~強みを活かし、価値を生み出す~
“学ぶ・働く”を高めるエンゲージメント
近年一層重要性を増す「エンゲージメント」。どのような学びがエンゲージメント向上を促し、仕事に結びついていくのでしょうか。2022年11月29日に行われた本セミナーでは、人的資本経営がうたわれる今の時代のエンゲージメントの在り方について考えます。
こんな方におすすめ
- 従業員のエンゲージメント向上を果たすための考え方や事例が知りたい方
- エンゲージメント向上と人的資本経営をどう結び付けていけばいいかが知りたい方
- エンゲージメントサーベイの活用方法を知りたい方
登壇者プロフィール
石山恒貴(いしやま のぶたか)氏
早藤 努(はやふじ つとむ)氏
セミナー動画
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セミナーレポート
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Ⅰ.従業員の強みを向上させるエンゲージメント施策とは
―人的資本との関連―
●株主資本主義とステークホルダー資本主義
最近よく言われる「人的資本経営」は、大きな流れとして「株主資本主義」の対極として提唱されるようになった、「ステークホルダー資本主義」の考え方が関係しています。
20世紀でもっとも影響力のあった経済学者の一人であるミルトン・フリードマンは、「企業の社会的責任とはただひとつ、利益を増やすこと」であると言いました。CSRは推進するべきではないという考え方です。
しかし、果たしてそうなのでしょうか。近年、コロナ禍を経験し、さらに「持続性」が問われている状況を考えると、企業の存在意義とは単に利益を増やすことではなく、地域社会、顧客、従業員、サプライヤーなどすべてのステークホルダーに対して価値を生みだすことにあるというのは誰もが理解していると思います。世界経済フォーラムの「ダボス・マニフェスト2020」でも、株主資本主義の行き過ぎにより持続不可能なほど格差が広がってしまい、社会自体が成り立たなくなっているといった議論もされていました。
一方で、グリーンウォッシュ(環境に熱心なふり)やウォークウォッシュ(倫理観や価値観が高いように見せかけること)と言われているような形骸化も指摘されています。
こうしたなか、日本では昔から言われている、「売り手よし、買い手よし、世間よし」という「三方よし」の考え方があります。三方よしは、日本は元々ステークホルダー資本主義に近いことを実践しているかもしれませんが、それで完璧かというとそうではありません。たとえば「売り手よし」の場合、「会社」と「社員」の区分が曖昧です。これだと、社員をステークホルダーとして見る観点が弱いとか、同質性が強すぎて外部との交流が弱いといったデメリットにつながってしまうと思います。つまり、欧米型のステークホルダー資本主義と、日本型の三方よしのどちらが良いのかは単純に比較できないのです。
●人的資本経営と「伊藤レポート」
そんな流れもあり、ステークホルダー全体に価値を発揮するために人的資本経営が大事だという考え方から、欧州が発信地となってISO 30414が整備されます。
ISO 30414の項目はかなり幅広く、多様であるというのが実態です(図表1)。こうしたなかで日本では2020年5月に、「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会 報告書」(人材版伊藤レポート)が発表されました。さらに、2022年5月に「人材版伊藤レポート2.0」が発表されました。
「人材版伊藤レポート2.0」には、環境問題を含む企業の持続可能性という観点から人的資本、人材戦略というテーマが謳われ、さらに「経営陣/取締役会」「積極的対話」「個の自律・活性化」「選び選ばれる関係」といったことについても言及しています。
また、経営陣でもCHRO(最高人事責任者)とよばれる人事部門のトップがリーダーシップを発揮していく必要があるとしています。今まで人事部門は経営陣のなかでリーダーシップを発揮する存在というよりは、守りの存在としての役割が大きかったのですが、そうではないというメッセージです。そして、今日のテーマとも関連する経営戦略と人材戦略の連動や従業員エンゲージメントの向上についても書かれています。コーポレートガバナンス・コード(企業統治)の観点からも、人的資本という「人」の在り方を、自社の経営戦略や経営課題と連結して考える必要があるということです。
●企業と投資家の対話の在り方とは
ただし気をつけたいのは、「人的資本」はバズワード化する危険があるという点です。ISO 30414は確かに重要ですが、幅が広すぎるし、測定や説明だけが目的化してしまう危険性があると思います。そうなっていくと、標準化と簡素化が進んでしまい、女性管理職比率や人的資本経営に必要な「あんな施策」「こんな施策」に取り組んでいますといったボックス・ティッキング(ルールやガイドラインに従うことだけに時間を費やすこと)になりかねません。最悪の場合、データを改ざんするようなことも発生し、実質的な意味がなくなっていってしまうのです。
人的資本経営とは、従来のBSやPLといった有形の財務諸標のような形に見えるものだけではなく、もっと無形な「人」を大事にしようという発想です。
