝。モットーは、「食事は子どもたちの夢や未来をつくる」。

寺田佳子(てらだよしこ)氏
インストラクショナルデザイナー、ジェイ・キャスト常務執行役員、IDコンサルティング代表取締役、日本イーラーニングコンソシアム理事、IT人材育成事業者協議会理事、熊本大学大学院教授システム学専攻講師、日本大学生産工学部非常勤講師。著書に『学ぶ気・やる気を育てる技術(JMAM)など。https://www.facebook.com/InstructionalDesignConsulting/

「チーム給食室」を率いる!

東京都文京区の金富小学校にある、空き教室を利用した「ハッピーレストラン」。そのかわいいランチルームで、巨大なオタマを持ち、「400 人分の給食って、こんなふうに調理するんですよ」とポーズをキメるのは、今回の「まなまな」のお相手、栄養士の……というより“給食室の先生”として子どもたちに親しまれる松丸奨さんだ。それにしても、壁いっぱいに飾られたおいしそうな給食の写真といったら! ハート型にソースをかけたコロッケや、星形のゼリーが散った七夕のおそうめん、フルーツのカラフルな盛り合わせまで。こんなにハッピーな給食の世界は、いったいどんなふうに生まれるのだろう。

松丸さんの1日は午前3時半に始まる。毎朝4時半の始発電車に乗って、5時半には学校へ一番乗りだ。

5時半! いったいなぜ、そんなに早く学校へ?

「6時過ぎに配達に来る業者さんたちと、顔を合わせて話がしたいからなんです」

食材は調理員が受け取れば、それで済む。しかし、「きのうのリンゴ、とっても甘いって、子どもたちが大喜びでしたよ」と一言お礼が言いたい、子どもたちの笑顔を届けたい、そして業者さんも「チーム給食室」の大切なメンバーだと思っているキモチを伝えたい。だから早朝の「顔を合わす時間」を大切にしたいのだ。

6時半に7人の調理員がそろうとさっそく作業開始。まず、昆布・鯖節・鰹節で「出汁」をとることから始める。

そこからですか、給食づくりは!?

「そこからです(笑)。子どもが苦手な野菜も、コクのある出汁で調理すれば素材の旨味が活きて、塩分が少なくてもおいしくなるんです」

調理員さんに献立表を渡し、「よろしくお願いします」と言えば済むことかもしれない。けれど松丸さんは、「給食室は“ごはんをつくる工場”じゃありませんから」と、ここでも調理員との「顔を合わす時間」にこだわる。

「ボクのレシピは手間がかかる。調理員さんがご苦労されているのが分かるので、『チーム給食室』の先頭に立って頑張らないと申し訳ないんです」

寝ても覚めても“給食”漬け

さて、こうして6時間近くかけてつくった給食は、12 時過ぎから各教室に配膳される。

ふぅ、やれやれ、ひと段落……。

かと思ったら、とんでもない! ここからが松丸先生のダッシュの時間。小さな1年生の教室に登場して盛りつけを手伝ったかと思うと、給食が終わる12 時40 分までに、なんと全学年全クラスをくまなく回る。

全クラス、ですか!?

「ええ、全クラスです。子どもたちがどんな表情で食べているのか、顔を合わせて確かめたいので」

松丸さんが姿を現すと、「あっ、給食室の先生だ!」「またビスキュイパンつくってぇ~」とにぎやかになる。

それに応えて、「かわいく盛りつけできたね」「全部食べられて偉いね」と褒めながら、「このカレー、1年生には辛過ぎかな?」「麻婆豆腐のお豆腐、大き過ぎて口に入れにくそうだな」とチェックする。給食の先生になりたての頃は、こんな習慣はなかった。しかし、残食(食べ残し)を減らし、給食をもっと楽しくするには、子どもたちとの「顔を合わす時間」もかけがえがないと考えるようになった。

午後は残食量のデータ整理や献立づくり、会計作業、食育授業、給食委員達との会議、手書きのレシピの作成……。気がつくと夜、ということも少なくない。帰宅後もレシピの試作や試食で、結局寝るのは深夜11 時、12 時に。

「寝ても覚めても給食のことばかり考えている“給食バカ”なんです、ボク(笑)」

食材のため、農家の手伝い!?

そんな「給食バカ」の松丸さんには、どうしても挑戦したいことがあった。全国から2000を超す学校が応募する「全国学校給食甲子園(以下、給食甲子園)」である。栄養士と調理員がペアを組んで競うこのコンテストは、文部科学省学校給食摂取基準に沿った献立であることはもちろん、おいしさや調理の技術、食材ごとにエプロンを取り替え手洗いをするなどの衛生管理、さらにはチームワークもチェックされる、非常に厳しい大会である。

なぜ、給食甲子園に応募を?

「“郷土料理の素晴らしさを伝える”ことが給食甲子園のコンセプト。郷土料理がないと思われている東京にも、『江戸東京野菜』と呼ばれる食材があり、素晴らしい伝統料理があることを、子どもたちに知ってもらいたかったのです」

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