実際、多くの投資家もボックス・ティッキングは無意味だと考えており、エンゲージメントが向上すれば企業価値は向上すると考えています。ハゲタカファンドのような話を聞くと、投資家とは短期利益だけを考えて株を売り抜ける存在というイメージを持つかもしれませんが、実はそういう投資家はむしろ少ないのです。短期利益だけ狙っても長期的な成功は見込めないからで、むしろ長期的な企業価値の向上を評価しているケースが多いのです。経営者側は投資家にわかりやすく説明し、投資家側は企業価値向上に繋がる他社のベストプラクティスを教える。長期的に見るとそういう対話が企業価値の向上に役立つのだと思います。
たとえば、ESGスコアをきちんと情報開示すれば、長期的に見て株価は上がると言われています。するともっとも大事なことは、人事部門のトップであるCHROが、投資家に対して定性的に自社の取り組みの独自性を説明できることになるでしょう。投資家の方のお話を聞くと、人的資本の開示項目は確かに大事だけれども、CHROとじっくり話をして、そのCHROがどんな哲学をもって具体的にどんな取り組みを行っているのかを知ることが大事だと言っています。
●バズワードに踊らされやすい日本の人事
人的資本だけでなく、経営の概念が言葉遊びのようになりつつあることを危惧しています。元々、経営学では「組織が戦略に従うのか」あるいは「戦略が組織に従うのか」といった議論があります。一方、神戸大学で教鞭をとられ現在は大手前大学学長の平野光俊先生は、この議論をもじって「日本の人事は流行に従う」と指摘しています。これは20年前ならば「成果主義を導入すればうまくいく」、現在ならば「ジョブ型さえ導入すればうまくいく」「人的資本経営だけやればうまくいく」といった流行のことだと思います。
本来、成果主義やジョブ型は、きちんとした思想を内包する概念だと思うのですが、今までの人事の仕組みでは、これらを導入してもミドルの労働者の賃金は年功的にならざるを得ず、高止まりした賃金を減らして総額人件費を削減したいという欲望だけが前面に出てしまうのだと思います。
どこか1社が成功すると、他社もそれに追随する。流行している人的資本を導入すれば、企業は劇的に良くなるといった捉え方です。つまり、新しい概念や新しい言葉を打ち出せばなんでもうまくいくという考え方はいかがなものかという指摘です。
エンゲージメントとは言葉遊びではなく、働く人のやる気をどう上げるかが問われるのです。
●日本のエンゲージメントは極めて低い
元々エンゲージメントとは、ボストン大学の心理学者ウィリアム・カーンが1990年に発表した論文の中で、「人が何かに没入して夢中になって行動する」こととして定義したものです。さらに、エンゲージメントには大きく分けて2つあります。1つは、「従業員エンゲージメント」で、これは、会社自体・職務自体に愛着を持っている状態をさします。もう1つは、「ワーク・エンゲージメント」で、仕事そのものに熱意を持っているという状態です。
エンゲージすると、周囲をよく観察しながらも、何かに参画して夢中になっていて、しかも一体感を持ち合わせているという望ましい状態になります(図表2)。
ワーク・エンゲージメントは、9つの項目で測定する尺度があるのですが、日本の場合、国際的に見るとかなり低いという傾向があります。たとえば、2017年に米国ギャラップ社が発表した従業員エンゲージメント調査の結果によると、日本の順位は世界139カ国中132位でした。米国では32%も熱意溢れる社員がいるのに対して、日本は6%しかいないという結果です。さらに、日本は周囲に不満を巻き散らしている無気力な社員が24%、そしてやる気のない社員が70%という結果で話題になりました。
ワーク・エンゲイジメントの得点は欧米の平均は6点満点で4点くらいであるのに対して、日本の平均は2.8から2.9くらいです。6点満点ですから、中間の3点よりも低いということです。
このような結果になった理由としては、日本の職場のマネジメントが、とにかく口応えさせない、部下の強みを考えない、また以心伝心に寄りすぎているということが考えられます。集団の調和を過度に重んじるあまり、「私はこんなにたくさんの仕事をしています」「こんなに嬉しい」という気持ちを言えないから、エンゲージメントはどんどん下がってしまう。エンゲージメントを高めるためには、個人の強みを重視し、「私はもっとこれをやりたい」「これをやったら幸せだ」といった状態を表出してもらうことも大事になってくるでしょう。
●上司がコーチとしての役割を果たせるか
ギャラップ社では、世界1億人を対象に職場のウェルビーイングについて調査しています。職場の「ウェルビーイング」とは、エンゲージメントに近い概念です。ウェルビーイングは、キャリア、人間関係、経済的な安定、健康、良いコミュニティーに属しているといったことが重要なポイントになりますが、従業員エンゲージメントが高い人は、プライベートを含めた生活全体に波及することもわかっています。
なお、調査によると、1日のうちで最悪の時間は「上司と過ごす時間」だそうです。そうなってくると、やはり上司の役割は非常に重要です。本来、上司はボスではなく、コーチとして社員の強みを発揮させる存在なのです。実際、従業員が本当にどう思っているのかを、上司はきちんと把握することが大事になります。
今まで組織は、賞与や人事評価といった目に見えるものによってエンゲージメントを高めようとしていたけれども、上司は従業員の本当に大事にしている気持ちやニーズをコーチとして心から理解する必要がある。それを従業員経験の中で多様な接点を通して理解することが大事だと思います。
一般的にそれを理解するのは、入社時のオンボーディングだけになりがちですが、入社前の面接も重要です。近年は、退職後に会社と関わることもありますから、雇用前・雇用中・雇用後も含めて、「上司がコーチとして私の強みを生かしてくれるか」が問われてくるのだと思います。
人的資本経営においても、エンゲージメントが大事だからといって、エンゲージメントサーベイの数値だけを高めればいいのではありません。それだとボックス・ティッキングに陥ってしまいます。実際の経営戦略とエンゲージメントの向上施策を合致させて、「この会社では上司がコーチになってこんな強みを従業員に発揮させることができるから、経営戦略に役立つよね」といった関係性を示す必要もあるでしょう。そのためには、横並びで他社と同じような施策をするのではなく、それぞれの会社で、それぞれの従業員の真のニーズを理解し、エンゲージメントの阻害要因や従業員の可能性を把握する必要があると思います。
Ⅱ.ソニーの人材マネジメント
~個に寄り添った人材マネジメントとは~
●ソニーグループの概要
ソニーピープルソリューションズは、国内外のソニーグループ各社に人材育成施策を横断的に提供しており、今日はその内容について紹介します。私がソニーに入社して10数年が経過していますが、元々は他社からキャリアをスタートしました。他の組織も経験し、一部コンサルティングを含めて多くの会社様とのお付き合いもありましたので、「外から見たソニー」という視点からもお話しできるのではないかと思います。
まずソニーグループの概要です。現在、約11万人の社員がおり、ゲームから金融に至るまで6つの主要なビジネスセグメントに分かれて事業を展開しています(G&NS、音楽、映画、ET&S、I&SS、金融)。この事業を成り立たせていくうえで、経営戦略として人材の多様性を重要視しています。
●ソニーのコーポレートカルチャーと人事戦略
ではまず、コ―ポレートカルチャーと人事戦略についてです。
ソニーは、井深大、盛田昭夫という二人が創業しましたが、創業の精神として、「自由活達にして、愉快なる理想工場の建設」「一切の秩序を実力本位、人格主義の上に置き個人の技能を最大限度に発揮せしむ」などと謳っています。これは、一人ひとりの多様な人材がうまくかみ合うことによって事業が運営されていくという理念で、このことが創業者によってすでに定義され、今日まで変わらずに社内に浸透しています。
当時の入社式では、盛田の言葉として、ひとたびソニーに入社したからにはしっかりと仕事をしてほしい、ソニーを選んでよかったと思ってほしいといった趣旨の言葉が投げかけられましたが、こういった考え方が代々受け継がれているのです。
現在のソニーグループの吉田憲一郎会長兼社長CEOは、グループのPurpose(存在意義)を「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。」と表現しています。そして、これを成し遂げていくために日々大切にしなければならない4つのValues(価値観)を掲げていますが、その中には多様性も含まれます。このように皆が同じ思いを持って集っているからこそ、多様な事業に集う11万人の社員が、一体となって仕事に取り組んでいるのだと思います。
私は経営サイドの人間ではないので、こうした多様な事業体を束ねていく真の難しさを語ることはできませんが、多様な事業運営をするときには、ステークホルダーの皆様との対話が重要になると思っています。
ソニーグループという事業的にも多様な存在を束ねるものとして、先ほどのようなPurposeとValuesに加えて、人事としても大事にしている理念があります。それは、Sony’s People Philosophyです(図表1)。
Sony’s People Philosophyは、”Special You, Diverse Sony”と定義しています。ソニーグループに集う一人ひとりの社員は特別な存在であること(Special You)、そして、特別な存在である社員の多様な個の力(Diverse Sony)を生かしていくことができれば、多様な事業が有機的に結びつき、11万人のソニーの集合的な力が発揮されるという意味です。これをCHROのメッセージとして、ソニーグループ内外に発信しています。この多様性を引き出すためには、一人ひとりのエンゲージメントが大切になります。
●社員エンゲージメントをもたらす要素
では、社員のエンゲージメントを高める要素とは何でしょうか。
世界各地にある事業体、そして11万人の社員の力を引き出すために、戦略的に人材を獲得していくとともに、その力を生かしていくための育成機会を提供していくこと。さらには、特別な存在としての一人ひとりが持つ個性を引き出しながら、お互いが成長に貢献し合うような関係づくりを目指しています。だからこそ、エンゲージメントを1つの共通指標として大切にしているのです(図表2)。
社員のエンゲージメントの状況は対外的にも公表しています(図表3)。
社員エンゲージメント調査に参加・回答した社員の比率は、2021年の調査では91%、エンゲージメント指標に関しては、社員エンゲージメント設問4問において、非好意的以外の回答をしている社員の割合が89%です。もちろん、対外的にだけではなく、こういった状況を社員にも共有し、これをさらに高めていくためには何が必要なのかを、社員とともに対話しています。
2019年から2021年という期間は、コロナ禍の時期と重なります。世界各地の多様な社員が一堂に集うことが難しい状況の中でも、エンゲージメントを上げることができたのは、①シニアマネジメントによるオープンな情報発信、②多様な働き方へのワークスタイルシフト、③学習を続ける組織、という3つの理由があると考えています。
①は、コロナ禍の中で人の移動が制限されるなか、オンラインでのメッセージングに切り替えたマネジメントチームの決断です。シニアマネジメントによるオープンな情報発信を行い、今起きている状況と、それに対する打ち手をしっかりと社員に発信する仕組みが機能したのだと思います。
一例としては、今までは会場の制約もあり一定数の社員しか参加できなかったマネジメントによるメッセージ発信の場を、フルオープン参加のオンライン型に切り替えました。これによって、マネジメントチームのメッセージが一つひとつ、大きく浸透しました。
②の多様な働き方に対するワークシフトと、③学習を続ける組織についても、コロナ禍においても学びを止めないというイニシアチブとして進めていきました。
エンゲージメント指標については非好意的以外の回答をしている社員の割合が89%とお伝えしましたが、何がエンゲージメント向上に効果をもたらしたのかについて、私たちなりに分析しました。その結果、2つの大事な要素が見て取れました。
まず1つめは、「エンゲージメント」「やりがい」を高めるためには「組織のゴールと目標への信頼」の醸成が重要であること。
もう1つは、「成長機会」の実感と、「キャリア形成」への期待を高めるためには「フィードバック」の機会を持つことです。ソニーグループ各社の多様な仕事を通じて、キャリア形成への期待を高めるためには、上司によるフィードバックの機会がとても重要です。
そして、サーベイ結果から、エンゲージメントを向上させるためには2つのループがあるという結論に至りました(図表4、5)。
では具体的に、エンゲージメントは何によって高められるのでしょうか。1つはサーベイを通じて得られた社員の声に応えていくこと。サーベイ結果を共有し、結果を踏まえたアクションを起こしていくことです。
私のチームのメンバーが数万規模のデータと向き合いながら、組織風土をより良くするための鍵を抽出しようとしています。調査の回答率は91%に上りましたが、社員が何のために回答してくれたかと言いますと、職場をより良くしてソニーグループを更に発展させたいからに他なりません。人事としては、こうした社員の皆さんの声を職場にフィードバックすることによって、このループを途絶させないようにしたいと思っています。
また、会社単位、組織単位でゴールや目標に対する信頼が強まることによって仕事にやりがいを感じ、エンゲージメントを高めてもらうことも重要です。事業部長や部門長、さらに小さい単位では部長、課長などのマネジメントは、自分たちの組織のゴールや目標をしっかりと示すことが必要になります。ただ示すだけではなく、そこにたどり着くことへの納得感や信頼感を高めることも、エンゲージメントにつながるのです。
もう1つのループは、効果的なフィードバックが学習や成長の機会をもたらし、キャリア形成の期待へとつながるというものです。とくに学習や成長の機会を重要視しています。
図表6は、サステナビリティ説明会において、CHROの安部和志が発信したものです。エンゲージメントサーベイにおいて、「在籍する会社では学習や成長の機会に恵まれているか」という設問に対して、「とてもそう思う」と答えた人は、「まったくそう思わない」と答えた人と比べて、エンゲージメントのスコアが26ポイントも高いことがわかりました。
たとえば、仕事をする中で、日々自分にできることが増えている、その組織に対する何らかの貢献が目に見えて大きくなっていくといった実感を持っている人は、おそらく学習や成長の機会が職場の中からもたらされていると感じているのだと思います。
自分が昨日よりも今日、今日より明日できることが増えていくという好循環の感覚を持てることを「学習や成長の機会」と私たちは捉えていますが、こうした実感は、エンゲージメントに大きく影響を与えています。
この学習や成長の機会をもたらすためにも効果的なフィードバックや、上司による部下に対する日々の効果的な関わり方が重要になってきます。日々の仕事の中で自分ができることを増やすために周囲とどう関わっていくのか、さらには職場のアウトプットやゴールへの貢献意識を持つことで、ソニーグループでのキャリア形成へのポジティブな期待も持ってもらえる。そういう因果関係も見て取れます。
学習や成長の機会は、必ずしも研修やセミナーだけで得られるものではありません。仕事を通じて、新しいものに挑戦し、できることを増やす機会をもたらすことが大事です。
●成長機会をもたらす取り組み
図表7は、ソニーの人材育成の体系です。左側に記載したPurpose & Valuesから紐づいたソニーの育成施策をプロットしています。研修によるトレーニングは約10%、仕事の中での経験が約70%、そして、周りや上司からの日々のフィードバックにより得られることを約20%と見ています。
成長の機会をこのように大きく捉えた上で、育成と成長につながる施策をいくつか紹介します。
キャリア形成にあたり、自分で手を挙げて仕事を変えていくことができる社内募集の仕組みがあります(図表8)。この制度は立ち上げから55年以上が経過し、7,900名以上が利用しています。これだけ長きにわたってこの制度を維持していることをご紹介すると、他社の皆様に驚かれます。もちろんユニークネスもあるのですが、その背景のもっとも大きなものは何でしょうか。
社内募集では、上司の許可を得ることなくオープンエントリーで仕事を選び、一定のリードタイムを経た後に異動が実現します。すると、職場では「引き抜かれた」といった話になることもあります。しかし、「ソニーのために新しいチャレンジをするのであれば、その受益者は会社なんだよね」と理解しようという風土があるのです。優秀なタレントのリテンションリスクを考えた時に、社外に流出してしまうのではなく、ソニーの中で新しいチャレンジをするのであれば歓迎するという文化です。このような感覚で50年以上の長きにわたって制度が維持されているのだと思います。
研修などのラーニングの機会に関しては、新型コロナウイルスの感染拡大期においても学びを止めないという方針を出しました。ソニーは放送機器や映像の受送信の設備も持っているので、基幹技術研修、階層別研修、新人技術研修など年間300講座以上のコンテンツの約80%をオンライン化しました。現在ではオンラインとリアルのハイブリッドによる取り組みも進めています(図表9)。
社員が保有するスキルに関する情報など、多くの情報を1つのデータベースに登録し、これをベースにして時と場所に縛られないラーニング機会を提供する取り組みも進めています。まずはじめに、社員がどんなスキルを持っているのかを自ら申告して、上長が承認します。そうすると職場では、こういう社員がいて、いろいろなスキルを保有しているという情報を認識しながら、上司・部下の対話ができます。もしくは、組織の中に、これだけの仕事を引き受けられるリソースがあるということが、しっかり分かる状況になります。
一方で、保有スキルを入力してくれた社員に対しては、レベルに応じたラーニングコンテンツのレコメンデーションをしながら、イントラサイトでどんどん新しい学びにアクセスしてもらうといった取り組みが約1年前から始まっています。
さらに、「学びは仕事を通じて得られるもの」という考え方から、大規模な社内募集を年に2回ほど行うにあたり、社内募集の求人に「求められるスキル」を記入してもらっています。こうした情報を1つの参考指標として提示しながら、自分にあったキャリアの探索の機会としています(図表10)。
スキル登録をすると、本人も「こんな面白い仕事に挑戦できる」、もしくは「この仕事に挑戦したいけれども、必要なスキルについて学んでおく必要がある」といったことが明確になります。
この夏から新しく始めたスキルの可視化に関しては、もう少しデータを細かく見ていく必要があります。しかしながら、こうした取り組みも一助となり、従来よりも社内募集の成約率が上がったというファクトも見えてきましたので、仕事に必要な能力要件を開示することで、社員にとって迷いのない選択ができるようになったのではないかと振り返っています。
●まとめ
組織での成長機会が、エンゲージメントに大きな影響をもたらすとことは、ソニーグループの人材育成施策を考える上で、とても重要なことだと考えています。
エンゲージメントに影響をもたらす要因を可視化して、マネジメントに示していく。また、社員のエンゲージメントが高まるためには、多様な個の成長が鍵であり、社員一人ひとりの成長こそが、グループ全体の成長につながるということを、外部のステークホルダーの皆様に対して会社のコミットメントとして伝えています。
これらの取り組みは、ソニーという一企業の例ではありますが、皆さまの参考となれば幸いです。皆様の会社におかれましても、エンゲージメントにつながる要因を分析し、そのドライバーをしっかり高めていく必要があると思います。それによって、社員が日々の仕事にやりがいを持ち、結果として、この会社を選んでよかったという社員エンゲージメントが高まると思います。
多様な個をマネージし成長の循環を回していくことは困難なことですが、日々の仕事の中に成長機会を創っていくことが鍵となります。そのためには、組織の目標やゴールを定めることに加えて、上司や周りの同僚からのフィードバックが得られることが大切です。こうしたサイクルが回っているかを確認することこそが、エンゲージメントサーベイを利用したり、その影響因子を考えたりといったことの意義ではないかと思っています。
Ⅲ.クロストーク(質疑応答)
石山先生、早藤様、本日はありがとうございました。ここからは、クロストークと題しまして参加者の皆様からの質問にお答え頂きたいと思います。
まず私から早藤様に質問させてください。ソニー様のエンゲージメントサーベイは、30問強の設問で、グローバル展開されていると伺っております。このスタンスは今も継続されていますか?
11万人のすべての社員、もしくはすべてのビジネスセグメントで設問を揃えているわけではないのですが、エンゲージメントに関連する設問は、共通の考え方に基づいて測っています。また、グローバルで共通設問による定点観測をしている会社も多いので、数万の規模でも共通のサーベイを行っている形になります。
対外開示も含めて本格的に実施を開始したのは、2019年からです。ですがグローバルで実施するサーベイ自体は、10年以上前から継続してきました。具体的には、エンゲージメントやそれに寄与する要素や影響について定点観測し、その結果を社員と共有して手を打っていく形で進めています。
10年前の当時の状況や、その時の思いの部分などについて、あらためてお聞かせいただきたいです。
それまでは、各社それぞれが独自のサーベイを実施していました。そうしますと、たとえば、東京のヘッドクォーターが、各地域や各ビジネスの状況を見る時に、個々に異なる指標を用いて状況を説明していました。ですが、できれば統一的な尺度を用いて社員の状況を見たい。そのためにはどういう設問の取り方をするのが適切なのかを、サーベイに精通された外部のエキスパートの皆さんのお知恵を借りながら一緒につくっていきました。
具体的には、エンゲージメントに影響を与えるドライバーとして「こういう因果関係がある」などのレクチャーを受けながら、今のサーベイの体系をつくっていきました。そうしたなかで、社員がエンゲージすることの大切さを理解しました。それぞれのビジネスセグメントが独自で測るのではなく、同じ尺度で測り、経年比較して上がり下がりの幅がどの程度あるのか、ここに至るまでどのように改善していったのかなどの背景をしっかり追えるようにしました。
おそらくソニー様が大事にされている思想や想いの浸透度や理解度も、測りやすくなっているのではないかと思いました。石山先生から、早藤様へ質問はありますでしょうか。
非常に興味深いお話ですね。質問の1つめは、私の発表でも「日本のエンゲージメントは低い」と申しましたが、ソニー様はグローバルでサーベイを実施されているということで、日本にある会社のエンゲージメントは他の国と比べて実際どうなのかをお伺いしたいです。
2つめは、「サーベイのアクションが大事」なのはまったくその通りですが、「もっとこうしてほしい」といった要望に対して具体的に会社でどんな動きをしたかが重要だと思います。もし会社のアクションの具体例があれば教えていただきたいです。
3つめは、キャリアを主体的に選ぶことで成長していくなかでは、上司の役割は重要だと思います。私の発表の中でも、「上司をボスからコーチに変えるべきではないか」という話をしましたが、エンゲージメントを高めるために、従業員との関わりや上司のマネジメントの向上や取り組みについてどんなことをされているかを教えてください。
1つめの「日本のエンゲージメントは他の国と比べて低いか」という点については、地域差があると認識していますので、グローバルとリージョナルのそれぞれにベンチマークを持っています。日本だけ、もしくはアメリカだけを見るのではなく、グローバルのベンチマークと比べてどの水準にあるのかも見ています。石山先生がお話しされたように、日本人のスコアは高く出づらいと感じていますが、たとえばアメリカと日本にヘッドクォーター組織が分散している際は、ヘッドクォーター機能トータルとしてエンゲージメントを見るようにしています。ですので、地域差を理解するために、ベンチマークは複数持って見ているというのが1つめの回答になります。
2つめ、3つめの質問に関して言いますと、サーベイ後のアクションなどは、愚直なまでに結果を職場に戻すことから始めています。結果を共有しているか、結果に対して目に見えるアクションを取っているかといったことを、私たちだけでなく、職場に近いHRBPを含めて行っています。
ですので、サーベイ後のアクションとして何が望ましいのか、一律の回答があるわけではないのですが、結果が共有されなかったり、結果を見たうえで策を打っていなかったりすることが一番の不信感につながります。そして、それが続くとサーベイの回答率も下がっていきます。そういった悪循環にならないように、とにかく結果を共有し、改善アクションへのコミットメントをしっかり回収し、組織の中で次のループにつなげていくことを繰り返しているのです。
テクニカルな部分では、夏にサーベイを実施した後に、春にフォローアップのためのミニサーベイを行います。春の段階では、エンゲージメントと、そのアクションがどれだけ取られたかなど10問弱に絞っています。
「一律で行わない」という点について詳しくお伺いしたいのですが、たとえばある部門に詳しい結果を見せたとして、その部門ではどこが課題で、これから具体的に何をするかを話し合ったり、決めたりする責任者・推進者はHRBPでしょうか。それとも現場のラインの方でしょうか。
旗振り推進役はHRBPが担います。ですがどれだけ具体的なアクションにつながるかは、職場の社員の協力も必要になるので、職場をしっかり巻き込んでいくことが大切だと思います。
少し前に研修を行った際、ある事業のマネジメントの方が、「こういったサーベイの結果は、皆さんにとって耳が痛いかもしれないが、メンバーの声をしっかり受け止めてアクションに移し、次の打ち手を明確にしたビジョンを打ち出せるリーダーになってほしい」と話しました。ですので、本当によいアクションが取られるかどうかは現場の力にかかっています。アクションを考えて頂く際には、ビジョンをつくり発信することの大切さや、こうした取り組みがエンゲージメントに及ぼす影響をお伝えしています。
またサーベイ後のアクションの中では、たとえば最近で言いますとコロナ禍によるリモートワークの進展が職場にどのような影響を及ぼしているか、どのようなファクターがエンゲージメントに影響を及ぼしているのかといった情報が大切です。私たちサーベイを担当する部門が職場に情報提供するとともに、気をつけてほしいポイントを示しています。
たとえば初任のマネジメント向け研修の中では、コロナ禍において顔を出さずにコミュニケーションをとることが、場合によっては孤独感を増すことになりかねないということを、コロナ禍の数値とその後のアクションの道しるべとして共有しています。
最後の上司の役割に関しては、上記のようなフィードバックのほか、マネジメントのリーダーシップについて、メンバーが回答する別のサーベイも行います。サーベイの中では「リーダーとしてのあなたの行動は、このように見られている」とフリーコメントをお渡しします。これは日本で実施しているサーベイです。日々の行動が周囲からどう見えているかを2つめのサーベイで示すことで、エンゲージメントとの因果関係を考えたり、改善アクションを取りやすくなるようにしています。
詳しくありがとうございました。
参加者の皆様から頂いた質問にもお答えしたいと思います。「効果的なフィードバックをしっかりされているというお話がありましたが、エンゲージメント向上のキーワードである『成長実感』や、『キャリア形成の期待』につながるフィードバックを行うために実践されていることをご紹介いただけないでしょうか」
育成施策の一つとして、部下から見た上司の姿を180度サーベイで測っていますが、サーベイの結果を数字としてお戻ししています。そこで見える一つひとつのコンピテンシーには、「このコンピテンシーが強く発揮されると、キャリアにおいてこういった効果をもたらす」といった情報が得られるようになっているので、改善に向けたアクションを取りやすいようにしています。
また、こうした取り組みのなかで、“傾聴”の波及効果が高いこともわかってきています。ですから傾聴を推奨していますし、私たち自身もまずは相手の考えを受け止めて聞くことを大切にしています。相手の考えを受け止めた上で取るアクションは、組織に対して良い影響をもたらすものと考えています。こうした効果や因果に関する科学的根拠や実際のデータもありますので、こうした情報をお渡しして、マネジメント向けの研修にも活用しています。
ありがとうございます。エビデンスの開示やマネジメント研修など、ブラッシュアップやレベルを上げる機会が定期的にあり、影響されているということですね。
次の質問は、「外部環境を知らない自社社員へのアンケートで、自社が他社に対して成長の機会が多くあると結論付けている点に対して、第三者の視点は入れていますか? また、成長とエンゲージメントの相関関係などはありますか?」というものです。
因果についてですが、サーベイの設問のなかでエンゲージメントに影響を与える要素が何か、わかっているものもあります。とても重要な因果関係が見られる場合はハイライトして共有することもありますが、必ずしも明確なロジックで見えるものばかりではありません。
とはいえ多様な個が仕事を通じて成長し、たくさんのことができるようになることは、ビジネスシーンでは絶対的に必要だと思いますので、内部のデータから定量化・解析し、アクションにつなげることには一定の効果があるのではないかと考えています。
今の質問に関していいでしょうか。私としては、純粋な因果関係の特定は難しいと思うんです。つまり、成長の機会があるからエンゲージメントが高まるのも然りだし、エンゲージメントが高くなったから、ますます成長の機会を求めるのもまた然りです。それは循環的な関係です。いずれにしても、必ずしも因果関係だと厳密に判断しなくても、両方に良い効果を与え合うということであれば、「成長の機会を伸ばす」ことに着目することは大事だと思います。
では次の質問に移ります。「エンゲージメントが低い企業では、『どうせうまくいかない』という障壁ができてしまうことがあるかと思いますが、それを解消するための要素は何でしょうか」
先ほども、アクションや定期的な対話、フォローアップというお話はいただきましたが、もしこれに加えて早藤様のほうからございましたらお答えください。
サーベイ実施後に何らかのアクションを取っていくことで、変化は見られると思っています。
エンゲージメントサーベイを取っても結果を知らされない、アクションがないのでは、現場も手の打ちようがありません。また途中で取り組みをやめてしまうと、結果を隠しているように思われることもあるかもしれません。
たとえば「成長の機会」を創ろうといっても、それは研修なのか、新しいチャレンジの機会なのかなど、いろいろとあると思います。一度だけ、一つのアクションだけではなく、継続してオープンに、話し合っていく必要があります。
また、組織の中で何かを変えようとするときは、サーベイに答えた社員にも途中の段階から参画してもらうことが大切だと思います。そうすれば、自分たちも含めて、組織を変えていこうというムードが出てきます。
ですので、即効薬はないかもしれませんが、なるべく透明性を担保し、多くの人に関わってもらいながら取り組み続けることが重要だと思います。
「どうせうまくいかないからやらない」と「やってもうまくいかないけれども続ける」では、大分違うと思います。うまくいかないながらもやり始めて、真摯に「何でうまくいかないのか」「何が障害か」を聞き続けていく。問題解決の仕方をオープンにして、いかに長く続けるかが大切なのだと思います。
現場を巻き込み、変化や成長実感といったところまで見ていくのが重要だとわかりました。エンゲージメントを対外的に発表すると、「スコアが高ければいい」ということになって次第に形骸化することがあります。そういった誤った捉え方をしないように、多くの人を巻き込んだり現場の管理職の方々に必要だと思ってもらえるようなケアをされたりすることが重要だと思いました。
エンゲージメントの向上は、現場のマネジメントの方々を助ける取り組みだと思います。社員がエンゲージされていれば、組織は生き生きしてくるし、仕事に対して建設的、前向きに捉えやすくなり、アウトプットを出しやすい環境になります。ですので、現場のマネジメントに関わってもらわなければいけません。手間もかかりますが、「最後のリターンは組織に返ってくる」ということをお伝えし、「コーポレートが何か発信するためのものというよりも、自分たちの組織が強くなるためのもの」という観点から、組織の中で対話をしていただくのがいいのではないかと思います。
今でも現場の方と人事の方、あるいはHRBPの方は、定期的に対話をされているのですか?
はい。私は今、サーベイや育成施策などを専門とする部署にいますが、HRBPとの連携は必要です。HRBPと連携しながら、1年に2回の定時観測の結果をマネジメントに届けて組織の風土を良くしようとコミットしてやっています。ですので、HRBPが職場の近くにいること、彼らと一緒に取り組むことの価値は大きいです。
続いての質問です。「製造工場のラインや業者の方はなかなか就業時間中の個人学習が難しいです。働き方に関わらず、効果的なアクションが取れるような事例などあればご紹介ください。ソニー様でもいろいろな学習機会はあると思いますが、どのようなことをされていますか?」
1つはオンライン型の学習に変えていくことで、仕事の区切りがついたタイミングなどに学習の機会をつくれると思います。もう1つは、オンライン化によって首都圏以外の製造事業所でも、東京で開催する研修やイベントに参加しやすくなったという声はいただいています。
このほか、東京やみなとみらいのオフィスでは、「社員が自ら学びの場を設けて運営していく」取り組みも行われています。以前石山先生にもお越しいただきましたが、社員自身で立ち上げて、自分の成長のために、就業時間外に学ぶことのできる場を設けています。コロナ禍によって、オンラインの可能性に気づけたことは、大きなチャンスと言えるのではないでしょうか。
ソニーさんの場合、本社に社員が利用できるお洒落なコワーキングスペースのような場所があり、そこで社内サークルのように、自主的に勉強会をしていらっしゃる方がいます。私もそこにお伺いし見学させていただいたのですが、結構皆さん自由にアクセスしていらっしゃいました。会社主導だけではなく、社員がお互い学び合う雰囲気をつくれるかどうかもポイントだと思いますね。
我々もソニー様に何度も取材をさせていただいておりますが、社内副業などいろいろとチャレンジする機会も多いのかなと感じています。やはり与えられた学びだけではなく、自分で「やりたい」「好き」なことを追求していく。そんな風土や仕組みも重要だと思いました。
本日の参加者は人事や人材開発ご担当者様が多いですし、3月には人的資本の開示も始まっていくなど不安なことも多いと思います。最後に皆様に向けて、早藤様と石山先生から一言ずつメッセージをいただけますでしょうか。
本日は貴重な機会をありがとうございました。石山先生から伺ったお話は、ソニーに持ち帰りたいと思います。私の回答した部分では、サーベイや育成の担当部署が気づいたことを、いかにして職場に届け、マネジメントの皆さんに具体的なアクションに取り組んでいただけるかが、鍵になると考えます。たとえばマネジメントがハブになることで、10、20人のメンバーに、成長機会やフィードバックがもたらされていくことになります。現場に近いHRBPや私たちのような専門部署が、各マネジメントが預かっている組織のために必要な情報を届ける。こうした情報を活かして、マネジメントの皆さんにメンバーの相談相手になってもらう。こうした循環が大切です。一朝一夕にはいかないかもしれないし、私たちもまだ道半ばでありますが、このような好循環をつくっていくために頑張っていきたいと思います。
ソニーさんはやはりデータの分析をしっかりやられていてさすがだと思いました。また、本日のお話でとても印象深かったのは、一番強調されていた「愚直に行う」というところです。最終的には愚直に、オープンに行うことが、基盤として一番大事だということをあらためて強く感じました。